ぜんぶゆめならよかったかもね、 R18 瀬原+触手


 目が覚めたらなんだか分からないがうぞうぞうねうねと動く謎の物体に囲まれていた。
「ねー瀬戸、これなーに」
囲まれていたというよりは巻き付かれていた、の方が近いだろうか。ふっと浮かんできたのは某魔法児童文学の火に弱いあれだったのだけれども、残念なことにこれはじっとしていたからと言って原を離してはくれなさそうだ。
 という訳で、恐らく原がこんなものに巻きつかれる原因になったであろう、目の前でじっと原を眺めているだけの瀬戸に問うてみることにした。目の前で、というのは少しばかり語弊があるように思うが。
 瀬戸がいるのは硝子であろうか、そういう透明で頑丈そうなものを一枚隔てた向こうだった。その背景は暗く、パソコンがいくつもの画面を光らせているだけで、ここが何処なのかすら判然としない。ただなんとなく感想を言うのならば実験室、そう、時折SF系の背景で見るものになんとなく似ている気がする。
 原の知っている瀬戸はただの(と言うにはあまりに一般的なものから外れている気はしなくもないが)男子高校生だったはずである。それが、どうしたらこんなライトノベルみたいな場所を用意出来るのだろう。
「ねー瀬戸、聞こえないの?」
もしかして声が届いていないのだろうか、ともう一度首を傾げてみた。瀬戸は向こうでぼそぼそと何か喋ったかと思うと、原のいる硝子の方へ近付いてきて、その外側に付けられていたらしいスイッチを少し操作した。
「う、わ…まぶし」
スイッチは証明だったらしく、原のいる場所がこれでもかと言う程明るい光で照らされる。これで少しは周りが見えるかな、なんていう原の脳天気な考えはすぐに飲まれることとなる。
 身体に巻き付いていた謎の物体が、突然活発に動き出したのだ。
「う、え!? なにこれ!?」
明かりがついたことにより活性化するものだったのか、今までぼんやりとしかその動きを認識出来ないくらいだったのが嘘のようだ。ずりずりと身体を這う感触はお世辞にも気持ちいいとは言えないし、またその物体も桜色をしていて気味が悪い。てらてらと光を受けて輝くそれは、まるで。
 頭に浮かんできたその例えを打ち消して顔を上げる。
「瀬戸、聞こえてるんデショ。これとめてよ…」
出来るだけいつものようにと思ったのに、その声は予想以上に情けないものだった。まとわりついてくるそれを押しのけようにも腕は後ろで動かないように固定されているし、ついでに言うなら脚だってそうだ。気色悪い物体が巻き付いている。
「う、え」
そのうちの一つが制服の裾を割って入ってきて初めて、原は本能的な危機感を覚えた。遠慮というものがないらしいそれは(そもそも思考が存在しているのかすら怪しい)、原が泣こうが叫ぼうが好き勝手するだけなのだろう。
 この場で助けを求められるのは硝子の向こう側の瀬戸だけだ。
 こんなになっても保ちたい余裕などもう原にはなかった。羞恥心もプライドも、全部が全部どうでも良くなって、ただこの不気味なものから離れたかった。
「せとぉ…! これとめてってばぁ…!!」
涙の滲んだ声だったと自分でも分かった。
 けれども瀬戸は向こう側で少しばかり唇を釣り上げただけだった。否、だけだったならまだ良かっただろう。もう一度近付いてきたかと思うと、何やら操作をする。原の頭上で光がもう一段階強くなり、更に活発になったそれが一層強く巻き付いてきた。



ask

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まずはおともだちから。 葉山×諏佐

*IH決勝戦後

 ばたばたと控え室が並ぶ廊下を走る。これを逃したら次のチャンスなどないように感じていた。今がした戦った彼らは準優勝、また冬にまみえるとは思うが、それでもトーナメントというものには魔物が潜んでいる。絶対なんてことはきっと、あり得ない。
 とかなんとか言いつつも結局のところ、何もしないというのが出来なかった。それだけの話なのだ。今葉山を走らせているのは青春だとかそういうものの衝動であり、ああ若いな、なんて後の日に振り返ることになるだろう。そう分かっていても、葉山は走ることをやめられなかった。はやく、はやく。息が上がっていく。試合よりドキドキする。
 目の前に見えた黒い集団に声を上げた。
「あ、あのッ」
振り向いた顔の中に、さっきまで対峙していた人。
「アドレスッ! 教えてもらえない!? ですか!?」
あと名前! と飛び付けば、その隣で主将をやっていた糸目が葉山やん、と人の名前を勝手に言ってくれた。自分で言いたかったのに。
「葉山っ小太郎です! あの、貴方はッ!?」
 ともだちになってください。なんて。
 今時きっと、小学生でも言わない告白だった。



