子守唄 「涼暮くん」 ごろん、と横の熱の塊が動く。熱い、熱いから出来たら離れてくんない。マジで。根古への義理とかこの際置いといてもマジで熱い。なんでこんな体温高いんだ、子供か。熱でもあんのか。 「さたけ、」 「熱いのはいっつもな。平熱だよ」 「エスパーかよ」 「そんな顔してて読めない方がどうかと思うよ」 どうしてこんなことになっているのだろう、というのは既に定型句のようになっていて意味を成さない。分岐点は幾つだってあったはずなのだけれどもつまり涼暮が何処かで選択を間違えたばかりに今こうなっているのだけれど、だからと言ってこの状態がどうしても嫌な訳でもない。だって、佐竹は、ともだち=Aなのだし。そんなふうにして眉間に皺を寄せていると、つい、と眉間を佐竹の指がつついていった。 「涼暮くんも最初より随分表情豊かになったよね」 そうだとしたら誰の所為なのだろう、と思う。絶対佐竹の所為だ。ついでに根古。榎木やロックンロールフラワー、あと文芸部とか梓とか。その辺りを触れ合っていただけならばこんなことにはならなかったと思う。 「しゃむにゃも面白がってた」 「…やっぱ面白がってたのかよ」 そうだろうな、と思っていたことを肯定されても別に何が変わる訳でもない。 手が、伸びてくる。 「寝なよ、涼暮くん」 「………お前が熱くて眠れねんだよ」 「子守唄うたったげるから」 「ねえきいてた? 熱い」 「ねんねーん、ころりーよ、おころーりーよー」 「それ音程取りづらくない?」 * 20160702 *** 主人公だもの、法則の外へとまっしぐら! 某篠祢は幼少の頃、没個性な人間だったと言えるだろう。少しばかり優秀に生まれついてしまっただけに自らの没個性加減にその脳みそを普通≠ニ断定したのだった。そういった子供が周囲に馴染めるかというと結果はおそらく想像の通りだろう。ひどい扱いを受けた訳ではないし、大人たちは褒めそやしてくれたけれどもそれが周囲の子供たちにはあまり気に食わないらしく、悪循環を作っていた。 そんな中で篠祢をいっとうに甘やかしてくれたのは所謂オトナのお姉さん≠スちだった。彼女たちは篠祢の賢さを評価し、彼女たちの寂しさを埋めてくれることを理解し、篠祢を対等なものとして扱ってくれた。周囲から少しばかり&b「ていた篠祢にとってそれはとても心地好い空間であったし、悪いことでもないのだ。周囲には篠祢を指差し陰口を叩く者もいたけれど、それでも篠祢はちゃんとした相互理解の上でその行為を行っていると考えていた。だから童貞卒業が周囲よりずっと早かったことにも、今でもその延長線上を歩いていることを、気にしていなかった。 だって、某篠祢は主人公ではない。 何処にでもいるような脇役。だから没個性。自分がどうあるべきかなんて放っておけば流されるように決まるものだと思っていたし、人の目なんて気にする必要もないと思っていた。思っていたのだ。自身の所属する文芸部の部長と、半ば強引にそういうこと≠ノなるまでは。 「ねえ千鳥くん」 呼び掛ける。 「千鳥くんにとって篠祢くんって、なあに?」 「えええ、何、突然………」 思っていた通りに千鳥は困った顔をしてみせた。篠祢にはそれくらい予想済みである、予想するまでもないことである。 「んんーああ、あ。敢えて言うのなら…、特別、かな?」 恋人だとか、好きな人だとか、そんな回答を望んでいた訳ではないけれど。 ―――会えると良いね。 最後に別れた彼女の言葉が思い出される。 ―――篠祢くんを大人にしてくれるひと。 そこで初めて、某篠祢は自らが主人公になりたかったことを悟ったのだった。 * image song「馬鹿はアノマリーに憧れる」鬱P * リプきたキャラ×自分好きな曲の文章かく for おそうじさん * 20160703 *** もっと言うならそれ以上も 「ああ君のことは知ってるよ榎木くんだよねよおう知ってるよ! 涼暮くんとよく一緒にいる! 仲良いの? 仲良しなの? 仲良しじゃなきゃ一緒にいないよね! だって涼暮くんってそういうこと強要するような子じゃないしっていうかそもそも人と一緒にいるって本当はすんごい奇跡なんじゃないの? ねえ? どう思う? っていうかお菓子持ってる? 僕は持ってるんだけどさ。ところで年下の彼氏は元気?」 そこまでほぼ息継ぎなしで言われたことが怖いしまったくこの人と多分関係のないはずの妻鹿さんのことを知られてるのも怖いし情報社会怖いし名前が出て来たことで多分涼暮くん関連の多分文芸部とかその辺の何かだと思うんだけれどもそもそも顔が近いし。 「ねえ」 さっきのマシンガントークが嘘みたいに静かになる。 「このままキスとかしたら年下の彼氏は怒るかな?」 