この薬指は予約です



 こんなもの、前であったのであれば簡単に制圧されてしまって、それが叶わないということはこの人は本当に女になってしまったのだと、逆を言ってしまえばその人の強さを保証していたのは性別であり、しかしながらその性根がそう簡単に変わる訳でもないと、それは自分が一番よく知っている。記憶なんてものを持っていなかったらこの人は自分のことを尾形、などとは呼ばなかった。この世界で自分のことをそんなふうに呼ぶのはこの人のように前世の亡霊に付きまとわれている可哀想なものだけなのだろう。自分を、含め。
 だって、今この自分は、尾形≠ナはないのだから。
 無理に拓かれた身体は悲鳴を上げている。ぼろぼろと溢れる涙がもったいなくて舐め取ったら抵抗された。まだ何かしようという気力が湧いてくる、というのも何か馬鹿なのだろうか、と思うところはなきにしもあらずなのだが、まあ、無意識の抵抗なのかもしれない。或いは本能。どれだけこの人が自分を尾形として扱おうと、自分がこの人を月島として扱おうと、男と女で初めて出逢った人間で、だからこれはただの犯罪で、でもそれだけで終わらせるはずがなくて。
 快楽を積み重ねてやる。可愛いですね、いい子ですね、素晴らしいですね、肯定の言葉を重ねて、重ねて。積み上げたその塔の上から、この人は自分と一緒に堕ちてくれるだろうか。痛い、という言葉はもう聞こえなくなった。力の入らないらしい脚は自分の勝手に出来て、だからその秘された場所だって好きに見られる。見ないで、と聞こえたような気がしたが、もう真面に言葉にはならないようだった。
 宛がう。
 首が横に振られたようだったが、それを気にしてやる道理はなかった。これは、復讐、のはずだった。多分、そうだったのだ。みち、と音がする。大凡真面な性行為ではしないはずの音である。何か余計な反発があったような気がして、ふ、と接合部を見遣る。
「ハハァ、」
それで、すべてを察した。
「アンタ、処女ですかあ」
 血が、溢れている。どうしようもなく今、自分に食い散らかされた痕。それを見たら何かもっと興奮してきて、ああ、と思った。気付くのが遅すぎるが、まあ、それはきっと尾形≠ェ悪いのだから。
「軍曹殿、」
脚を抱え直してやる。血の気の失せたような顔が気に入らなくてその体勢のままキスをすれば、自然、もっと奥の方まで挿っていく。びく、と震えた身体が可哀想で、可愛らしくて、膣内のすべてを味わうように腰を動かした。徐々に早めていくと、唇が噛まれる。
「どうやら俺はアンタのことが好きだったようです」
 ぱん、と言ったのは肌と肌が触れ合うだけのそれではなかった。自分の手のひらがじんじんとしている。その人の頬は赤く、染まっている。
「ですからどうか、このまま、結婚でもして同じ墓に入りましょう?」
口の中に薬指を突っ込んでやったら嘔吐きながらも口を開けた、開けざるを得なかったようだった。
 そうしてやっと声がちゃんと聞こえたので、自分の方からもその人の薬指を噛んでおいた。



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