劇場 

 まるで箱庭だ、と六合はいつだって思っていた。その頭の中は所謂一つの世界で、それは誰だっておんなじだっただろうけれど。だって他人とかそういうものを理解しきろうなんて、本当に、難しいことで、多分出来やしないんだろうな、と六合は思うものだから。
 中学生の時、隣のクラスでいじめ≠ェあったことがあった。らしい。らしいというのは結局のところその全貌はあやふやで、首謀者が誰だとか誰にどんな嫌がらせがされたのだとか、そういうことは一切伝わってこなくて、ただぼんやりといじめ≠ニいうものがあったのだと、そう担任から聞かされただけだった。何があったんだろう、別に人の不幸をほじくり返すような真似を好んでするようなタイプではなかったし、もうクラス替え間近という時期で、つまりクラス替えに直接影響する最終テストの前で同級生たちの関心はすぐに薄れて自分のためだけを考えるようになってしまった。
 タイミングだとか、偶然だとか。そういうものがあることを六合は否定していない。担任がいじめ≠フことをそのタイミングで伝えたこともきっと意図しなかったことだろうし、あれでも一応配慮だとかそういうことをした結果なのだろう、とまだ子供の六合でも分かった。そして周りの同級生たちも子供ながらに分かっていたからこそ、目の前の自分のことに集中したのだろう。
 誰かの不幸よりも、自分の幸せを。
 それが悪いなんて、誰もきっと言わないから。
 けれどもそういう、もしかしたらただの作り話のために、六合の中には一つの諦観染みたものが出来てしまった。人の頭の中なんて誰にだって理解が出来なくて、それをして欲しいとも思わなくなって、確かによくよく考えてみたらそれは正常な反応だったのかもしれないけれど、その時はすこしばかり頭がかたくて、もしくはその他の要因で、そうとは思えなかった。
「全部、糸が付いているのかもね」
そんな言葉を、全部否定するような、そんなひとに、出逢ったのは。
「………好きな、のは、脚………です」
スケッチブックに隠されたその額のその向こうを、糸なんてものよりも強固に顔≠認めたがらない箱庭があるのを知ったのは。
 ある、晴れた日のこと。
 それ以外は何も、憶えていなかった。

***

HERO 

 月一の面談なんてない方が良いに決まっている。それでもそれをするのはそこに問題があるからで、それはきっと、手の出しようのないことで。どうしたら良いのか分からないままこの学園に流れ着いて、理事長にはあまり気に入られていないようだけれどもなんとか教職を続けていて。
 この学園では基本、教育という概念についてすべてを捧げるような覚悟が出来ている人々が集まっている。だからその中で自分は少し浮いていて、それは年齢の所為ばかりではないと分かっていたけれど。やはり教師になるという夢は捨てられなくて、露頭に迷う寸前だったところを拾ってもらったのだからそれに報いるだけの働きはしようと思っていた。だからまだ、この学園にいるのかもしれない。此処は昔を思い出すから、あまり肌に合わないと、自覚しつつ。
「先生は、どうして先生になろうと思ったんですか」
いつものように進展しない家庭状況を報告されて、それに対する彼の対処を聞く。一時はひどく荒れていたようだったが拠でも見つけたのか、母親から電話が掛かって来たという報告も何でもないことのように言えるようになったようだった。生徒のそれが強がりなのか、それとも本当に乗り越えようとしているのか。それを判断するのは自分の仕事ではなかったけれど、彼は年齢という一点において評価することはなかったし、だからと言って別段信頼を置いてくれている訳でもなかったが、それなりに良い関係は築けていたのだと思う。
 だから、だろうか。
 今までずっと誰に聞かれても誤魔化していたその質問に、答える気になったのは。
「…昔、助けたい子が、居て」
返って来るのははあ、と言ったなんでもないような相槌。自分から話を振っておいてそう興味はないらしい。違う話を聞きたかったのかもしれないな、と思いながら言葉を続ける。彼は今さっきまで自分の抱える問題についてあれこれしゃべっていたのだ。違う話題を入れたくなるのも頷ける。
「でも僕は何も出来なかった。その子に何が大切なのか、教えることが出来なかったんだ」
「何が大切なのか…」
「…まあ、思い上がりも甚だしい話なんだけどね。僕はその子を救えると、その時は本気で信じていたし、その方がその子にとって幸せなんだって愚直に信じていたんだ」
「それって、今はそうは思ってないってこと?」
「いや、今でもそう思ってる。思っているけれど…別に、例えば幸せ、まで辿り着くのが流れだとして、そのルートは一つじゃないんだな、ってことは、分かった、かな」
青臭い話だろう、と言うと生徒は少し考え込んで。
「………なんだか、」
ルートは一つじゃない。つまり、ゴールも一つじゃない。必ずしも幸せにならなければならない訳ではないけれど、やっぱり、幸せになって欲しかったんだ。
「ヒーローみたいですね」
 その声が嘲りを含んでいたのは、きっと気のせいではないのだろう。

