でこぼこ合わせ 山諏佐

 他所でやってろバカップル。
 都内、マジバ。諏佐佳典はため息を吐いた。主に原因が目の前のバカップルである。同級生である今吉と、その後輩の花宮。紆余曲折を経てくっついた彼らだったが、どうやら未だに二人きりになるのが恥ずかしいらしく、こうして練習が休みの度にデートに付き合わされるのだ。何と傍迷惑な。自分と同じように巻き込まれている花宮側の被害者、山崎には同情しか湧き出ない。
 「なんや諏佐、そんなつまんなそうな顔して」
お前らにあてられてんだよ、という言葉は飲み込んで別の言葉を吐く。この妖怪サトリに意味はないかもしれないが。
「いや、オレも恋人欲しいなって思って」
見ている方が砂糖を吐きそうになるイチャつきっぷりに、時折そう思うのも事実だ。あと、恋人が出来ればこれに付き合わなくても良くなるかもしれない。可能性は低いが。
「え〜ワシと花宮が羨ましいってことか〜?」
途端に嬉しそうに声のトーンを上げた友人に、うっかり吐きそうになったため息は咄嗟に飲み込んだ。
「そーだよ」
「いややわ〜照れるな〜。なぁ、花宮」
僅かながらに頬を赤く染める花宮も喜んでいるようで何よりだ。
 「いっそのことそっちの山崎くんとくっついたらどうや?」
にやにやとたわむその瞳を睨みつける。
「そんなパズルみたいに行くもんじゃねーよ」
「えー、つまらん」
再びイチャつき始めた二人を遠い目で見ながら、諏佐はシェイクをずご、と啜った。甘い。
「諏佐さんは彼女とか、好きな人とかいないんですか?」
小さく、隣からの問いかけ。こちらも見ずにポテトを弄ぶ山崎に、諏佐も横目で視線を送るだけにして返す。
「まぁ、いないけど」
再びずご、と啜る。期間限定のヨーグルトソーダ味は、思ったよりも甘かった。結露した側面から水滴が滑り落ち、広告を兼ねたシートを濡らしていく。
「でもモテそうですよね」
「そんなことねぇよ、告白とかされたことねぇし。こう言っちゃなんだけど、オレを好いてくれる物好きってそんなにいねぇと思うし」
正直、女の子からしたら190cmは非常に高いし、いくら高身長が人気だと言っても此処まで来れば格好良いより先に怖い、が来るものだ。別にモテたい訳ではないが、目の前の腹黒眼鏡のように最低月一で告白を受ける、という状態にはてんでなりそうにないのは予想がついた。
 「…オレはアンタのこと好きですけどね」
何でもないことのように告げられた言葉に、驚いてまた目線だけをそちらに向ける。そっぽを向いて僅かに見えるだけになった耳が真っ赤に染まっているのに気付いて、やたらと頬が熱くなっていくのを感じていた。



あみだ

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眠った肉食動物は起こすな 瀬降

 瀬戸健太郎は頭が良い。それは対人関係にも適応されていて、一度見れば顔も名前も覚えてしまう。薄暗い路地にある自販機。何にしようかと迷うその横顔には見覚えがあった。
 特に何をしようと思った訳ではない。強いていうのなら、気が向いたから。
 「降旗光樹くん、だよね?」
にこにこと声をかければ、きょとんとした顔で振り向かれた。数度目を瞬いてから、
「えっと、あの…どちら様でしたっけ…?」
申し訳なさそうに見上げてくる。それが小動物のようで可愛い、なんて思ってしまう。
「瀬戸健太郎だよ」
フルネームで名乗るも思い出せないようで、仕方なく前髪に手をやる。
「こうすれば分かるか?」
全て上げて額を出し、にやりと笑えばやっとこちらが何者なのか分かったらしく、肩が震えるのが見えた。
「し、つ、れいします…ッ」
「逃げるなって」
すり抜けようとした腕を掴んで壁との間に閉じ込める。
「ど、退いて下さい」
「いやだね」
「何かオレに用でもあるんですかッ?」
「いや特に?」
「だったら…ッ」
忙しなく動く視線に笑みが漏れた。
「用はないけど興味は湧いたからさ」
じり、と手をずらして更に逃げ場を失くしてやる。一層逃げ惑う視線。じりじりと身体全体の距離を詰めていく。
「あ、のッ」
「何?」
「近、いんですけどッ」
「うん、そうだね」
徐々に赤みを増していく頬が美味しそうだ。
 誘われるままに頬に唇を落とす。ぽかん、と呆けた顔。もう数秒反応がなかったらニ撃目に出よう、そんなことを考えていたら突き飛ばされた。
「―――〜ッ!!!!」
声にならない悲鳴を上げて逃げていく背中を見て、思わず舌なめずりする。
 興味が湧いた、程度ではおさまりそうになかった。