えすえふ

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どうか僕をゆるさないで 景虎×諏佐

*原←諏佐前提
*相田母死亡設定

 それを目撃したのはとある春の終わりのことだった。旧友とその横を歩く制服姿の少年。教鞭を取ったと風の噂では聞いていたから、恐らく生徒だろう。
「よぉ、カッちゃん、久しぶりだな」
此処で声を掛けるのもどうかと思ったが、旧友に会える機会なんてそうそうない。だから自分の素直な欲求を優先させてもらった。一緒にいる生徒には悪いが。
「こんなとこでどうした? 学校の用事か?」
「文化祭の買出しですよ。彼は私のクラスの学級委員の諏佐くんです」
諏佐と呼ばれた少年がぺこり、と頭を下げる。
「オレは相田景虎だ。カッちゃんとは旧友でな、景虎さんと呼べば良い」
「景虎さん」
「おう、そうだ。青春してるか?」
そんな親父臭い言い回しに諏佐は照れたように頬を染めた。それに、あ、と思う。
 タイミング悪く、店員が原澤を呼びに来た。どうやら景虎に会う前に何かを探してもらっていたらしい。
「諏佐くん、ちょっと景虎さんの相手を頼んで良いですか」
「えっ。監督、オレが行きます」
「いえ、君は此処で待っていてください。景虎さん、諏佐くんをいじめないでくださいね?」
「おうおう、お前の目にオレってどう映ってる訳?」
そんな会話をしながら取り残さた少年は。
 同じ穴の狢だからこそ分かってしまう。眼差しの中に隠された、尊敬とは違う熱。頬に浮かんだ笑みの意味。その指先が求める場所。
 同類の匂い、だ。
 原澤からこの生徒、諏佐にも、同じものが向けられていると景虎は感じた。つまり、そういうことだ。へぇ、と怪しまれない程度に目を細める。克徳が見た目から想像されるよりも真面目であることは、共に戦った期間で充分過ぎる程分かっていた。その彼が、例え好きだからと言って生徒に手を出すなど。
 まだ成長しきっていない手足。清算し切れなかった青春の残り香が、脳裏に蘇る。
 唯一異性で愛せたと言っても過言ではない妻は早くに死に、遺された最愛の娘ももう高校生だ。若い頃必死で作り上げたはずの柵(しがらみ)は、一つひとつゆっくり朽ちていっていた。
 薄い身体。短い黒の髪。清潔感があるのが制服の着こなしで分かる。
「景虎さん?」
自分より少し高いところから見つめてくる黒の瞳。それを縁取る睫。健康的ではあるが若干白い肌。店内が暖かい所為か、ほんのり色付いた頬。やわらかそうな唇。
 こくり、と喉が鳴った。無意識の内に監視カメラの場所を確認する。棚の影、店員の目も他の客の目も遮られていた。引き寄せる。驚いたように目が見開かれた。
「アイツの相手が出来るんだったら、オレでも良いよな?」
自分より二回りも下の餓鬼に、娘と同じ年の頃の子供に、なんて手を使ってんだ、そう思わないでもない。
 それでも、欲しい。
「―――景虎、さん」
「なあ、」
頷いてくれよ、と掠れた声で囁いてやれば、誰にも言わないでください、と泣きそうに目が細められた。



