白船にのる


 刀剣男士と深い関係になるという例がないわけではない、というのは分かっている。その理由も恋愛から契約の強化までさまざまだ。審神者と刀剣男士の分だけ理由があると言っても過言ではないだろう。
 が、しかし。こんな説明するのも難しい例が他にあってたまるか、とも思うのだ。
 後輩の本丸の廊下で、物陰に引き込まれて。あろうことか後輩の刀剣男士に接吻けをされている。抱き締められているのもあるが、学習をしてしまった身体では真面に抜け出すことすら出来ない。それを分かっているだろうに、後輩の刀剣男士―――鶯丸は行為を止めようとはしなかった。
「、鶯丸、っ」
「白樺殿、此処は廊下だ」
「なら…ッ!」
「あまり声を上げると誰か来てしまうかもしれないなあ」
ゆったりとした口調は、それでも反論をかき消すだけの圧を持っていた。刀剣男士と言えど、他人と主従関係を結んだものだ。普通であれば、退けることなど簡単だろうに。
「ン―――」
これが、彼の主である後輩からの命でも何でもなければ。
 こんな、爛れた関係を築くようなことはなかったはずだ。
「白樺殿」
知ったふうに這う手のひらの熱さに吐息を落としながら、その声を聞く。
「きっと主も、喜ぶだろう」
そんな訳がない、と否定するだけの力は、白樺にはなかった。

 中途半端に緩められた衣服の中で、自分の身体がどれほどに熱くなっているのか分からないではいられない。はあ、となんとか逃がす性感もそのうちに探し当てられるだろう。うまく力の入らない身体は鶯丸に凭れ掛かるようになっていて、触れた場所から熱が移ってくるようで。
「―――ッあ、」
するり、と太腿が割り開かれる。
 感触を味わうように昇ってくる手のひらから逃げようとつま先立ちになっても、たかが知れているというもので。
「白樺殿、」
くつくつと笑い声が耳に流し込まれる。
「これでは下着の意味がないなあ」
「ひ、ぅ…」
「こんな、いつ誰が通るかも分からない場所で…随分たまっていたんだろうか」
そんな訳がない、と反論したくても、此処が何処なのかの説明を繰り返されたら唇を噛むしかない。
「これでは困るだろう」
「っ、う…ァ、」
ぬるり、と下着の上から指を押し込まれた。言葉通り、下着の意味などなく、そのまま指が埋もれていく。
「どれ、少し手助けでもしようか」
手助け? と疑問が頭をめぐるよりも先に、鶯丸の指が離れていく。そうして何やら取り出されたのは細い楕円形をしていた。
「あ、や、ゃだ…っ」
その動作を、白樺は身を持って知っている。
「嫌ではあるまい」
「ひ、ぁっ、ン、ンぅ…」
「ほら、するりと這入ったぞ」
「あ、ア………っ」
見せつけるように、鶯丸が操作用のつまみを押した。
 瞬間、覚えのある振動が這い上がってくる。
「ッ、うン、んんっ」
「まるで魚のようだな」
「ア、あっあ………っ、」
「いつも思っているが、白樺殿の声は甘美なものだ」
「ぅ、んん………ッ、〜〜っ、あ…ぅ………」
「そして、いやらしい」
視界が白く瞬いては何度も放り出されるような感覚。もう、声を抑えられているかも分からない。ぼろぼろと落ちる涙を鶯丸が舐め取っていく。
「は、ぁ…う、んっ」
立っていなくては、と思うのに、もう自分の力で立っているかも怪しかった。掴まれている腰が熱い、鶯丸の胸は唾液で汚れていく。
 湧き上がってくる、飢餓にも似た衝動。
 もうこの身体は、覚えてしまっている。
「う、ぅぐいす、まる、」
「なんだ? 白樺殿。俺に何か頼みでもあるのか?」
「は、ぁ…っ、う…」
「言ってもらえれば俺はそれを叶えよう」
ぐ、と鶯丸の指が更につまみを押し出す。呼応した機械が、更なる振動を与えて。
「―――っあ、はぁ…っん…、」
「しかしこれ以上、白樺殿が望むものがあるだろうか」
「ふ、…く、ぅ、」
なだめるように頭を撫でられる。
「充分気持ちが良いように見えるが」
気持ちは、良い。でも、まだ、足りない。煮立った頭がそんなことを考えている。他の道はすべて閉ざされて、美しい翠以外が目に映らなくなっていく。
「―――ぉね、がい…」
吐いた息は最早、人の前に立つもののそれではなかった。
 合言葉のように腕を伸ばして、その首を引き寄せる。
 快楽に押し出されるような言葉に、鶯丸は微笑みをもって答えとした。



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