あみだ

***

 「…今吉さん?」
東京の雑踏の中、振り返る。目線より下にある頭、水色の髪。こちらを射抜くように見つめる、澄んだ空の色。
「…黒子?」
三年前、自分たちの青春に幕を引いたとも言えるその人が、今吉の目の前に立っていた。

運命的陰謀論 今黒

 「ほうか、黒子くんももう大学生か」
「はい」
マジバの席で向き合いながら、今吉はどうしてこうなった、と考えていた。雑踏の中で知り合いにあったからと言って、普通はお久しぶりです元気でしたか、じゃあ、で終わるものではないのか。どうしてこれから時間ありますか、という展開になるのだ、勘弁して欲しい。目の前の黒子は何を考えているかも良く分からない表情のままバニラシェイクを啜っていた。ずぞぞ、という間抜けにも感じる音が未だ黒子を掴めない今吉を苛んで行く。バニラシェイクが好きなのは変わってないのか、と思ってそれからその情報は何処からだったかと考えてしまう。どうせ青峰か桃井だろう、頭を振って追い出した。あの二人は何だかんだで黒子のことが大好きだったのだから、その気持ちの在り処は問わずとも。
「今吉さんは東大生ですか?」
「おん、今年三年生や」
「就活ですか?」
「…黒子くん、嫌なこと思い出させるんやな」
「すみません」
ああ、くそ、帰りたい。そんな今吉の心情を知ってか知らずか、黒子は仄かに笑みを浮かべた頬で、この期間限定のナゲットソース、美味しそうですね、なんて言うのだ。
 結局終電間際まで他愛ない話で繋いでしまった。はぁ、と溜息を吐きながら今吉は自分の少し前を歩いて行く黒子の背中を見つめていた。
「今吉さんは何線ですか?」
「丸ノ内線やけど」
「そうですか」
駅の前でじゃあ、僕中央線なので、と人混みに紛れようとする黒子。それだけか、脳髄が沸騰したような感覚に襲われた。全く自分は読ませないで、マイペースにも程があるわ。こんなに人を掻き乱した責任は取ってもらうで、とその腕を掴む。
「今吉さん?」
「黒子、連絡先教えてーな」
「連絡先、ですか?」
「そ、連絡先。それともワシとメールとか、したない?」
卑怯な言い口だと分かって使う、逃がしてなどやらない。無意識だろうと引っ掻き回された分だけ掻き回し返してやる。
「別に、嫌じゃないですけど」
「じゃあ決まりやな」
今吉が携帯を取り出せば、黒子も同じように携帯を取り出した。
 確かにたわんだ唇。
 囚われたのは、どちらだったか。



あみだ

***

塩化ナトリウムを塗り込んだ、傷はぱっくり割れて血が滲んだ 原灰(R18)

