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サバイバル・サバイバル
白霧(しらぎり)に青電灯の降(ふ)りし夜 静けさに一人母の姿を見ゆ
冬曇り 餓鬼呼ばわりも聞き飽きて貴方の敵になりたかった午後
駆け抜けよ 槍も馬もなき戦場 緋き鎧も持ち得ぬけれど
ぞろぞろと肥ゆるひつじは大荷物 青空埋めたる ゆく秋追いて
殺される 善悪もなき子供たち ココニイルヨと叫ぶことすら
標(しるべ)なき人波拒む歌舞伎町 自販機の灯り 我を導け
溶けるなと幾ら言おうと雪は往く 貴方のいない春を迎える
どうしてと応える声は既に失く 黒い残渣に惑わされる
さようなら 私のことは忘れて欲しいとりんごのパイを投げつけたりして
夏の空 揺れるソーダの甘い香と僕らは青春の中にいる
*
嫌いです 電車の音もさよならも全部飲み込んだ冬の朝も
我々は人間である 指先から頭まで赤き血めぐる
雑(ま)ざりゆけ 冬空を渡る一直線 飛行機雲は龍の背かな
手を振るよ 通過駅の貴方の背中 海辺の線路 天国への道
私はきっと一人で生きていく 枯れたサボテン 恨みの目線
太陽が回る真冬の紫外線 からから乾くわたしのくちびる
冬空に咲く形なき樹氷林 わたしの上に雨を降らすな
雑踏の既視感 貴方の後頭部忘れて私は振り返らずに
さようなら バランのようなひと 貴方を忘れて私は生きていく
死せる孔 主(あるじ)失くした眼窩には硝子の煌めき 偽物の虹彩(にじ)
*
夏休み 背中の熱さ伝わる手 君の落ちてく非常階段
夕空のぽつりと浮かぶ白い月 一人淋しく星たちを待つ
かうかうとかもめの哀歌と聞き紛う 駐車場にて囚われの犬
うっそりとか弱き人間の分際で微笑んだ君 黒き羽根
ラムネ瓶 愛の巣の中転がって飛び立つ鳥は片付けもせず
ぺこぱことペットボトルの戻る音 雑踏飲み込む丸ノ内線
彗星の落ちた音を聴きました 貴方のいない朝の夢にて
空をゆく飛行機たちのその世界 決して交わらぬ夕闇のキャンバス
眠れぬ夜(よ) 呼吸薄まる死にそうな瞼に灯る豆球の光
今みえる私の世界は全部うそ=@四角い火星 ありふれた午後
*
大人の女になれる気がしてすみれの花を砂糖に漬けたの
てのひらにのったちいさなこころとかいうのをけしててばなさずにいる
タンバリン鳴らし続けていつの日かてのひらの割れる夢を見る
赤と青 カスタネットは海の藻屑 くっきりわかれた水平線
飾りの裏に耳あかくらいあるわよ ロボットだもの ナマモノだもの
蟷螂の腹の中には何がある わたしはそれをあいとはよべない
図書館の人の言葉で嘘を吐く愛が何とか知らぬも知らずに
かわいそうって言われたくていつだって逃げる口実を探してる
きたないこ くちあたりのいいことばかり したざわりのいいことばかり
ワンピース ハイヒール あなたもわたしを裏切るんですね、晴れの空。
*
凍空に駆けに駆けたる我々こそは赤き服着た畜生なりけり
仕方ないですよねわたしばかなので 見分けもつかないままなので
逃亡犯と肉親のあなたどちらか分からなくて包丁を持つ
刺し殺しても死ななかったから、次は失敗しないからね、だから。
みずいろの夏がはじけるソーダの音がしている さよならの気配と
愛さないでこれから終わる冬と手を繋いで行け 死に接吻けして
ぐちゃぐちゃにしてしまいました葬式の靴の下でふしだらな蟻
スカートの似合うおんなのこを見て悲鳴 わたしが古くなっていく
ひしひしと終わりの予感が近付いて来てわたしとあなたふたりで