えすえふ

***

その手で終わらせて 黄諏佐

*殺人表現あり

 何がいけなかったのか、と考えることはしない。普通≠フ恋人同士と何ら変わりのない生活を送っていたと思うし、少し二人の距離が物理的に離れていて、諏佐の方も勉強や研究で忙しく、黄瀬の方は仕事で忙しくしていて、あまり会えなかった、と言えばそうだけれども、だからと言って二人の間にある愛情に冷めが生じただとかそういうことはない、はずなのだ。
 だから、何がいけなかったのか、と考えることはしない。してはいけない。久しぶりに会いに来た黄瀬が部屋に入るなり泣き出したことも、諏佐をぎゅっと抱き締めて離さなかったことも、その理由を一切言わなかったことも、諏佐はただ受け入れて、その頭を撫でていた。何があったのか。言葉にして聞けばよかったのか。それはたらればでしかなく、言ったところで何が変わる訳でもない。
 黄瀬は涙に濡れた目で諏佐を見上げて来た。ころして、ください、よお。そんな弱々しい声を聞いたからか、気付いたら馬乗りになってその首を絞めていた。息を吸いたいと跳ねる身体、苦しくて溢れる涙、手を退かしたいはずなのに、黄瀬の手はいつまで経っても諏佐の手をひっかくこともそれを退けようとすることもしなかった。美しいかんばせが笑みを湛える。

 これで、すささん、だけのものに、なれま、すね。



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***

 あの日、取引をしたのは間違いじゃないと思っている。

悪い子だれだ 花月

 男子トイレで顔を突き合わせるようになった、ただそれだけのことだ、と伊月は思う。
 あの日、男子トイレで偶然に遭遇した花宮に、伊月は黙っていることが出来なかった。敗因があるとすればそれだったろうが、それでも伊月はあの時黙っていなくてよかった、と思うのだ。
―――もう二度とうちの連中にあんなことをするな。
そう喚く伊月は、花宮の目にどう映ったのだろう。
「なんでお前にそんなこと決められなきゃいけねーんだよ。………ま、お前がオレのものになるって言うんなら、話は別だけどな」
薄ら笑いを浮かべる花宮に、何を言っているのだと瞠目した。
 合わされた唇に何よりも先に湧いてきたのは嫌悪感で、本能のままに歯を立てる。
「…ッて」
離れた花宮をきっと睨みつけると、花宮はそう思っていないだろう表情でおお怖い怖い、と呟いた。
「な、に、を…」
「言わなきゃ分かんねぇか?」
 唇の端に血が滲んでいるのが見える。
「そういう趣味なのか」
やっとのことで吐いた言葉は、侮蔑の色をしていただろうか。別に、伊月にとってはどうでも良いことだった。ただ花宮が周りと違っているのだと指摘出来るなら、伊月にはそれでよかった。
「おや? 優等生みてーな面して差別とはなあ」
「お前がやればなんだって文句言ってやりたくなるだろ」
「オレのこと大嫌いかよ。まー気持ちはわからんでもないけどな」
 心底楽しそうに笑った花宮は、で? と聞いてくる。
「どっち選ぶんだよ、優等生面」

 結局、伊月は出された条件を飲んだ。
「イイ顔」
するり、と指が頬を滑って行く。
「誠凛の奴らにも見せてやりてーわ。あの眼鏡の主将とか、木吉とか」
どうしても花宮は彼らが気に食わないらしい。伊月がその対象になっていないのは花宮が嫌うほどの技術を
持っていないからか、それとも真っ直ぐではないからか。バスケにすべてを捧げているとはとても言えなかったと思う。それが分かったから、花宮だって伊月に条件を提示してきたのだろうが。
「………お前って、本当悪趣味だよな」
「今更」
「ああ、ホント今更だよ」

***

天才的に世界を羽ばたく 花原

 一度だけ、聞いたことがある。
「ねぇ、花宮。それ、疲れない?」
「はぁ?」
花宮のあの頭脳をもってしても、この質問はあまりに前振りなし過ぎたらしい。
「それ」
「どれ」
「そうやって、完璧なふり、するの」
花宮はふは、とあの特徴的な笑い方をしただけだった。
―――完璧なふり。
それに気付いた人間はあまりいなかっただろう。それでも花宮は選ばれた人間であるはずの、ちゃんと花宮の演技に気付けた原を褒めることなく、笑っただけだった。
 狡いな、と思う。
 原は、こんなにも花宮のことしか考えていないのに。
 花宮はいつもの通りの完璧なふりで、原のことなんか一ミリも考えないのだ。