 「へぇ? 赤司に強制退部させられて、青峰には殴られるとか。悪役ポジすぎて笑っちゃうね」
語尾に大量の草を生やしながら、その金髪の男は笑う。誰か除草剤持って来い、そう思いながら灰崎は自分の上に馬乗りになった男を見上げた。どうしてこうなったのか。
 殴られてぼーっとしていた時に声を掛けられて、手当してやるからとホテルに連れ込まれて。まぁ所謂保護ってやつだったと言えばそうなのだが。
「カワイソー」
「…お前に言われたかねぇよ」
金髪の男は原一哉と名乗った。そいつにも同じように殴られたような傷があった。
「ああ、これ? ラフプレーの仕返しだって〜。マジ頭ン中ババロア詰まってんじゃねぇのかな、あいつら〜」
じっと見ていた灰崎の視線に気付いたのか、原は楽しそうに訳を説明してくれた。殴られた後だと言うのにこんなにへらへらしているなんて、どっかイカれてるんじゃねぇのか。そう思ったのがバレたのか、尚も唇を歪めて、
「もう、慣れちゃったもんね、こういうの」
そっと落ちたのは冷たい接吻けだった。
 それから温度を分けるみたいに触れ合って、
「オレの方が年上っしょ?」
なんていう馬鹿げた理由でツッコまれて。その合間にも原はぺらぺらと喋るもんだから促されるままに灰崎も喋ってしまう。そうして三回戦目に突入する頃には、お互いがお互いの傷をえぐれるくらいには知ってしまっていた。
「ッつか、何でこんな、こと、してんの」
「えー…さぁ? 何でだろ?」
ぐり、と容赦なく抉ってきた原に思わず息を詰める。
「でもさー…ねぇ、きもちイでしょ?」
快楽を追い求めるのは人間の性なんだから。前髪の隙間から見えた瞳は、まるで獣のようだとだけ思った。
 この今舐め合っている傷痕が、化膿してもっと痛くなって、更に醜い傷痕になって。そうなるって分かっているのにきっとまた舐め合うのだろう。
 いつか、その痛みが愛おしいだなんて、そんな大それた勘違いが出来る日まで。



あみだ

***

 「さくらい」
その薄い唇がいつものように言葉を紡ぐ。
「さくらい、すきだ」
やわらかいその言葉が、胸に染み渡っていくようだった。

砂の城 桜古

 「古橋さんはたくさん好きって言ってくれますね」
「嫌…だったか」
「いいえ、嬉しいです。でも、ちょっと恥ずかしいのもありますね、照れちゃいます」
えへへ、とその頬をほんのりと確かに赤く染めて桜井は笑う。それを難しげな顔で見遣ると、古橋は小さい声で呟いた。
「オレの表情はあまり変わらないと言われるから…」
きょとり、と古橋を見つめる。
 そして、次に襲って来たのは恐らく、優越感だ。
 確かに、その頬は人よりは固いと思う。けれど、それでも好きな人の表情を読み取れない程、桜井は鈍くはない。
「大丈夫ですよ」
それに、と笑う。このラフプレーに手を染めるような人の、奥底に潜んだ心が全て自分に向いているという優越感。棄てないで欲しい、とその瞳はひどく雄弁だ。
「ボクはちゃんと、古橋さんが嬉しいのか、怒っているのか、悲しんでいるのか、楽しいのか、ちゃんと感じていますから」
そんなに不安がらないでください。手を伸ばす。一つ上のその人は抗いもせずにそれを受け入れてくれた。自分より一回りは大きいだろうその身体を包み込むつもりで抱き締める。
 人間というのは、あまりに脆く儚い。この人一倍危ういところに立っているこの人が、本当にこの手の中に堕ちてきたら良いのに。



