次は手加減しない
馬鹿、やめろ、というような言葉はついぞ聞いたことはなかったな、と思う。断られたことがなかった訳ではないが、それにはいつだって理由があったし、だからこそ尾形は納得していたのだし。だから理由もなく罵倒と共に抵抗なんてものをされたのならそれを殴ってでも封じ込めるという手段を取るのは尾形としては当然だった。
前世の記憶。
学校で習ったような歴史とは少し違うそれを尾形は幻想か何かだと思っていたけれど、そういったものがすべて吹き飛んだ瞬間だった。
―――月島軍曹?
―――…尾形か?
その身体は記憶にあるものよりもずっと小さく丸く、その顔面に施された化粧を見てああなるほど、この人は今回女として生まれてきたのだ、と理解出来た。同時にやりやすくなったな、と思った。別段同性同士であることに対して何を思ったこともなかったが、そもそも人間とは男女がまぐわって子を成す生き物である。そうして連綿と連なって歴史を重ねる、繋げる、そういう生き物である。ならばつまり、月島がこうして女としての身体を得たということは尾形と月島はその流れの中に身を投じることが出来るのであって、今まで興味のなかった物事であっても可能性を示唆されてしまえばやってみようと思うもので。
月島も同じだと思ったのだけれど。
腕を掴んで家にまで連れ込んだ月島は尾形に対して拒絶の言葉しか吐かなかった。あれほどに力のあった月島は今回女であるからか、何一つ尾形には敵わず、ただただ震えることしか出来ないらしい。
「きれいですよ」
服を丁寧に脱がしていきながら、接吻けを落とす。先程殴ってしまった分まで、やさしく出来るように。尾形は今回、そういう技術を会得していた。思い切り腹を殴ったので結構痛かっただろう。これで月島の抵抗の意志が折れていてくれれば良いのだが、その辺りの見極めは慎重におこなわなければならない。
下着に手を掛ければ見ないでくれ、と懇願されたが、今更やめるなんて冗談じゃあない。
「軍曹殿は着衣プレイをご所望ですか?」
「ちが…ッ!」
「ならば脱がせますね」
結構胸があるんですね、と言いながら留め具をぱちん、と外した。押しとどめられていたそれが、尾形の目の前にふるり、と現れる。
「きれいです」
「いやだ、おがた、頼むから、」
「色素薄いんですか? それとも使っていないだけですか?」
「おがた、」
「俺が初めてであったら嬉しいのですがね」
下着を押し上げてから、両手で包み込むようにしてみた。それに月島は唇を噛みしめる。本当に大きな胸だった、前世の筋力がすべて胸になったのかと思うくらいに。ゆるゆる、とゆっくり時間をかけて揉んでやる。その動きに次第に身体は順応し、触れてもいない先端がぴん、と張って尾形を待っていた。
ひ、と鳴る喉が泣き声であることは分かっていた。ただ単純に生まれ変わって月島が女になっただけだと言うのに、それでここまで拒絶される意味が分からない。だからきっと、女に生まれたことで混乱してるのだろう、と思うことにした。震えるしか出来ない身体は前≠謔閧烽クっとまるくちいさく、ああ、女とはこういうものだっただろうか、と感動してしまう。別に男を抱いていたことを後悔している訳ではなかったけれど、それでも月島が何一つ尾形に敵わないというこの現状が、あまりにも興奮した。相当に痛かったのか、月島は嫌だとやめてくれと繰り返すが、それ以上はしない。尾形を留めるように伸ばした腕も、指が髪に絡むだけで逆に縋るような形になっている。べ、と出した舌を見せつけるようにして胸に這わせると、月島は悲鳴のような声を上げてからぎゅっと目を瞑った。この反応では慣れていないのだろうな、と思いながらも先程の答えを貰っていないことを思い出す。
「月島軍曹殿」
「、ッ、ゃだ、そこでしゃ、べる、な」
「大事なことなのでこのまま喋りますね」
「…っ、ぅ、や」
「軍曹殿、処女ですか?」
「なん、で、」
「処女でないのなら―――」
するり、と太腿を辿って熱を持ったその近くへと指を置く。
「手加減は不必要と思いますが」
「―――」
月島の表情が、さあ、と青褪めていくのがよく分かった。それを見れば答えを貰ったも同然だったが、まあこういうことは本人の自己申告が大切だ。胸を掬うようにして合わせた先端を、一緒に口に含みながらどうなんですか、と問う。
「そ、れ…っやめ、ろッ」
「軍曹殿が答えてくれないので俺は手持ち無沙汰なんですよ」
「ひ、ぅ」
