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青春の墓場




スカート似合わないぼくは少女としての賞味期限が切れました(依頼:青春の思い出)
蒼の襟 階段に翻ってもうぼくの手は必要ないんだね(依頼:青春の思い出)
寂しさの味がするね 青い花はいつまで経ってもきみのものだったよ
涙の代わりに雨が落ちていってぼくどうせこの世界にひとり、
涙出ないと冷たいひとみたいってうまいこと言うね、ほんとだし(お題:卒業)

誰にでも言っているのでしょう 「愛してる」の期限はめちゃくちゃはやい(初句:誰にでも)
百雷の喝采我に降り侘びて嵐のあとに路はなるなり
びしょ濡れの水仙みんな首折れて明日は夏の先をいくかな(初音:び)
日曜の夜終わらないで 新東名も王蟲の怒りに満ちて(お題:車)
にわとりを掲げ羽先喰みやめてきみの祖先はかたくてつよい



ばらばらにしないようにね 罅割れた硝子細工のきみの本芯(連想:心)
雨の降る中駆けていくきみの背に咲く肩甲骨 シャツの向こう(テーマ:羽)
青鼠のインク落とした静寂にこずむ春先待てども飲めず(お題:上澄み)
冬の夜雪見だいふく独り占め セブンの棚を空にしてゆく
まだ誰でもないあなたのままでいて「知り合いですか?」の表示がうざい(画像連想)

「ひゃっこいね」きゅうりむさぼる君が言う 帰ってきたと漸く思う(初音:ひゃ)
眠り舟漕ぎ出でてみれば僅かなる真白の区分超えし夢かな(依頼:ねむたさをテーマに)
揺らぐればうつつに霞む君の背を追えば醒むると知らせたもうや
春だからきみに恋していいですか 言い訳なんて見つからなくて(初句:春だから)
くろぐろと瞼の落ちる裏側に絡まる不安の糸くずありて(お題:鬱)

紫の光目を射しおまえにはせめてわたしの戀を結ひてし(お題:蝶々)
遠ければ艶の色とて見えまじと花から花へ遊ぶを眺む(お題:蝶々)
この翅をきれいだなんて言いながら貴方の指は鱗粉を剥ぐ(お題:蝶々)
口笛を吹きてゆくなり童ども 春をこうべにまるくひからせ
両手いっぱいの画鋲を並べ立て貴方のそばに私はいたい(お題:上履き)



ゆっくりと昨日に取り残されく きみがいるはずのロサンゼルス
秋の野はいつ夕暮れに朽ち果てて長く伸びるは誰の影かも
氷結のプルタブ上げるのばかり上手いひとだった それだけだった(初音:ひょ)
ステルスではいけませんか きみのこと見ているだけじゃ狡いでしょうか(初句:ステルスで)
春の日の長閑けき庭にしばたたく ふいにあなたの聲が聴こえる(お題:うたた寝)

目の裏と胸の真ん中、耳の奥、跳ねる音にきみの声がのる(連想:歌/NG:歌)
ヒューマンの貴方がすきと言ったからヒューマノイドも指環を渡す(初音:ひゅ/「近日点はまだ遠く」二次)
靴下のもうかたっぽが見えなくて急いできたけどちぐはぐの足(依頼:遅刻の言い訳)
ヒュプノシス肋手折りて星を喰む 夢の深むは夜のまにまに(初音:ひゅ)
独り占めしていたぼくに罰のようぴこり顔出す元気なにきび(画像連想)



「これやるよ」吸えないぼくに押しつけた ガラムの箱から記憶が香る(お題:煙草)
ひしゃげたランドセルのようだ 満開に蔓延るチューリップの海よ
辻斬りのようにあなたに恋をして綴れなかった唄を置いてく
チューリップの形に納得がいかない なんか防御力低そう
白檀の香りが似合うと云ったきみは僕を仏壇に詰め込む(初音:びゃ)

繋いだ手離したらもう一生逢えないぼくらの前世はらっこ(お題:ラッコ)
遠くまで来ちゃったけどさ、どうする?今から帰ってあげてもいいよ?(初句:遠くまで)
秘密基地作り毎日集まったそんな気持ちで寄り道しよか。(依頼:おでん屋に飾るやつ)
ぴぴぴぴぴ きみのへたっぴリコーダー今にもたんぽぽ生えてきそう(初音:ぴ)
皆人はするかしないか議論する中で花粉と黄砂に備える(依頼:マスク解放の微妙な気持ち)



「蚯蚓鳴く」の蚯蚓は螻蛄のこと 蚯蚓が鳴くわけないだろばーか(お題:螻蛄)
ビューポイントを探してる 現実でもゲームでもカメラ担いで(初音:びゅ)
ロックの中のきみ助け求めてスワイプの度犯罪者になる(連想:画面/NG:画面)
病院の正面玄関さえ覚えてなかった あまりに必死で(初音:びょ)
薬指は導きの指だから、人差し指よりながい 嘘だよ(依頼:短歌の中で嘘を吐いてください)