あみだ

***

甘ったるい楔で首を吊れ 瀬火

 不快感を隠そうともしない目の前の顔を、瀬戸はにやにやと見つめていた。
「…何か用か」
元々敬語は苦手なようだが、恐らく今は使うつもりもないらしい。
「あーなんか、ムラッとしたから」
嘘偽りなくそう言えば、更なる不快感に顔が歪んだ。
 手についた壁との間に閉じ込めた虎の子。きっと、押しのけて逃げることは容易い。けれど、もし怪我でもさせたら、という慎重な思いが、暫く見ない内に出来るようになったらしい彼のチームへの配慮が、それをさせないでいるのだろう。思わず唇がたわむ。それならば、
「まぁ、別に、お前でなくても良いんだけど」
手を離す。
「黒子。かわいーよな」
突然紡がれたチームメイトの名前に驚いたのか、きょとんとした表情をする。そして、理解したのかみるみるうちに怒りに染まっていった。
「…ッ、てめ、」
「小さいし、綺麗だし、可愛いし、文句の付け所ないよな。あの勝気な性格だって、屈服させたら楽しいだろうし」
「黒子には手を出すな!!」
「じゃあお前が代わる?」
ぐ、と詰まる。
「お前が相手してくれるなら、黒子には手を出さないって誓うけど?」
追い討ちを掛けるように微笑めば、同じ高さの瞳が揺らめく。
「…ゲスヤロー」
「何とでも」
それを了承ととって一歩また距離を縮める。今度はもう、拒まれることもなかった。
「お前みたいな可愛げのない奴で我慢してやるって言ってんだから、此処は感謝すべきなんじゃないの?」
言ってから接吻けを落とす。きゅっと閉ざされた唇は、やたらと甘い。
「ほら、舌出せよ。それともやり方わかんない?」
悔しそうに歪む顔。憎々しげな表情。
 ああ、可愛くてたまらない。
 控えめに出されたその赤い舌に、瀬戸は噛み付くように自分のそれを絡ませた。



あみだ

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ささのはさらさら 高緑

*某セカイ系SF学園恋愛小説ネタ

 「どうしても、真ちゃんに言いたかった」
今がした切り出した宝石のような、そんな不確かな光を放つ瞳がじっと緑間を貫いていた。
「これが、オレの願い事だよ」
内緒にしてね、と笑うその顔も、いつもと比べたらとてつもなく崩れている。まるでなっていない。いつもの喧しい程の笑顔は何処へやったのか、無理矢理にしているのが鈍い緑間にも分かる程、そんな恥さらしな表情。
「それは、今すぐ叶えて欲しいのか。だから言ったのか」
「まさか」
その返しもどこか自嘲めいていた。
「彦星に届くまでは16年、織姫までなら25年かかるんだよ、願い事って」
聞いたことあるでしょ、一時期有名になったから、この話。そう笑う高尾を緑間はじっと見つめる。
「だからね、オレもそれ、信じようと思ったの」
夢があるよね、そうくるりと回ってみせた高尾に、何処が、と緑間は思う。何処が、夢があるなんて思っている顔なのだ、と。
「真ちゃんにオレの願い事が届くまで、25年」
長い、長すぎると雄弁に訴える瞳のことを、まさか本人が気付いていない訳があるまい。それでもどうしてか、高尾は続ける。
「この願いの大きさを考えたら、妥当な年月だよね」
そんな顔をするくらいなら止めてしまえ、と思うのに、高尾が全身で止めないで、と叫んでいるようで、緑間にはそれが出来ない。はく、と空気だけが揺れる。言葉さえ、見つからない。なにか、なにか、金魚のように、鯉のように、開閉を続ける唇も眼に入らないように。
「だからさ、その時まで、何も考えないでいて」
そうしたら、救われるから。そう言わんばかりの声色に、瞬間。
 ぶわりと身体中を駆け巡った閃き。
 「じゃあ、お前にオレの願い事が届くまでは16年、で良いんだな」
見開かれる。今度は高尾の唇が、はく、と揺れる番だった。オレの願いは、と囁く。小さな、ちいさな声で。でも目の前のこの男がそれを聞き逃すはずがないことを、緑間は知っている。
「願いが叶うのはいつになる」
「…単純に考えると倍数だけど、確か神様がどうにかしてくれるって言ってたな」
そんなものか、と鼻を鳴らしつつ、眼鏡のブリッジを押し上げる。
「では、とりあえず16年だな」
空を見上げる。まだ昼前で星は見えなかったけれど、それでも其処にあるのだと思うと何だか可笑しかった。