***

お前なんか、もう、要らない。 

 よーくん、と従弟は細い声を出して見せた。そういうのはあの女に似ているからやめて欲しいとは思うけれども、特に言ったことがないので別に配慮して欲しいとは思わない。
「これ」
差し出されたそれを開いて見て、ああこれなら大丈夫だな、と思う。こくり、と頷いてみせれば喜色のように絶望のようにその頬が染まった。
「怖いの」
だから言葉がぽろり、と零れ落ちた。
「怖くないよ」
「じゃあ何でそんな顔すんの」
「だって…」
 俯いたその頭に、旋毛が逆だ、と思った。なんとなく似ていると言われたことはあるけれど、従弟は父親似、涼暮も父親似、そしてその父親同士は他人だ。血は繋がっているけれど、似ている媒体が他人同士ならそういうものにしかならない。
「よーくん、」
 手は伸びてこない。ただ、従弟は俯いたまま、なんだそれは、まるで懺悔のようではないか。
「よーくん、おれ、よーくんのこと悪者にする」
「悪者」
は、と笑い声が落ちる。
「あの家から追い出されることが悪者になるってこと?」
「違うの」
「俺はあそこから出たいのに?」
「………本当に、出たかった、の」
「お前が一番分かってたくせに、まだそんなことを聞くの」
「………うん、分かってた。でもね、それでも、よーくんが父さんに何言われるのか、おれには分かるから」
「それは俺にとって何の意味も…とは言えないか。でもあるとしたら、それは、良いことだよ」
「良いこと、なの」
「良いことだよ」
いい、こと、と従弟は呟く。それからそっか、と言った。まだその顔は俯いたまま。
「よーくんには、」
「ん?」
「行きたいところ、あるの」
 行きたい、ところ。
 その男が瞬時に浮かんだのは、もう、刷り込みのようなものなのかも知れなかった。涼暮自身、これが執着ではないと、無下にされた(少なくともこの時点ではそう思わざるをえないところはあった)仕返しなのか、よく分からなくて。
 恋、と。
 言っていいのか。
「………あるよ」
それでも、答える言葉は決まっている。
「其処が俺の居場所じゃなくても、行ってみたいと、そう思うよ」
あの隣に例えば一瞬だとしても、立てたら。
 すべての答えが出る気がして。
「………なら、おれのお節介は不必要だね」
「そうだな」
「…死なないでね」
「それをお前が言うのか」
笑ってしまった。
 そういう冗談が言えるようになった従弟にも、それを受け取れるようになった自分にも、笑ってしまった。



