25/白い猫 「あっ、ねこ!」 「待てコラ何処へ行く」 「ねこですよ! かわいい! あっおれの方がかわいいですけどねこのことかわいいって言ってるおれかわいくないですか」 「どうでもいい」 「真っ白ですね。飼い猫ですかね」 「撫でないの」 「ひっかかれるかもしれないじゃないですか」 「そう」 「あくびしてる〜。このおすまし顔、すごいなんか、おれに関心ないみたい」 「そうだな」 「じゅんちゃんせんぱいみたい」 「………」 「否定してくれないんですね! じゅんちゃんせんぱいのばーか!」 「だから勝手に走り出すな荷物を半分持て」 *** 26/世界のかたすみ 「ねーじゅんちゃんせんぱい。おれ、世界のはじっこってここだと思うんだよね」 「何、藪から棒に」 「それはね、じゅんちゃんせんぱいがいるから」 「俺は端にいるのか」 「だってね、その方がじゅんちゃんせんぱい落ち着きそうだから。それに、はじっこにいてくれた方がおれはじゅんちゃんせんぱいを追い詰めるだけで良いでしょう?」 「だけってなんだよ意味わかんねえ」 *** 27/とけてゆく 「じゅんちゃんせんぱい、アイス溶けますよう」 「あとちょっと」 「バニラ味の生ぬるい何かになっちゃいますってえ」 「先に食べてて良いから」 「あっ! もしかしておれに白くてちょっとべたついてるものを食べさせたいがための演出………!?」 「わかった、すぐに食べる」 *** 28/ラブレター 「あー! じゅんちゃんせんぱいなんですかそれ! なんですかそれ!」 「うわ最悪」 「最悪って手紙もらったことがですか! そうですよね! そんな悪趣味なピンクの封筒! これみよがしなラブレター感!!」 「いやお前に見つかったことがだよ。別に悪趣味でもねえし…あっ」 「とーった!」 「おま、」 「えーっとなになに、吹奏楽部の活動で男子棟に来た時に貴方を見つけて名前だけでも知りたいと思いました―――ってふーんだ!」 「うわ」 「おれのが! おれのがじゅんちゃんせんぱいの名前もクラスも同好会も住所も志望校も知ってるもんね! こんなじゅんちゃんせんぱいの顔しか知らないやつにじゅんちゃんせんぱいを渡したりしませーーーん!!」 「だからって破くなよ…」 *** 29/目をそらす 「じゅんちゃんせんぱいー」 「うるさい」 「まだ名前しか呼んでないのに!」 「うるさい」 「………じゅんちゃんせんぱいのその眼鏡は、盾、なんですか?」 「………ハァ?」 「おれは、まあ、そういうのもっ。いいとおもいますけどっ」 「何言ってんのかわかんない」 「でもちょっとよーくんとそういうのかぶるから、おれちょっと嫉妬〜しちゃうかもっ!」 「お前ってうるさくしてないと死ぬの?」 *** 30/かたわら 「梓」 「なんですかじゅんちゃんせんぱい………ふふふ」 「その本取って欲しかったんだけど何その気持ち悪い笑み…」 「当たり前に呼んでくれたなって!」 「何が」 「おれがよこにいるの、みなかったのに! みなかったのに! じゅんちゃんせんぱい、おれがここにいるの当たり前みたいに呼んでくれたなって」 「そりゃあれだけうるさければ見なくても分かるだろ…」 *** 31/蜜色 「じゅんちゃんせんぱいって琥珀、知ってますかあ?」 「馬鹿にしてんの?」 「いえ。ただの確認!」 「琥珀が何」 「いいなあって思って」 「はあ?」 「じゅんちゃんせんぱいもそう思いませんか?」 「さあ」 「ねえ、じゅんちゃんせんぱい」 「なに」 「おれが琥珀の中に入ったら、大事に持っていてくださいね」 「………何年掛ける気だよ」 *** 32/朝焼け 「じゅんちゃんせんぱい、今日朝焼けすごかったの見ました!?」 「いや見てないけど」 「おれ早く起きちゃって! だから見たんですけど! 本当、今から世界が終わるんじゃないかってくらいすごくて! じゅんちゃんせんぱいにも見せたかったなあ!」 「写メは」 「えっおれケータイ持ってないですよ」 「………ふうん」 「でもじゅんちゃんせんぱいが朝焼けに興味あるなんて思わなかったなあ! ふふふ、また一個新しい発見!」 「うるさい」 *** 33/なにもいらない 「ねーじゅんちゃんせんぱい」 「何」 「返事してくれる!」 「………」 「わあい無視!」 「お前何なのどっちでも良いの?」 「どっちでもいいよ」 「じゃあ返事しなくていい?」 「おれは、じゅんちゃんせんぱいが今、ここにいれば、それでいいよ」 「………」 *** 34/指先 「じゅんちゃんせんぱいの手って綺麗ですねえ」 「何が」 「何って言われても、手がですよ! 爪の形が綺麗!」 「はあ」 「でもちょっと荒れてますね。さかむけ」 「ほんとだ」 「さかむけって、別名親不孝って言うんですよね! おれには出来たことないですけど!」 「………」 *** 20190117 |