風切羽と牙
ちゃんと仕事は出来たのか? というのはその男の、ヤらせろという合図と同義だった。否、それよりひどいかもしれない。そもそもこどもである義唯に選択権も抵抗する力もなくて、だからこんな、仮にも血の繋がった男にパジャマも下着も剥かれ、全裸の状態でせんべい布団に転がされている。
「今日は何をされたのか言ってごらん?」
そういう趣味なのだろうか、男はよくそういうことを言う。義唯に出来るのは、ちゃんと答えることだけ。出来るだけ嘘は吐かず、けれども余計なことを言わないように。そうしなくてはいけない、ということはないが、今の義唯に逃げる術などない。ならば、此処で死なないように生きるしかないのだ。
たどたどしく、と意識していた訳ではない。それでも、小さな唇は何処か言葉を吐き出すことに抵抗がある。途切れ途切れの言葉は男にとっては羞恥に映ったらしく、にやにやと満足そうな笑みが降ってきた。可笑しいのだ、ということは忘れないようにしようと思っていた。明治時代の司法を批判したい訳ではないが、めぐる時代の中でそれらは研磨され、今では自らの子供であろうと所有物のように扱うことはよしとされていないはずだ。未成年に対する法はどんどん厳しくなっているし、こんなものは虐待と呼んで差し支えないことは分かっている。しかし、法というのは何処まで行っても道具なのだ。其処に正しく使える人間がいなければ意味をなさない。その現状に対して義唯はまだ子供であったし、道具を扱うには大人の力があった方が良い。だと言うのに此処には道具を持つ手を踏みにじるような大人しかいないのだから、今の義唯に出来ることは耐え忍ぶことだけだった。生きて、この場から逃げ出すチャンスを伺うことだけだった。
「良かったなあ、義唯」
報告を聞いて頭を撫でる動作は、そこら辺の父親≠ニいう生き物と違わないように思えるのに。
「じゃあ、お父さんがご褒美をやろうな」
未だ幼いこどもの足首を掴んで広げるような男が、その枠組みには入れないということは、よく分かっているのだ。
わざと立てられる下品な水音にも慣れてしまった。未発達なはずの性器に舌を差し入れ、女という性を引きずりだすことの何が楽しいのだろうか。義唯には分からなかったが、身体は適応するばかりで。義唯がびくり、と大仰に揺れる度に男は笑う。
「お父さんとこんなことが出来るのは、本当に限られた特別な子くらいなんだよ」
じゅるじゅるという、唇と体液の立てる音にも今更羞恥心なんて抱けない。それでも反応をしなければ怒られるから、適度に恥ずかしい、やらやめて、やらの喜びそうな言葉を置いていく。本音を言えば今直ぐ死んだら良い、とかそういうものになるだろうな、と考えながら。
気が済んだのか、男はベルトを外して自身を見せつける。義唯の好きなものだよ、と言われて力なく首を振る。恥ずかしがらなくて良いのに、と男は上機嫌だった。この程度を間違えると生意気だ、と頬を張られるので困ってしまう。
「義唯は特別だからお父さんのを挿れてもらえてるんだ」
ほら挿れるよ、と男が腰をすすめる。仰向けの状態で腰を無理に上げられれば、否が応でも接合部が目に入る。
じっくり、じっくりと。
見せつけるように男は腰を動かす。義唯の中は気持ちが良いなあ、なんて言いながら。それが褒め言葉になると疑いもせず。そうしてすべてが収まって、ぱしん、と男の手が軽く尻たぶを叩いた。
「ほら、こういう時なんて言うんだ?」
「―――ありが、とう、ござ、います………」
「そう、そうだ。お父さんに挿れてもらえるのは義唯にとって嬉しいことだからな」
逆だろう、というのは言えなかった。言ったところで男が理解するのか分からなかったし、どちらにせよこの身体が最早性的に目覚めてしまったことは否定出来なかったから。
―――もう、こうして生きていくしかないんだ。
幼いこどもがそう思うのには充分な経験だった。
生憎、絶望で死んでやれるような生半可な人生を歩んできた訳ではなかった。
ほら、と男が促す。まるで許可を貰ったように、口から嬌声を押し出す。これが演技だとはもう、思えなくなってしまった男を、哀れんでやることは、きっと一生出来ないのだろう。
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花は茹だる朝、酒もなし
お父さんに聞いたよ、と義唯に近付いてきたのは知らない男だった。けれども聞いたよ、ということはどうせ、借金のカタだとかに売られたようなものなのだろう。あの男が義唯を手放せる訳がないので、一度だけとか、回数制限があるのだろうが。
そこまで理解出来てしまった自分に嫌気がさす。
男は聞いていた通り可愛いね、と言いながらスカートの中へと手を入れた。流石にぞわり、と嫌悪感が抑えられずにその手から逃れようとすると、違うでしょ、と言われる。
「義唯ちゃんはどうすれば良いって言われてるの?」
どうすれば―――なんて。
抵抗を、しない。
言われたことには従う。
それが男の示した教育方針≠セった。黙った義唯に偉いね、と男は言って、そのまま下着の上から指を遊ばせる。本来未熟である其処で義唯は性感を得られないはずなのに、あの男はそうやって教育した。あの男とは違う指が、形も長さも遣り方も違う指が、丁寧に撫で回していく。こいつもこんな子供に欲情するクソ野郎なのに、というかこれだけ慣れてるということはそういうことだろうに。
「………ふ、ぅ…」
「声、我慢しなくても良いんだよ」
優しい声で、男は言う。
「随分表情がとろけてきたね」
最初の眉を顰めてる顔も可愛かったけどね、と言われてもそれが地顔だ、としか言えない。し、言ったところで何が変わるとも思えない。
どうせこの手の人間は、自分に都合の良いようにしか受け取らないのだ。義唯はもう、それを分かってしまっている。都合良くしか受け取らないから、こんな、未だ月経すら来ていないような未熟なこどもに興奮してみせるのだ。これが愛なのだと、正しいものを教えているのだと、相手も楽しんでいるのだと、そう受け取って。
醜いな、と思う。でも、思ったところで何が変わる訳もない。義唯はこどもで力もなくて、気が付いたら父親の収入源になってしまっている。
服をたくし上げられれば素肌はすぐそこだ。こどもなのだ、大した下着など着付けていない。ゆるゆる、と男の指が刺激を与えていく。相手の望むように、色づいていく身体。もうそれが本当に自分のものなのか、判断することすら出来ない。悔しくて悔しくて唇を噛んだのに、男には違うように伝わったようだった。
「義唯ちゃん、此処、気持ちいいんだ?」
「う、ゃ…ちが、う」
「嘘はいけないってお父さんに教わらなかった?」
「―――」
嘘な、ものか。
心はそう叫ぶのに、頭は冷静な判断を下してしまっていた。どうして―――どうして。こんなの。記憶があるからなのだろうか、そうでなければもっと、泣いて喚いて、諦め悪くもがくことが出来たのだろうか。
「義唯ちゃん?」
「う、ぅ…」
「ほら、どうなのかな」
身体がじくじくと煩い。唇から知らない声ばかりが落ちていく。義唯ちゃん、と重ねられて、唇を解く。
「ぅ、あ…ッ、う、んん…っ」
「言ってご覧」
「き、きもちい、………で、す」
「正直に言えてえらいね」
じゃあ、と男の顔の位置が下がる。
「もっときもちのいいこと、してあげようか」
れ、と見せつけられた舌に、唾液を飲み込む音がやけに響いて聞こえたなんて、気の所為なのだ。
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