花実に熔けてあいに寄す



 あつい、と思った。それに当てはまる漢字がどれなのか、その時点は尾形にはよく分からなかった。何処か身体を可笑しくしただろうか、と思う。同じ部屋にいる月島の様子をそっと窺ってみても特に変わりはないようだった。では、この部屋が突如として可笑しくなったと言うよりかは尾形が可笑しくなっているのだろう。何か特別変割ったことはなかった、はずだった。月島が珍しく茶を飲んでいたから俺も欲しいです、なんて冗談で言ったらそうか、と言われて淹れられてしまう、なんて、恐らく他でやったら上官に何をさせているんだということを言われてついでに拳骨を落とされるようなことをされたくらいで。いや、実際他人に言えないだけであって月島には毎夜毎夜―――とは言わずとも上官にさせるようなことではないことをしているのだったけれど、それはさておき。
 あつい、と二度目を思う。暑いし熱い。具体的に言うと、腹が熱い。腹が、というか、これは―――と思ったところで月島と目があった。
「どうかしたのか」
「いえ…」
これは謀られたか、と思いながらもすみません、調子が悪いようなので横になっても良いですか、と許可を取る。好きにしろ、と言われて長椅子に横になる。寝づらい。
 一体、と思う。
 尾形は顔に手を乗せて隠しながら考える。下半身はとりあえず膝を立てておくことで誤魔化したことにしたい。どうせ誤魔化せてなどいないのだけれども。だってこれを仕掛けてきたのは月島だ。あんなに今は平然とした顔をしているが、何かしら尾形の茶に混ぜたのだろう。何か、今後こういった任務でも予定しているのだろうか。尾形は月島を抱いている、という形に収まっているのだが、もしやそれが不満であるとか? そんなことを思って、もしも本当にそうだった泣いて土下座しよう…と決めた。男に抱かれるというのが嫌な訳ではなく、単純に尾形が月島を抱きたかった。これだけは譲れない、と思う。
 けれども、意識はどんどん朦朧としたものになっていく。立てていたはずの膝も最早意味をなさず、それを見遣った月島がようやっと動いて、部屋に鍵をかけた。そして、尾形の寝そべっている長椅子の横に立つ。主張激しい尾形のそれに掌を滑らせて、それから月島はニィ、と笑った。
「おがた」
月島の声がどろどろと、ひどく掻き回したもののように聞こえる。ぐんそうどの、とそれが声になったかもよく分からない。分からないけれども、ひく、ひく、と自分の意志を離れていく手足も意識も、もう捕まえられていそうにないから。
「―――す、きに、」
使って良いですから、と言えただろうか。月島の顔を見れば役割が逆になることはない、と分かった。分かったけれども尾形は覚えていられそうにもない。それだけが心残りだ。尾形に心なんてものがあるのかどうか、それは分からなかったけれど。あとで全部詳らかに教えてくださいよ、とも言えただろうか。月島の舌が侵入してくる。
 それだけで最早何も要らないような気がした。
 手を繋がれたのだけが分かって、それで尾形は意識を手放した。



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