「それとも気持ちが良すぎて答えるのに支障が出るんですか?」
「ちが…ッそん、な、こと…っう、ァ、いた、ぃたい、から…ッ」
「痛い方が良いのかとも思いましたけど、そうじゃあないみたいですね」
「………ックソ、しね、ばか、死ねっ」
「悪態も良いですが、そろそろ答えを貰えませんか」
もしかしたら知らないのかもしれませんけどね、と尾形は続ける。
「破瓜というのは意外と身体に負担の掛かる行為なので、まあ、そうであるなら配慮はした方が良いと思いますよ」
沈黙が、落ちた。破瓜が本当にそうであるのかはさておき、まあ血が出るものなのだからそこそこの負担は掛かるだろう。こういう反応を示した月島がそこまで調べている訳がないし、適当なことを言ったが嘘でもあるまい。
あとは月島が選ぶだけだった。
やはり手持ち無沙汰なので胸をいじり続けると、一旦やめろ、と額を押される。
「…クソ、」
涙があとからぽろぽろぽろぽろと落ちていくその頬を舐めてやると、再び悪態を吐かれた。そして、まるで敗けを認めるように処女であることを告白された。
*
流石に処女相手に無茶をさせるほど尾形とて人非人ではない―――と言おうとしたが、まあこれは紛れもなく強姦なのであったが―――ので、それに、前≠ナ最初に無理をさせて制裁を受けたことはなかなか記憶に鮮やかであったので、とりあえずは快楽に身体を慣らしてやるところからにしよう、と決めた。今までこういったことになったことがないらしい月島は快楽の受容の制御が出来ておらず、気持ちが良ければ素直に嫌だ、と言い出すのだから面白い。一つの行動ごとに言葉を掛けてやって、何も可笑しくないのだと言い聞かせるように。だってそもそも前≠ナは性行為をしていた仲だったのだ。だから今だってこうしている。月島が妊娠の可能性に怯えているのであったら、と思ってちゃんと避妊具もありますよ、と示してみたものの、なかなか月島は乗り気にならなかった。やはり、性別が違うからだろうか、それとも既に月島は女として次の人生を生きているのだろうか。
それはないだろう、と思った。女として適応しているのだったら恋人の一人や二人くらい作るのに困らない性格であっただろうし、正直なところモテるだろう。それは性別が変わっても同じだ。一定数、こういう人間を好む層がいることを尾形は知っている。所謂人間性というやつだった、性別など些事、とまでは言わないが。
十二分に蕩かしたそこにそうっと、指を挿し入れると、身体は大仰なほどに跳ねる。今まで延々と焦らして来たのだ、新しい刺激についていこうと身体の方は躍起になる。ゆっくり、を意識して動かしていても粘液のあふれる場所を弄っているのだ、どうしたって音はする。
だから、問うた。
「聞こえますか? 軍曹殿」
聞こえない、と小さく頭を振るのが見えた。耳を塞ぐために手は尾形に抵抗するために使ってしまっているため、ちゃんと聞こえているのだろう。
「ちゃんと聞けよ」
「やだ、もう、…ゃ、め…」
「どんな音だよ」
「ぉ、…と、なんて、しない、」
「してるだろ」
月島のすっかり上がってしまった息の中に、くちゅ、という音が混じっていく。
「アンタの音だよ」
「ちがう、」
「違わねえよ」
弱々しい否定の言葉をかき消すように、指を増やした。音が大きくなる。やだ、という拒絶の言葉は尚も重ねられたが、つまりそれは、気持ちが良いという意味でしかなかった。
「アンタが気持ちよくなってる音だよ」
「ちが…ぅ、あ、や、…ッ」
更に制御を失ったように腰がびくり、と浮き上がって。
ひくり、ひくり、とつま先が震えている。あ、あ、と言葉に成りきれなかったものが涙と一緒に溢れ出るのを、上手にイけましたね、と撫でてやる。キスをして、言葉を掛けて、その間にも刺激を与えて。
「………おがた、」
焦点の定まらない目がこちらを見上げてくる。
「はい、尾形ですよ」
「おがた」
「はい」
「ん、」
もう、手は尾形を拒絶しなかった。縋るように首に回されたそれに、かわいいですね、と言ってから身体を抱き起こしてやる。
膝の上に乗せても月島は何も言わなかった。くたり、と尾形に頭を預けるそのさまは、諦めたようにも見えたが別にそういうことではないのだろう。未だ痙攣の残る身体をちゃんと抱き寄せながら、この隙にさっさと前≠フ感覚を取り戻してもらおう、と思った。
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