兎の抵抗
拘束の必要はなかった。この人はどんな思考を辿ったのか尾形のもとへと残ることを選んでしまって、いまや尾形の苗字を冠している。それでも月島軍曹殿と呼び続けるのは過去―――というか前世に囚われているからだろう。
月島基は女であり、尾形百之助の関係を持っていたあの明治時代の軍人ではない。そんなことは分かっていても止められる訳がなかった。まるで形に沿うように生まれてきたその小さく力のない身体を尾形は好きなようにして、処女であった彼女をめちゃくちゃに壊したのだった。月島は尾形にそのようなことを考える情緒がないと思っているらしかったけれど、尾形にだってそれくらいのものはある。壊して、壊して。それで月島が何処にもいかないならそれはそれで納得していた。まあ、尾形の方をこうして憎しみに塗れた視線で見てくることに対してこんなにも嬉しいとは思わなかったので、今後は絶対に壊すつもりなどなかったのだけれども。
ストッキングを破るのも何回目だろう。びりびり、とこの音がよくて使いやすさと破いた時の楽しさを両立出来るものを選ぶようになっていた。なんて馬鹿な話だろう、と思うけれどもこれはちゃんと尾形の金なので許して欲しい。月島だって毎度新しいのを受け容れてくれる訳だし、そこまで衣服にこだわりがないのもあるのだろうが。
そうして尾形の眼の前に晒された素足を、じっと見る。これから起こることを月島は分かっているはずだった。だからじたばたと逃げようとして、でも尾形の力からは逃れられなくて。これが男と女の力の差だった。ああ、本当にかみさまとやらがいるのなら粋な計らいをする。
足の指に舌を這わす。見ていられない、と言ったようにぎゅうと目をつぶるのは愛らしいが、それは同時に自分を追い詰める行為であると月島だって分かっているのだろう。視界が塞がれた分の感覚は他に散逸していく。尾形の舌の感覚を、目の分より拾うようになる。こんなところが月島の性感帯であると知ったのは、それこそ全身くまなくねぶっていない場所がないからなのだろう。月島が泣いて懇願しても尾形はやめなかったし、その分泣くほど気持ちよくしたので良いとする。
ふう、と息を吹きかける。
「んやぁ…♡」
ばっと、口が抑えられるのが見えた。それが無駄な抵抗だと分かっているはずなのに、月島はそれをやめない。やめてしまって諦めてしまえば幸せになれるのに、どうしたってその最後の理性を手放さないでいる。そういう強情なところが好きだった。別に、手放したからと言って嫌いになることはないけれど、争い続ける月島を見ているのは興奮する。
舌で舐った場所に、唾液が溜まっている。それを揺らすかのように息を吹きかけることを続ければ、断続的に声が上がる。さっきまでは起き上がろうと抵抗していたのに、その気配もなくなった。
「はしたない声ですね」
「ッ♡」
声の振動だけでも刺激になるらしい。腰から膝から力を失ったまま、月島はこのまま好きに食い散らかされるのだ。いつものこと。
「軍曹殿に、」
「んっ…♡」
「こんな」
「ぁア…ッ♡」
「ご趣味が」
「んン〜っ♡」
「あったとは」
「ふ…ぁ…♡」
「存じ上げませんでしたなあ」
「やめ…♡んっ♡ぉ、がた、やめ、ろ♡それ♡」
「声に説得力がありませんよ」
「ンンっ♡」
足を持ち上げている状態だから、そのスカートの中までよく見える。ストッキングとその向こうの尾形の趣味の下着が、色付いているのもよく分かる。性的なことなど一切知らなかったとでも言うような身体が、尾形によってつくりかえられていく。
「なあ、軍曹殿」
「ん、やぁ…♡」
「このままイけそうですな」
「やっ、それっ♡それは、ゃ…♡」
「そんな期待した声出さんでください」
「ゃら…♡なめ、なめる♡から♡」
「今は俺がアンタの足の指を舐めたいんですよ」
「ア゛ッ♡」
「舐めて、息を吹きかけて」
「ひぅっ♡」
「アンタが俺に淫乱にされたって、アンタによぅく知ってもらわにゃいけませんからね」
「アアぁあアッ♡」
「ほら腰揺れてますよ」
「ゃめ、やめてっ♡」
「ぐちゃぐちゃなの見えますよ」
「ひ、ちが…っ♡」
「今日もちゃんとカメラ回してますから、あとでアンタが正気のまま息だけでイっちまうの、おさらいしましょうね」
「―――〜〜ッ♡♡♡」
この、屈強な精神だけを残してしまったこの人が。
一体いつ、どうやって壊れながらも尾形を愛してくれるのか、どうしたって楽しみでたまらないのだ。
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