蛍光灯 焼かれて落ちた虫たちの夢はいつまで続くのでしょう
*
ひとりが寂しい夜は貴方の番号見つめながら寝落ちしてる
ルマンドの皮のところみたいになりたかった 軽くて壊れるやつ
十五になっても泥棒出来ないからいつまでたっても十四歳
最高のお前はお前の帝国に君臨するのだいつまでも
嘘吐きだから全部食べてあげるふしあわせもしあわせにしてあげる
愛が足りないの我が侭だから 死ぬほど愛して証明してよ
とてもよく知っている貴方に手紙を書くの しろやぎさんと名乗って
聞いて欲しいことがあるのねえほんとはね実はねでもやっぱいいや
おんなとして見て欲しくなかったよいつまでもともだちでいたかった
口を開けば愚痴ばかり 可憐なくちびるは嘘の色をしている
*
番犬のいる階段を一飛びに運命の落とし子を抱(いだ)いて
境界線越えることも出来ない臆病者 もういいわさよなら
愛してるなら死んでみてよとそんなひどい文法信じているの?
ガラスの靴を落とさないようにしっかり教育しておきますので
安心して踊ってください 二度と魔法を掛けたりしませんから
貴方は私の運命でした だってそう指し示されていたから
どうかもし腰抜けでないのなら運命なら蹴散らしていってください
虹が降るのを君と見てみたいから嘘を吐いて攫ってみせるね
酸素が薄いとか言うと笑うけどほんとにそうなんだよほんとに
情報が足りなくない? よくみんな生き苦しくしないよね? しんどいよ?
*
お前の脚だけが忘れられないよ おれを撫でたきれいな脚
誕生日なんか祝わなくていいけどケーキは食べたい いちごがいい
正義のヒーローが必要だ僕を殺してくれる強いひと
ペーパーだからエンジンは鍵を入れたらつくんだと思ってたんだ
カッターナイフは取り上げられたからもう波打ち際には行けない
理科室の魔法は消えて台所でスポンジは膨らまない日々
どうせ忘れているだろうなその程度のものだったみたいなので
俺以外全員死んだらいいけどそうしたら渉外も俺になる
散らばった羽根は血飛沫の代わりでした わたし臆病者ですよ
お喋りはそういうのが得意なひとに頼んでください故障中
*
カリスマの欲しいひとが多すぎてインフレ起きてますよわらっちゃう
かみさまになりたいひとだけなればよくて決して強制ではない
羽根が生えたらもげばいい 人語が分からないなら首傾げてて
ひとのこころがないので君を傷付ける免罪符が欲しい 今も
しろやぎさんもくろやぎさんもてがみを食べないままかねだけ食べた
ミモザも薔薇も木蓮も椿も区別がつかないまま生きている
君が楽しそうだからいいかなってでも君はそんなぼくがきらい
鏡の中に君がいて通話記録が見つからなくてはるがくる
死ねない薬ばっかりたまっていくけどゴミ箱に捨てるのもちがう
ロキソニンの空箱をいつまでもお守りのようにツギハギしてます
*
貴方の隣に立ちたかったくだらない話を聞かせて欲しかった
煙草の匂いでいっぱいにして思い出もすべて塗りつぶすくらい
子供だなんて甘く見てますとぜったいに後悔させますからね
くらえ思い出アタックぼくときみだけ共通項でくくっちゃえる
やさしくされたことないからすぐにあなたのことすきになれるよ、だめ?
これはひどい裏切りですよ なんてきっと言いたいのは貴方の方
どうして立っていられるのなんて聞くまでもなかったよねぼくのため
愛されてる実感と自信だけは天下一なの でもそうでしょう?
最高ですよ酒瓶開けるよ お前の死んだ日は記念日だから
指先だけで魔法使いになれないので諦めて朝飯を食う
20170427