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硫酸のラベル




頭の良い子供でした 人の殺し方を知っている子供でした
この手は血まみれですが誰も信じないまま大人になった
給水塔が崩れて君の思い出とだけ一緒に二人だけで
おんなのこらしくいきるのだとプロパガンダ今捨てて飛び出せ 今
桃の香りは君に似合うから だから大丈夫 大丈夫なんだ

ぬるっとした触り心地のマウス 知らない世界が隣にあって
貴方のことが嫌いだから貴方が私を嫌うまで生きるんだ
甘い香りは君には似合わない目の覚めるような夏をください
走り抜ける走馬灯 おにぎりの中身は梅干しが良かったかな
足し算も引き算もかけ算もわり算も君には効いてくれない



花心紛れむ君にあらたまの月立ち眠る笛に思へば
「可哀想」じいと見つめた藻掻く眼を閉じろよ閉じろ 兎煮詰めて
泣きました 華麗な蝶ははらはらと 宙ぶらりんの恭しさで
ライトシアン ぼくの印刷機が告げる変えようがない君の不在
ガソリンの匂いがして、秋。隣家は全焼の予兆と共に、冬。


付箋忘れたこと 誰にも言えないでいる 都会は一人だから
大人びた友はいないので電車のホームにも立っちゃいけないんだ
小さな子と目が合うのは怖い 奴らはにんげんになる前だから
冷めた抹茶の苦味が舌の上に留まって 早く春が来い
冬だからさみしいなんて感じるんです 眠いんです 布団の中



首都まで出て来て飲み干す身体あたたまる地元産の抹茶ラテ
隣の親子のあたまわるそうな会話を聞いて知るぼくの平和
サービスの水の水槽の中に浮かんでいる氷の芸術性
ぼくはひとりなのでなんでもできますひとりなのでひとりなのでひと
朝靄にけぶる白煙息を潜めてぼくの街は目覚めにけり

さよならの記憶を捨てて走って来てもぼくはぼく あなたはいない
飛行機と万年筆とジップロック 三角関係 愛おしい
正しさというのは弱くて儚くて割合すぐに消えるからさ
「世界なんて滅んじゃえ」誰にも言えず呪った十一歳の夏
疲れちゃった、死んでみようかなあって笑うお前が愛しくて



喜びも悲しみもご飯にかけて食べちゃえ 手をあわせてぱんぱん
死にたくて死にたくて死にたくて死にたくてたまらないって? 嘘吐き。
そろそろ死にたいなんて言うお前の顔がやたら輝いてるから
君以上の運命なんて要らないから忘れさせようとしないで
あたしなんか要らないっていう事実 辛くないけどすこし、さびしい。

箱庭アシメントリー きれいきっちりなんて出来やしないから不和
キリトラレネコ 内緒の子 忘れられた子 迷子の子 もう帰れない
落っことしちゃった赤い涙をきみは上手にお掃除できたかな
今でも好きなんて嘘言わないけど嫌いになった訳でもないよ
至らない爪を美しく飾って貴方を殺す凶器にしよう



なし得ることのないことを告げないことは残酷か?罪か?それとも?
七つの海の物語を綴る いつかのぼくの子供たちのために
見つかるはずのない出口を生きるものというのは探しているんだ
唄い鳥の森を抜けておいで 終焉の音 心に焼き付けて
愚かだと嗤うかい? 赤い夢彷徨う私たちと同じこと

望んだのは茨の道 神がその先にいるという昔話
いつか魚の眼を棄てておいで 蛙の腕を棄てておいで いつか
穂のつになってしまったたくさんの白い嘘だけを抱えていく
貴方のもとおへと行きたい 物語なんて要らない ただそれだけで
幼い誓いは微睡みの中 背伸びした記憶に隠しておいて



がんじがらめの籠の鳥 貴方のためだけの白線の上を走る
桃色の日々が僕を強くしてくれるなんてことはなくて、一人。
僕のことなんか誰も気にしない 替わりさえ要らない ただそれだけ
何か出来るかもって思っていたんだよ 何も出来なかったけれど
ひび割れた空 夕日が滲んで「まるで世界が終わるみたい」「ホント」

言葉の意味も知らない君の細腕が腐り落ちるまで待ってる
チェックメイト終わらせて この生命いたずらに永らえさせないでよ
一人だけ枠の外 皿に乗れない欠けてしまったペファークーヘン
わけもなく悲しい 君が目の前にいるはずなのに遠くて一人
手を洗わせて 僕は僕がとても汚いもののようで怖いから



取り替えの効く存在であるうちはあたし死んでも死ねないのよね
息絶える涙を少し飲んで消えても言いとうたを口ずさんで
目を覚ませ私の中の怪物よ 今、この世界を食らいつくせ
息をすること、存在すること、心臓を動かすこと、忘れましょ
何をもってして生きると言うのか分からないから全部忘れます

もうどうにでもなってしまえ壊れて焼き尽くされてなくなって、もう。
石畳の魚泳ぐことも出来ず踏みにじられるだけのあなた
心に宿った桃色をした灯 名前を恋と謂いました
星が輝くのは誰かのため? どうしてそのすべてで輝けるの
ときめく心 切ない想い 消える言葉 いずれ失われるもの



二十階から見下ろす光の中に貴方がいる やさしくなれる
言葉と表現の間の溝は空と向日葵みたいなものだよ
夏の非常階段を飛び出して行く果なき大地を蹴り上げて
この世界なんて無何有の空言の詰め合わせだから気にしないで
良心なんて持っているだけ無駄だから君の死体に抱かせとく

伸ばしても届かない 叫んでも響かない 青い空は残酷だ
晴れた日は空が果てしないんだと実感する させられてしまうよ
手に入れた翼は儚くて脆くてすぐに消えそうで怖かった
ずっと一緒にいたかった 真っ青な空に舞う二つの影のように
並んで羽根を広げ風に乗って大空を切り裂いてくように



ちょっと歪んだそんな愛情 とりあえず笑っとこっかアハハハハ
優しさ少しずつだけどすれ違って冷たくて暖かくて泣いた
貴方との距離 追いつけないなら声だけでも加速させて 伝われ
素直にならないと公開するよ?壊れちゃうって「じゃあ壊れちゃえよ」
魔法の解けないシンデレラ 迎えに来る王子を待つまでもないわ

美しい弾丸でわたしを殺すさいしょでさいごの男(ひと)
「ちゃんときっちり殺してやるから先に行って大人しく待ってろよ」
「追い掛けて来てくださいね、絶対ですよ約束ですよ指切った」
さよならを識った俺、アンタより少し人間に近かったりして
「墓に刻む名前は何が良い」「アンタの苗字が欲しくてたまらん」



アンタじゃない誰かの書いた台詞を云うアンタの喉を潰したい
嘘吐きの舌は抜いても良いの だってかみさまはいないんだから
くるりとまわってみせる少女性 おんなに生まれ落ちなかった敗け犬
もしお前が祝福されていたら会えなかったなんて考えて
「幸せってなんなんでしょうね」「知らんわお前の頭の中なんて」

もういっそ地獄に落ちてくれよ、一緒に この手は離さないからさ
「アンタに殺されたらアンタの傷になれますね」「一生忘れんな」
月を見上げたらもうアンタと見つめ合っていることになりませんか
ならねえよ馬鹿か頭わいたのか 良いから俺だけ見てろよアホか
月のない静寂に揺れる紛い物 恥じらう前に目を見開いて
   (つきのない しじまにゆれる まがいもの はじらうまえに めをみひらいて)



20180826