***

良いから一回死んでくれ 今花

*中学

 その日の朝練で花宮はうわ、という顔をしてみせた。してみせたのが失敗だったとすぐに気付いたのは良かったが、運悪くその顔は妖怪に目撃されいたようで、人間とは思えない速度でそれは寄ってきた。本当に妖怪かもしれない。
「はなみやぁ。良い朝やな」
「今時そんなのから始まる会話があるか」
「先輩にはおはようございますやろ」
「………おはようございます」
若干噛み合っていない気もするがいつものことだ。さっさと逃げたい。
「花宮」
「なんでしょう」
「なんかワシ、変わったと思わん」
 女子か。
 花宮の中にこれと言って特別女子を軽蔑する気持ちはないがこれは仕方ない。
「………髪、切ったんですね」
「そうなんよ! かっこ良くて惚れて直してまうやろ」
「…ンな訳ねぇだろ」
「まったまたー。花宮は嘘がヘッタクソやなー」
 へらへらと笑う妖怪はそのやり取りで満足したらしく、そのまま去っていった。



どちらかがおしゃれかなにかで髪型or服装を少し変えました。相手の反応について語りましょう。
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 チャイムの音で玄関へと向かったら、どうやら扉の向こうにいるのは親友の後輩だったらしい。
 以前から謎なのだが何が気に入られたのだろう、と思う。今吉の紹介で一応知り合ったのは憶えているのだが、それから少ししてこうして懐かれるようになったことに諏佐自身覚えはない。ピンポーン、ともう一度チャイムが鳴らされる。
「はいはい、今出るから」

何度生まれ変わっても貴方を愛す 花諏佐

 そうしてガチャリと扉を開けた瞬間、目に入ってくる赤、赤、赤。
 強い芳香に、眩暈さえ感じたような気がする。
「………薔薇の花束って」
やっとのことで出た声は、呆れの色をしていた。
「お嫌いですか?」
「好きも嫌いもないけど…」
入れてくれとも言わずに花束を差し出すだけの彼に半歩引いてやる。これはもう、慣れのようなものだった。そもそもこの寒空の下、直接ではなくてもほっぽり出しておくほど諏佐は人非人ではない。
「お前が、こういうことをすると」
「なんです?」
「…呪うって宣言みたいだ」
 その言葉に、花宮はいつもの特徴的な笑い方で言う。
「なんだ、ちゃんと分かってるじゃないですか」

***

宵の道 黛葉

 暗いね、と呟くとそうだな、と返って来る。一応は会話をしてやろうという気持ちはあるらしい。それが嬉しくなって葉山は続けた。
「怖い?」
「怖くない」
「うたってれば怖くないよ」
「怖くないと言っただろう。………歌?」
「ほら、そういうのあるじゃん」
こーこはどーこほそみちだー、って。そううろ覚えの歌詞を唄えば、その眉間に皺が寄る。
「だ、じゃなくてじゃ、だ」
「じゃ?」
なんだかんだで相手をしてくれている。信号機のない横断歩道に差し掛かる。右、左、右。進んでよし。
「そもそもあれはただの童唄で、歌っていれば安全なんていうのは信号機にこれが採用されていたから出来た都市伝説だ」
「また黛サンそういう夢のないこと言う」
「お前の頭がお花畑なだけだろ」
 笑ったら、目の端で緑色が点滅したように見えた。信号機はないのだから、きっとそれは気の所為だった。



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熱に埋もれる 黛葉

 手招きをする。そうすると躾けられた犬のようにするすると寄ってくるのだから笑えてしまう。まるで、生命でも握っているようではないか、と思い出すのは短い時間だったが同じチームで過ごしたあの天才のことである。
 そう、天才であるのに。
 黛の中でむくむくと優越感が育っていく。なあに、と彼は黛を見つめ、何か用とは聞かないのだ。それが。
―――それが、嬉しい、なんて。
思い切り引き寄せたら汚い悲鳴が聞こえた。潰れたような声がする。それでも嫌だとか離せとか言わない犬のような天才に、黛は笑みを漏らすしかないのだ。



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20170427