あみだ

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世界で一番大事にしたい 赤青

 「大輝」
やわらかな声を出そうという努力をしていた。
「ンだよ、赤司」
そんな苦労など気付きもしないかのように、いつも返って来る声の質は一緒だ。それでも、赤司は努力をやめようとは思わない。自己満足であると分かっていても、それをやめることなど出来ない。
「…何でもない」
「なんだよそれ」
かはっと屈託なく笑う顔も、そのまま伸ばされる手も、いつか失くしてしまうと分かっているのに。
 誰よりもバスケの神に愛された存在。あまりに綺麗な君が、どうか、壊れてしまわないように。



45の日
診断メーカー

***

いわゆる天使ってやつ 諏佐桃

*WC前

 数歩先で桃色の長い髪が揺れる。
「こうして諏佐さんとご一緒するの、初めてですねぇ」
笑う。言葉が口から零れた先から白く染まっていく。寒さで鼻先がちょこん、と色付いていてそれすらも可愛い。
 情報収集やマネージャー業、青峰の世話などに奔走する背中は頼もしいが、こうしてみるとただの女子高生であるのが良く分かる。細腕に大量のデータを印字した紙をまとめ、スタメンの教室を回っていたり、一人であの大人数のドリンクを用意したり。その能力故に桃井の仕事は多い。この小さな身体で、桃井は本当に良くやってくれていると思う。
 「いつもありがとう」
ぽろり、と零れたのは飾らない本心だった。
「データとか、マネージャーとか、すごく助かってる」
 歩調が少し乱れる。驚いたのか、大きく見開かれる瞳が見えた。斜め後ろから見るそれは睫毛がとても長いのが分かって、とても綺麗で。
 「…役に、立てたなら、嬉しいです」
少し振り返るようにしてはにかみながら見上げてくる彼女は。
 ああ、本当に、とても可愛い。



診断メーカー

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(このままじゃ嫌われてしまうのに) 花諏佐

 目の前を行く背中は、こうして見てしまうととても大きく感じられる。一人で立っていられると、そう、一人で生きていけるそれは、花宮から見ればとてつもなくつまらないものだ。人間らしくない、だからこそ人間らしいなんて思う。年齢の割には大人びていて、真っ直ぐに透き通って、嘘みたいに。自分とは違う、それは誰に言われるまでもない。触れてはいけない、馴染んではいけない、この人はいけない、お前とは違う世界に住んでいる、まっとうな人間だ。ぞわぞわと目の奥から湧き出るような警告。触れてしまったら、馴染んでしまったら、この人を壊してしまうのではないか。自分のいる世界に、この薄暗い場所に、叩きつけてしまうのではないか。
 それは、果たして。
 躊躇いなど、なかったと言えば嘘になるが正直そこまで困らせられたことはなかった。しかし今確かにこの胸で、耳で、唇で、目の奥で、燻っているのは紛れもなくそれだ。何がそんなものを生む? そんな問い、意味がない。問うまでもなく分かっているのだから。
 恐怖、ただそれだけ。いつしかあの人があの人でなくなるような、そんな確信めいた予感。それがあるからこそ、服の裾をひくようなそんな行動さえ、出来ない。
 「花宮」
柔らかな声が呼ぶ。
「お前は馬鹿だな」
足を止める。
「…突然、何ですか」
まだ背中は振り向かない。面白いものを見つけたようにくつくつと笑う声。だけれど馬鹿にしたような響きはない。
「馬鹿だよ」
振り返って、
「ほら」
伸ばされた手。
 馬鹿なのはどっちだと、そう思っても、きっとずっと昔に縊り殺した、良心というものが悲鳴のような警告を呪っていても、花宮はそれに抗う術を知らない。ああ、くそ、と思う。繋がれた手は温かくて、癖になりそうだと赤い頬を背けた。



診断メーカー

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20130201
20130617
20130710
20130809