愛の調教



 好きですよ、という言葉は聴き慣れてしまった。なのに耳にたこが出来る、なんてならないのはそれが仮にも愛の言葉だからだろうか。
「アンタ、嫌だ嫌だと言う割りには随分俺に適応してくれましたよね」
意志を持った手が服の上から這い回る。それだけで、この身体はスイッチが入ったように動けなくなる。腰に手を回されて、そうしているとまるで本当に愛されているみたいだった。別に、尾形が嘘を吐いているとは言わないけれど、月島はそれが愛ではないと思っている。
 こんなのは、ただの執着だ。それにそれらしく名前を付けたら愛となってしまったのでそれで勘違いが進行しているだけのこと。
「流石にまだ濡れてはいませんよね」
 そう言いながらも尾形の指は太腿を辿り性器のある場所までたどり着く。そうしてくにくにと弄ばれれば、既に快楽を覚えさせられた身体は簡単に屈服した。せめて声を出さないように、とするのが月島に唯一許された抵抗のようなものだ。
 だって月島、とは言っているものの書類上では既に尾形、だったし、この先月島が尾形から逃げ出す未来というのは思い描けない。
「はしたなくなってきましたなあ」
最初からそうだったのか、それとも俺のためにそうなったのか、後者だと嬉しいのですが、と下着の際から指が挿し入れられる。
「ほら、触っていないのに乳首もぴん、と立って。まるで主張ですよね。此処にいるから触れてくれと。それとも口が良いですか? 衣服の擦れだけでも今のアンタには刺激になるのでしょうか。ああ、いやらしい身体ですね。アンタの素質なのか、それとも俺の所為なのか。どちらですか?」
「…ッ、どちら、でも、」
「ない、というのは狡いですからどっちか選んでくださいね」
じゃないとこのままですよ、と尾形の指は激しさを増す。ぬぷぬぷ、と立っているのに音が聞こえるようだった。
「ほら、軍曹殿」
いつもは耳にかぶりついたりと好き勝手するのに、今日は本当にこれだけで。
 ああ、こんなことをされてしまえば本当に自分が浅ましいいきものに成り下がったように思えて。
「どちらですか?」
 絶頂と共に膝から力が抜けそうになるのを必死でこらえる。強情ですね、と言った尾形の口調には嬉しそうなものが浮かんでおり、既に選択を間違ったことを知った。最初から、さっさと言ってしまえば良かったのだ。どちらでも、どうせ同じ道を辿るのだから。
 でも、もう、遅い。
「―――ッあ、ゃだ、も…ッうァ………ッ」
「ほら軍曹殿、分かりませんよ。どっちですか」
絶頂の中で言葉も上手く紡げずに、膝から力が抜けても尾形が腰を支えている所為で倒れ込むことすら出来ずに。
「ア、ぃ―――っアアアッ」
「喘いでばかりじゃ分かりませんよ」
 ひどく楽しそうな尾形に何度も何度も執拗にイかされて、お前の所為だという選択肢をやっと口に出せたのは、一瞬意識が飛んでベッドに運ばれたあとのことだった。



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