image song「グレーマンのせいにする」クリープハイプ

***

わたし、しんでもいいわ。 

 最後に一回だけ、やってみたいことがあるんだ。
 そう自分が言ったことが榎木にとっては何よりもの驚きだったし、まさか自分の口から他者と関わりたがるような言葉が出て来るなんていうのもなかなかの驚きだった。もう既に各位の進路は決まったも同然で、そういうものに響かないと判断したからこその無謀だったのかもしれない。
「いやあでも、榎木にもそういう興味があったなんてなあ」
にやにやとした笑みを浮かべながら佐竹が肩を組んでくるのを別にはねのけもしないで、榎木はだって、と続ける。
「そういう思い出も、あっても良いかなって」
この間妻鹿さんのアルバム見てて思ったんだ、と続けることはしなかった。
 幼い頃から写真が嫌いで、それは自分の惨めな姿を写すものでしかなかったから。だからいつもカメラからは逃げ回っていたし、いつか消えゆく記憶を補強するようなものなんてない方が、消したい記憶を消してしまえるのだから良いのだと、そんなことさえ。でも彼のアルバムを見ていて、もしかして何かがこれからあって、自分と彼が離れ離れになってしまった時に、そういうものを忘れてしまうのは少し、寂しいとそんなことを思ったのだ。
「でも夜だぜ?」
この二人でどっちが冷静かと言ったらきっとこっちなんだろうなあ、と手持ちらしいコンデジをいじりながら彼は言う。
「このカメラで写っかなー…」
「良いじゃないですか根古せんぱい! 花火の火だけでも写ってれば、思い出せますって!」
写真ってそういうものでしょう? と笑う後輩に、ああ、こういう子だからこそやろうと思ったのだろうな、と思った。

 夜のプールに忍び込んで、花火。
 見つかったら反省文を何枚書かされることか。一応警備員やら見回りやら一端に調べあげて、それはもうスパイだとかそういうものみたいだな、と思った。唯一安心出来ることと言えばこの学園は敷地が広いので、そして大きな音の出る花火というのもラインナップから除いたので、そこそこにひっそりとこの会を開催出来るかもしれない、というところだけだった。その安心もどれ程のものになるのか、怪しいものだったけれど。
 それでも警備員の見回りをやり過ごして忍び込んだプールサイド、とても泳げそうにはないその冷たい水は、既に四月から水泳部員が使うからか綺麗にされていて。花火の火がちらちらと、静かに夜を彩っていく。合間にぱしゃぱしゃと言ったカメラのシャッター音も聞こえて来るし、なかなかに楽しい。無理を言って引っ張ってきた涼暮も、それにくっついてきた坐故もそれなりに楽しんでいるらしい。友達が楽しいのは良いことだ、そして大好きな、後輩が。
 楽しそうであるの、も。
 ふと視線を逸らした先の、水面に映った月が綺麗だった。
「ねえ、えっと、」
「根古」
「ネフル、くん、あれ、撮れる?」
「あれって、月? 水に映ってるやつ? ちょっとこれだど綺麗にはいかないかも」
「それでも、いいよ」
ぱしゃり、シャッターの音。これくらいにしかならない、と画面を見せてもらって、充分、と笑って。そうしたら。
「あーせんぱい! 何してるんです?」
「あれ、ネフルくんに撮ってもらってた」
「わ! 綺麗ですね!」
 月。
 綺麗。
 夏目漱石。
「―――月が、綺麗ですね」
「うん? はい!」
意味の分かってなさそうな後輩に、この写真のデータをあとでもらって、もしも叶うなら未来にこの話が出来たら良いのにな、と思った。



黒い水に身投げをしたが 魂が膨張しているのでどうしても沈めないのだ 堀割に浮いたねずみの死骸のように このまま きれいな月をながめながら どちらの岸にも流れつかず 痺れの海にたどりつくのが 泣きたいほどのたのしみなのだ / 村野四郎「不眠の夜」



