08

蛹と檸檬




貴方は僕のことが嫌いなだけ それを認めることも出来ないだけ
かわいそうだね 「嫌い」って言っても賛同されない世界 君の敵
私のことが嫌いならば正々堂々言ってみてよ 嗤うから
君と地獄に堕ちる気はないから せめて餞を用意しておくよ
一人で何も出来ない 賛同者も集められない さみしいのね

たぶん、君のこと、唯一 かわいそうって笑える少女性ですよ
貴方の舌は嘘吐きの舌 地獄で抜かれたら塩振って食べよう
なるほど私のことがすきなんだね? え? 嫌い? もうよくわかんないな
ちゃんと嫌いなら頭を使って傷付けてみてよ 消えない傷を
頭の悪い君は羽化出来なかった少女の末路を知らないの



檸檬でなくとも良いけれど僕にとっての美しいものが見つかれば
天才ではないから爆弾が作れないの 更地に出来ないのよ
氷なき麦茶が胃の腑を貫いて まだ安らかな秋は遠きに
中身はどろどろのぐっちゃぐちゃだったはずなんだよ ほんとうだよ
そろそろ金色に染まる 秋のよう 青葉の時すら舞い落ちずに(お題:免許)

君のかなしみをまるごとしかくにおしこめて食べちゃいたい朝が来る
物語を書かなかったらさっさと死ねたのになと思うことはする
不幸でなくとも書けるけどどっかでは不幸であれって願ってる
壊れても良いから物語が書きたい 死んでも良いから書きたい
褒めて欲しいとか欲しくないとかまずそもそも口に出して言えよな



蟻を踏み潰してもバレないはずなんだ 誰も見てないんだから
セイタカアワダチソウヒゲナガアブラムシで季節を感じてみたい
ゼンマイ仕掛けで変身したい 世界は救いたくないけどしたい
肩と首の死後にまだ医師からかけられるモーツァルトのミサ曲
今は手の中にインターネットがあるから其処は世界の扉だ(テーマ:トイレ)

美しいものを見ていたって美しくなれるわけじゃあないんだよ
ハロー十月 ハロー十パーセント ハロー大人になれない世界
現実逃避に意味もないのに行くのは鏡を見たくないからだ(テーマ:トイレ)
ひとの優しさに値段をつけたらそれはもうただの商品だよね
翠色の夢を見ている 見ていたい 見ていたかった それだけなんだ



手を洗う 汚れていない手を洗う 手を洗う 石鹸がなくなる
この手が誰かを殺しているような気がする ペン先で 物語で
わたしがしねばいいのか あなたがしねばいいのか わからないでいるの
絶望は青い色をしていたら良いのに、っていつも思ってるの
おなかが痛くて目が醒める 世界、まだ終わってなくてさめざめする

「君のことなんか誰も見てないよ」 「知ってるよ」 「知ってるのに続けるの」
「僕なんてほんとはいてもいなくても良いんだけど」 最強の前置き
慌てて勝手に防御体制に入るみなさんの滑稽さよ
ほんとに必要ないくせに必要だよとかほざく方が残酷だ
「誰かがきっと」なんて、ほら 人任せ 良い大人がみっともないよね



君が見ていたすべてを教えてよ 君のことをがじゅまるって呼ばせて(テーマ:木)
愛をね、教えてくれてたんだ アップルパイを焼く音はもうしない(テーマ:木)
星が降るよ、星が降るよ、星が降ってくるよ 僕らはみんな死ぬよ
米の花って書いて糀なの目の当たりにするとなんかウケちゃう
何処に行くか決まってる電車にしか乗れない がんじがらめを抜け出せ

ぼくが生きにくいのはぼくがぼくだからだよ 勝手に理由つけないで
才能が欲しいとかゴミかよ 承認欲求もついでに捨てろよ
ハイハイ、よかったですね それで? 君の価値は一体何なんですか?
貴方がいなくたって生きていけるのに そういうことにしておきたい
幻滅しましたか? ちゃんと女をやってるわたしに ちゃんと ちゃんと



