八つ当たりにもなれない



 縛らなくても多分抵抗しなかっただろうな、と腹立たしいほどに従順なさまを見せつける少女が、死神という種族で本当は人間なんかよりもずっと強い存在であるのだと、この光景を見た人間が一体幾ら信じてくれるだろうなあ、と背中をなぞる。それだけでもひどい刺激になるのか、なんとか枕に顔を押し付けて、快楽から逃げようとするさまは憐れにも見えるだろう。けれどもそういう成り立ちなもので、結局どうして全力で抵抗しないのか、という話になってしまうのだ。
 その選択肢を奪ったのはこちらなのだけれど。
「ミーナモ」
いつだって耳を塞ぎたい、というのを隠しもしないその顔は、今は枕に埋まっていて分からない。だから代わりに首筋を舐めて、耳を嬲って、それで自分という存在を無視出来ないようにしてやる。
 何も知らない身体を開拓するのは簡単だった。痛みには耐えられても快楽への対処の仕方を知らないこどもは、いとも簡単にこの手の中に落ちてくる。
「今、お前を犯してるのは誰?」
唇を噛んだような音がした。それやるなって言ったよね、と胸を弄っていた指に力を込めると、ややあってはい、と返事が返ってくる。ここで間違ってもごめんなさい、などと言わないのがこのこどもなんだよなあ、と思いながら、力を加減してやると、回答のために開かれた唇から息が落ちた。色の隠せていないそれに、なんだ、結局人間も死神も変わらないじゃないか、と失望が隠せない。
「教えて? ミナモ」
身体を起こさせて枕から離れさせる。これでもう、こどもの口を塞げるものは何もない。抱え込むようにしたから、確かな熱の存在だって意識せざるを得ないはずだった。その証拠に逃げるように腰が揺れる。当人は逃げたいのだろうけれど、それは誘っている行動に分類されてしまうことを、多分このこどもは理解していない。
 まるで抱き締めるみたいに、誰? と重ねる。山本シンジ、とフルネームで返されたそれは距離感の現れか、ロアのことはロア、とだけ呼ぶのに、山本シンジはずっと山本シンジ≠フままだった。別に好かれたい訳じゃあないし、死神になんて懐かれても困るけど。そうだね、といいこいいこ、とでも言うように手を動かせば、唇を噛むのを我慢したような感覚があった。喉が絞まる音。何も知らなかったからか、このこどもは思っていた以上に快楽も従順で、この辺りの教育って本当に大事なんだなあ、と思う。死神だって生殖で増えるんだから、これくらい知ってても良かっただろうに、旧家の生き残りということで知らないといけないことがたくさんあったのか。そういう苦労とかどうでも良いし、最初から強いんだったらその分苦しんでも別に良いだろう、とすら思うけれど。
「お前の大好きなあの相棒でもなければ優しいロアでもないんだよ」
首筋に鬱血を残してやってからひっくり返す。先程まで口を塞ぐ役割をしていた枕を、漸く本来の使い方に戻してやれた。邪魔な下着を剥いで宛がう。
 今日はまだ一度だって触れていないそこは、もう充分に潤っていた。開かせた脚が閉じられることがないのは、以前叱ったからだろう。どうにも、このこどもは痛みや圧力なんてものより、叱咤や言葉の上の優しさのようなものに弱い。よく此処まで手つかずで来れたな、と思うくらいに。先端だけを、浅いところで動かしていると、面白いように反応があった。ぎゅっと目を閉じて、顔を背けて。
 ミナモ、と呼ぶ。
「それもだめって言ったよね?」
魔法なんかよりもずっと魔法みたいだ、と思う。それだけでこどもの目はちゃんと開かれて、こちらを見るのだから。睨め付けるようなものではないけれど、涙も流さない。この行為を喜んでいる訳でもないだろうに。
「そ、ちゃんと見て」
くぽくぽ、と音を立ててやる度にどうして良いのか分からないというように、表情が歪んでいく。
「お前のことが大嫌いなオレが、お前のことを犯してる」
縛り上げた手に縋るようにして顔を隠すから、それもだめ、と行動を制限していく。
「人間って、こういうことが出来ちゃうんだよ」
―――嫌いな奴でも抱けちゃうんだよ。
 そして、もう行動を制限しきったところで、一気に奥まで挿入した。
「はは、これすき?」
焦らされた身体はその緩急についていけず、がくん、と顎が反る。急所を晒すような動きなのにこのこどもがそれをするのは、もう完全に主導権がこちらにあることを示していた。びく、びく、と魚のように跳ねる喉に噛みつきたいのを抑えて、笑う。
「やーらし」
 奥を突く度に小刻みに達しているらしい身体は、未だ理解を伴わない。どうしてこういうふうになっているのか、その仕組みすらこのこどもは理解していない。
「死神ってみんなミナモみたいなの?」
あまり肉付きのよくない腹の中に、自分のものが入っているのが外から見ても分かる。それを上から押してやりながら、奥を突き続ける。ごつごつと、音がしそうなほどに。
「こんなことが大好きで、仕方ない訳?」
普通なら痛みでも感じて良いはずのそれを、痛みに強いという特性が快楽への変換をしやすくしてしまっている。それを思うと、やはり憐れだった。
「やーらし」
耳元で囁いて、そのまま噛みながら中に出す。今のは何だと言いたげな表情に、そういえば中で出したのは初めてだったな、と思い出した。
「これ、元は死体だから気にしなくていーよ」
持ち上げてやる。流石死神と言ったところだ、殆ど重さを感じない。否、本当は重さはあるのだけれど、世界のそういう仕組みによって影響を及ぼすものを少なくするために、重さを感じないようにしてあるのだとか。詳しいことは知らなかったけれど、今、何も分からないのに必死で離すまいと締め付けてくる未熟な中の、その反応だけで充分だった。
「精液じゃなくてそれっぽく出してるだけだから」
今度からゴム要らないよね、と言えば首でも傾げられそうな顔をされる。これはもしかして、と思った。だから、その平たい腹を―――今は自分のものが入っているので平たい、とはあまり言えなかったけれど―――撫でてやりながら教えてやる。
「それとも、精液、中に出されたら妊娠するかもってことも知らないのかな?」
 さっと、青くなる顔に、それが見たかったんだよなあ、と思いながら今度は下から突く。自重というものが概念上存在しないのだけれど、やはり身体の仕組みは殆ど同じなので、この方がより奥に届く。やだ、と言いたいのを必死にこらえているような様子が見ていて楽しいので、腕回して良いよ、なんて言わないのだ。
 キスを、したことはない。
 だって嫌いだから。
「ダイジョーブだって言ってるでしょ、妊娠しないって」
でも他の奴とのはちゃんと気にしないとだめだからね、と言うとこくこく、と首が縦に振られた。死神といえども、こどもといえども、身体は結局女で、だから中はきゅうきゅう、と切なげで。もっと出して、とねだってくる、なんて。言ったら絶望してしまうだろうか。それはまだ勿体ないな、と思う。一度力を失ったはずのものが硬さを取り戻すには充分で、出すよ、と宣言してやれば何かを耐えるように目元に力が入った。
「はー…、魔力で作ってるとは言え、まだまだ膨らまないね」
そういう趣味がある訳ではないが、せっかく中に出しているのだから少しばかり意地の悪いことだってしてみたい。そう思って呟くと、流石に耐えきれなかったのか、ひう、と喉が鳴るのが聞こえた。それから、ぽろぽろ、と涙が静かに落ち始める。
 それを舐め取りながら、ああ、やっと泣いた、なんて思うなんて。
 当然正常な思考なんかじゃあないのだ。



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