結局見つかって反省文を書く羽目になった。涼暮くんは颯爽といちぬけした。

***

相対のチュー 

 此処は静かな場所だった。
 つい、半年ほど前までは。
「じゅんちゃんせんぱーい!」
今日も今日とてこの五月蝿い―――もしかしたらわざと五月蝿くしている後輩は瑠璃川に付きまとってきて、確かに瑠璃川も逃げるようなことはしないのだけれども(だって此処は瑠璃川の謂わば城なのだ)(どうして侵入者に対して引かねばならないのだろう)。
 この後輩は馬鹿なように見えてよく分からないところがあるので、そして瑠璃川のことなどを好きだなんて言って剰えその先をせびってくるので、気の休まる時が正直あまり、ないのだけれど。
「あのね、じゅんちゃんせんぱい、人間って何で二足歩行を始めたんだと思う?」
ああまた始まった、と思う。
「生きるのにそっちの方がよさそうだったからだろ。それ以外は認めない」
「んーもう! じゅんちゃんせんぱいロマンチックなくせに、すぐ現実的な答えに逃げようとする!」
 曰く、瑠璃川洵という人間はロマンチストらしい。というのがその馬鹿で五月蝿い後輩の見解だ。だから瑠璃川が現実的な返答をするとぶう、と頬を膨らませるし、またそれがサマになるのだから本当に見ていて腹が立つ。人のことを決め付けるな、と言うのは簡単だっただろうけれど、この後輩にそういった労力を割くのはひどく無駄なことのように思えた。
「おれはね、じゅんちゃんせんぱい、誰かを抱き締めるためだと思うんだ」
ほら、人のことなどお構いなしに、彼は物語を続ける。お前の方がよっぽどロマンチストだよ、と思うけれどもそれを言ったら言ったでそう感じるのならばどうこうと話を展開されるに決まっている。面倒だ。
 ため息、一つ。
「………なんで、お前は、」
「ん?」
「そう、馬鹿なんだ」
「それはね、」
知りたい? と馬鹿は一周回ってみせる。
 「その方がすてきって、学んだからだよ」
おれを馬鹿って言う唯一の人にね、と馬鹿はぶさいくな顔で笑った。



image song「二息歩行」初音ミク(DECO*27)

***

別れの季節 

 この先何度でも下井は思い出すだろう。舞う香りに鼻をつまみながらそんなことを思う。春の香りがしていた、出逢った時の香りだった、だからこの先何度でも思い出す。思い出してしまう。
「じゅんちゃんせんぱい」
ひっそりと呟いた声が誰にも聞こえないように、きっと、自分にさえ。
―――×××です。
そんなものは忘れてしまえ、忘れてしまえ、殺してしまえ。それを、
 選んだんだろう。
 まっすぐに前を向く。またこの季節は巡ってくる。それを下井は知っている。決してまるきり同じではないのに、またこれを思い出させるような、そんな季節は、きっと。
「じゅんちゃんせんぱい」
―――さよなら。
もう見えない背中に、そう呟いた。
 それで、本当に終わりだった。



20151219

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ソメイヨシノ 

 女の子が生まれたらヨシノって名前が良かったんだあ。
 幼い、まるでお人形のような旦那様≠ェそんなことを言ったのはお腹の子供の性別が分かってからで、ひどく安心したように言うものだから、それも素敵ね、なんて当たり障りのないことを返すしかなかったことを覚えている。
 あの時。
 彼はもうこれを、計画していたのだろうか。
―――貴方、本当は嫌なんでしょう。
―――なんで?
あどけない子供のように、何も、この外の世界なんて知らないとでも言うように、旦那様は首を傾げて見せた。
―――君はおれの妻。そうでしょう? なのに何を嫌がることがあるの。
夫は妻を大切にするものでしょう、抱くものでしょう、子供を作るものでしょう。
 何一つ無理強いはなかった。決して上手とはいえなかったけれど、君が嫌ならそれでも良いけど、おれ経験ないし、面倒でしょう、もっと時間掛けても全然良いよ、おれには時間がたっぷりあるから。なんてことを矢継ぎ早に言われてしまえば頷く他、プライドが許すはずもなかった。
「君は、」
残された息子を、その面影を色濃く残した息子を眺めながら呟く。
「本当は、ずっと、此処にいるはずだったのにね」
 運命の女神様がきっと攫っていってしまったんだ、引き止めておかなかったから。
「運命の女神様は桜の色をしているのね、きっと」
ばーか、とお嬢様≠ノはそぐわない言葉を、吐き出したくなった。