びた一文サービスしてやらないって それを放牧って呼ぶんだよ
豚でも牛でも店に並んでる存在になれたら良かったのに
付加価値をつけないまま自由にさせないで どうして欲しいか言ってよ
誰かに凭れることが出来るなんて それがお前なんて なんて呪い?
君に会うにも理由が必要で ぼくは親友に向いてないね

電車の窓から朝陽が射し込んで冬でも僕の目を刺していく
誰かを傷付けるための技術で優しいひとに擬態しているの
人間をやめたいのなら、もっとわたしのことを分かってよ。キスしてよ。
いい加減死んでくれ わたしを勝手に人間に戻さないでくれ
天国でも地獄でもニンゲンでもキリンでも君がいるならいいよ



貴方の殺意が羨ましかった 透明に降り立つ貴方の背が
ゆるされないでいるべきだ、ただ、ぼくは、ゆるされたくなどないのだから
こんなだめでだめなわたしに あなたは好かれてなどいたくはないでしょう?
君と一緒に死にたかった くだらない僕を物語にしたかった
ねえ、きっと、貴方の胸にやいばを突き立てる以外に道はないね

私の世界を作ってよ 或いは積み木で、或いは砂と水で
行列に割り込み毛箒失礼します 盲目の君はきれいだ(テーマ:虫)
七つの点すら数えられなかったわたしも大人になれちゃう世界(テーマ:虫)
君のいた証がいまも遺っている 灰色の海 岩 西の風
怒りが指先まですうっとはしって わたしを死なせてくれない



落ちてくる世界にただひとり、きみのこえだけが響いていたらいい
たぶん、いつか別れることを願ってた 五両あればじゅうぶんだよね(テーマ:踏切)
黒と黄色の呪いのことを愛しています いつか好きって言ってね(テーマ:踏切)
真っ白な世界の真ん中にたったひとりきみがいたよ、きみがいいよ
壊れた世界でそれでも貴方は残酷なほどに正しかったよ

きみがいなくなるかもしれない日 ぼくがいなくなるかもしれない日
青い香りがしている キャベツの外側が君の口に消えていく
前世とか来世とかたぶんあおむしだった君がちょうちょになるまで
ピクトくんと逃げたい エグジットしたい 指がないから握れない
力任せに折ったヒール、鼻に突っ込んでやったらたぶんにあうよ



「みんな死ねば良い」ってことすら言えなかったわたし お元気ですか?
まだいいこぶって生きてるの 包丁を背中に丁寧に隠して
きみがつくられたばけものならばぼくはうまれながらのばけものだよ
君が誇る重ねた時間が君に何をもたらしたのか言ってみて?
ただ生きてれば大人になれると思ってたよ ねえそうでしょ、大人たち

あなたが蔑ろにしたもの なくなってくれると思わないでね
御自分だけ世界でたったお一人被害者様とは恐れ入る!
海沿いのまちで生まれたきみの人魚の言語の告白がききたい
お前になんか私のこと分かって欲しくないよって言ったのにね
こんなときだけ神様だのみ ああ、ほんとうに、人間ってかわいいね



割れてないうなぎパイを食べたことのないひとは可哀想だとおもう
きみのことがだいすきだからきみのことがしんじられなくてもまつよ
人の不幸は美味しいですか? そんな顔で不味いとか嘘吐くなよ
傘がたくさんあったらたぶんそのぶんだけしあわせになれるよね
テレビのニュースがかなしくても 「きみのことじゃあないでしょ」というだけだ

何をしても僕のかなしみは君のものにはならない 舌が凍る
嘘を吐くことはかなしい 胸が裂けそうな心地で物語をかく
嘘を嘘だと思わなくなったとき それがただしいと思ったとき
臓物を引き摺り出されたわたしたちは ひっそりとかいぶつになる
だいすきだよ、たすけて、あいしているよ、あいさせてよ、たすけて、おねがい




20200319