そんなことを宣ったので高校生とは思えないほど童顔の多分先輩から出来るだけ距離をとろうとしたのだけれども、元来押されることにはひどく弱いのでそのままぐいぐいと距離を縮められた。縮められて縮められて、鼻と鼻がくっつくくらいまで縮められてでもそれでも負けるもんかと言うよくわからない対抗心で目は閉じなかった。 勿論キスはされなかったけれどもあまりにその距離が距離だったので落ち着かなくなって、もっと有り体に最悪に言い換えるのならば多分興奮なんてものをしてしまって(妻鹿さん以外で!)(本当に最悪だ!!)はやく妻鹿さんに会って今すぐキスして欲しくなった。 * 20160712 *** その綺麗な声で囁かないで。これ以上好きにさせてどうするの? 一緒に暮らし始めてから今までの分が一気に溢れ出ているみたいだ、なんて思う。その人は年を重ねてはいたけれどもそれでもその美しさを失っていなくて、それを再認識して真正面から生徒の立場でない場所から見られるとなると途端に気恥ずかしくなるもので。 「こっちを見てはくれないのかい?」 洋くん、と囁かれたその声に身体が芯からぶるりと震えるようなそんな心地になった。 * @huwaodai * 20160801 *** 01/ため息 「じゅんちゃんせんぱい、いいこと教えてあげましょっか」 「何、ため息の妖精の話なら間に合ってる」 「なんですか、ため息の妖精って。しあわせの妖精でしょ」 「しあわせのようせい」 「そ、しあわせの」 「はあ、お前のその顔腹立つな」 「あっ、今ため息二回目! これでまたじゅんちゃんせんぱい、妖精さんを殺しましたね!」 「なんでちょっとうれしそうなんだよ」 「おれがじゅんちゃんせんぱいのしあわせの妖精になればいいのかと思いまして!」 「………」 「あっ無視ですか? 無視ですか!? じゅんちゃんせんぱい、ひっどおい」 *** 02/内緒のキス 「あのねえ、よーくん、おれね、本当は内緒でじゅんちゃんせんぱいとキスしたことあるの」 「………襲ったの」 「ううん。飲みかけのペットボトル勝手にもらった」 「………ん?」 「だから、ペットボトルもらったの。じゅんちゃんせんぱいの」 「お前、飲めたの」 「まあ、うん。飲めなくはないよ。よーくんみたいに吐いたりしないし。だってじゅんちゃんせんぱいのだからね!」 「そう」 「もっと興味持って!!」 「………で、なに。間接キスとか、そういうオチなの」 「オチとか言わない!!」 *** 03/夜伽 「じゅんちゃんせんぱいって、セックスとかしたことあるの?」 「…あるあるちょーある」 「その間はありませんね! やった、おれのじゅんちゃんせんぱいは清い!」 「お前日本語通じないの?」 「あのね! じゅんちゃんせんぱいがおれに反応してくれないのってもしかして昼間だからなんじゃないかって思って!」 「夜でもむりだから」 「ええー。ほら、よーくんの部屋借りて、さ。よーくん寮だし」 「家主どうすんだよ」 「よーくんだってともだちくらいいるんじゃないの」 「だからって追い出して良いことにはならねーだろ…」 「じゃあじゅんちゃんせんぱいの家、行っても良い?」 「来んな」 「ねえ、おれたち天文部とかならよかったね」 「はあ?」 「ああでも、それだと学校には泊まれてもじゅんちゃんせんぱいにはあえなかったね」 *** 04/little 「お前って」 「わ! 今日は無視じゃないんですね! おれうれしい!」 「思いの外重い」 「そりゃあ生きてますからね」 「………」 「こんなにもちっさくてかわいいのに、生きてるんですよ」 「…分かってる」 *** 05/「ごめんね」 「あのねえ、おれ、じゅんちゃんせんぱいが三年生でおれが一年生なの、すごい嬉しいけどすごくかなしい」 「そう」 「じゅんちゃんせんぱいが先輩じゃなかったらおれはじゅんちゃんせんぱいに体育館の方向教えてもらえなかったと思うし」 「そんなことしたっけ」 「覚えてるくせに。多分一個上だったらおれより多分じゅんちゃんせんぱいはよーくんと一緒にいて、おれ今よりずっといやだったとおもう」 「ふうん」 「だから、じゅんちゃんせんぱいが三年生でおれが一年生で、よかったんだけど、じゅんちゃんせんぱいは今年で、卒業しちゃうから」 「………卒業するって分かってたのか」 「うん。当たり前。だからこんなに全身全霊でアピールしてるのに!」 「うざい」 「照れ隠しもかわいい!」 * お借りしました! http://hinari39.fc2web.com/setunai-hutari.html *** 06/スイート・ライ 「あのねーおれね、じゅんちゃんせんぱいに一生ついてくー!」 「くんな」 「照れなくてもいいんですよ!」 「照れてない」 *** 20190117 |