***

泡沫の夢 

 夢なんてものは持たない。赦されるのは野望くらいで、それくらいの絶対にやってやる気概がなければ邪魔なもの、そんなふうに下井梓は思っていた。だからたらればの話は好きじゃあないし、そういう話は一切しないことにしていた。
 でも。
 刻々と迫る期限にどくどくと心臓が五月蝿い。本当にそれで良いの? 本当に良いの? 少しくらい考えてみたら良いんじゃない? もしも、従兄が現れなかったら。そうしたらこの学園になんて入らなかっただろう。もしも、あの日桜の樹の下になんか行かなければ。そうしたらあの人とは出会わなかっただろう。もしも、あの人に告白なんてことをしなければ。そうしたら一緒にいることなんてなかっただろう。もしも、一緒にいなかったら。そうしたら本当に好きになってしまう、こと、なんて。
 鼻から嘲笑が抜けていく。
 もしも、なんて。
 全部殺すんだ。自分に言い聞かせる。殺して、お人形になるんだ。ぱちん、と弾けてしまう夢なんてものは最初から持たない方がマシ。だから一緒に殺してお墓に埋めちゃおう。
―――さようなら。
人間だったおれ。
 ぱちん。

***

春の夜の大罪 

 ちらり、とその姿が見えた気がした。
「父さん!!」
叫んで駈け出して、でもその先には誰もいなくて。
 急いで辺りを見回す。ひらひら舞い落ちる桜の花片。その先に。
「………その人が、いいの」
それが本物かどうかなんてもうどうでも良いことだった。ただあの時聞けなかったことを、聞きたかった気がして。
 隣には知らない男がいた。父よりずっと年が行って見えたけれど、聞いた話からきっと父と二つしか違わないのだろう。父は魔物のような人だったから。いつまでも、年を取れない、魔物。
 心を、何処かに置いてきてしまった、代償。
「オレよりも、ずっと、その人の傍にいたいの」
較べる対象じゃないのは分かっていた。それでも聞いてみたかった。それが幻でも夢でも、一度聞いてみたかった。
―――ごめんね。
それは言う。そんなことが聞きたいんだじゃないのに。
―――愛してるよ。バイバイ自由。
 それは呪いのように、この胸を縛り付ける。

***

めぐり逢えた日のこと 

 春のことだった。
 この学校を選んだことに大した意味はない。倒すべき敵がそこに通っているから、その敵と共同戦線をはりやすくするために、同じ学校の方が都合が良かっただけの話。一応同じ家に住んでいるのになんだかんだで敵は寮に入ってしまって、そうそう会えはしなかったから。それに一役買ったのは自分だっただろうけれど。
「絶対、渡さないから」
そんなふうに、自分の決意を確認していた時のこと。
 一陣の、風が。
 ぶわり、と。
 思考を攫う、ように。
「…どうしたの」
一年生でしょう、とその人は言った。ネクタイの色が違うから先輩だ、そして敵とも違う色をしているから二個上だ。
「早く体育館行かないと入学式に遅れるよ」
「え、っと、あの、」
「もしかして体育館分からない? それなら、」
 今だ、と囁く声がした。
「あっ、あのっ! おれは下井梓です! 貴方は!」
「瑠璃川洵だけど、体育館は、」
「るりがわじゅん………じゅんちゃんせんぱい!」
「体育館、………って、はい?」
「じゅんちゃんせんぱい、おれ、貴方のことが好きです!!」
 はあああ? という至極真っ当な反応を前に、ただもう次に考えていたことは入学式のことで、じゃ! と手を振ってそのまま体育館へと駆け出した。
 それだけで、本当はそれだけで終わるはずの話だった。



邂逅 @kaikoubot_00

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20190117