春が来る 貴方の白い首筋に覚えのない花が咲いて(お題:吸)
ふとした瞬間に筆が止まる 貴方のかける速度が遠退いて(お題:嫉妬)
「大丈夫、簡単ですよ、ぽいと手放すだけ。生命(いのち)だっておんなじ」(画像連想)
四月がきたものだから嘘が雨のよう、目の内にて魚が跳ねて、
小雀や落ち葉のやうに飛ぶ勿れ巣立ちの前の下手な曲線



ピャトニツキイサウルス、こんなお題じゃなきゃ知ることもなかったきみよ(初音:ぴゃ)
捕まえたと思ったのにきみはもう空の向こう バカモンと叫ぶ(初句:捕まえた)
点滅の気配を感じ走ろうか考えてるうち赤に変わる(お題:信号機)
エクセルにたんたかたんと打ち込んでそれでも尚きみが分からない(連想:データ/NG:データ)
青い坂曲がり切ったら海に出る 昭和だったら乗せて走るのに(依頼:自転車にまつわる)

ぴょこぴょことカエル頭を出しまして落ちる雨だれ舌で掬って(初音:ぴょ)
緊張で倒れたあの子元気かな ぴかぴかの中学生の頃(お題:入学式)
わざわざ集まらないと主張出来ないの 二十何時間テレビとか(画像連想)
掴むとこ斜めになった寝巻きでも下ろせちゃうからコツさえあれば
ちゃんとしておいてね、わたしのだって証 それは首輪なんだからさ(お題:ネクタイ)



一番の春はまだ遠くにあるね 桜舞い散る並木を走る(初句:一番の)
海岸で集めたどうでもいい石を貴方の前で並べてみせる(依頼:偏愛)
「remember meなんて言うなよ、忘れるわけないだろ」かっこつけたい(初音:り)
あんなにテレビ変えてって言ってたのに日常は麻痺という毒だね
きみが選んだのでしょう、面倒だけど長持ちする相手を(お題:選択)

胃の芯がかっと熱くてたまらなく鎮めるためにもう少し飲む(連想:酔い)
二歳の猫祝いながらおかしいな、きみがもう四年いる気がする
ごろごろと毛布踏む猫よ知らんだろうがそれは僕の足なのだ
春の日に落ち葉くるりと舞い上げた旋風(つむじかぜ)と共にゆく柴犬
ピューロランドは夢の国 わたし連れてってもらえない秘密の国(初音:ぴゅ)



番組の終了よりもずっとどうぶつ奇想天外の終わりだ
うさぎ棲む月のでこぼこ眺めてし杵と臼とは桂の樹かと(初音:う)
運命が今日決まるとかそんなんじゃないけど一歩リードしたいから(架空依頼:クラス替え)
きみがぼくの料理を喰べてぼくがきみのを喰べて不健康な日々(お題:キッチン)
画面の中に貴方がいてどうしたって手を伸ばせない夜(画像連想)

曇り空ひまわりの鉢見つめてはため息のよう風を降ろして(初音:く)
いつだってラジオネームは恋するウサギちゃん?にするって決めてたの(依頼:思い出のポップ・ミュージック/「ミュージック・アワー」ポルノグラフィティ)
古い紙のにおいがする 誰かの思いの詰まった空間が好き(お題:本屋)
次こそはわたしのことを選んでね 来世もちゃんと追いかけるから(初句:次こそは)
群青の空は何処まで続くのか行く人知らぬ新宿の雨(初音:ぐ)



寂しさと廊下に響くこの聲と人目をおらば今慟哭す(架空依頼:朝登校して教室に入ると黒板の真ん中に短歌が一首だけ書いてあった)
「白いご飯の上に梅干しを乗せて」今じゃ替え歌でも涙出る(お題:旅立ち)
「こいつのが多い」「いやこいつのが多い」ケーキ上手く切れなくてごめんって(連想:喧嘩/NG:喧嘩)
摺鉢にはたまごの殻ばかり 薔薇の肥料用におまじないのように(初音:す)
こんなとこ逃げ出してしまえばいいと母が投げ捨てたバッシュケース(架空依頼:母の思い出)

眠剤を飲んでもきみは傍にいた ゆるりと撫でる午前二時の部屋(お題:深夜)
山折と谷折とでこの人生はめちゃくちゃ複雑に見えてる(画像連想)
かわいいあなたのひつじです あなたの夢に一歩だけ踏み込むため(架空短歌:筆名から連想して/緋辻弥)
きみに逢うためにやって来ました 空を割って愛の言葉轟かせ(同上/なるかみ)
頭蓋骨が類稀なるまるさをしている貴方を愛している(初音:ず)



この空白は想像してください 百年前からの手紙です(お題:短歌)
あの人も薬指のが長かった 水よりも濃いなんて嘘なのに(初句:あの人も)
苦しいのは俺だけじゃないって分かっているけどやっぱりしんどい
銀紙の薬のちからで笑えてるね 死ねばいいのにぼくなんて
旅に栞を挟んで少し休もう むらさきの空もくろい雲も

証明していたい わたしが確かにこの世界の一部であること
すべては繋がるひとつのゴールにすべてはひとつ、意味のあるものに
鉛筆削りが壊れてるから鉛筆すら一人で削れないの
円周率が三だけでなかったこと、未だに恨んでいますからね
寂しいとその言葉が例え嘘でも受け止めてくれるのですか? ねえ。



20230418