触れられることに慣れてしまうなんて、身体が覚えてしまうなんて、ああ、なんてふしだらなんだろう! 私の持っている貞操観念はなかなかに古いと友人に揶揄されたことはあったが、それでもこれが間違っているとは思えなかった。なのに、今、わたしの目の前は鶴丸国永が立っている。
 その美しいかんばせに、獰猛な笑みを乗せて。

貞淑のよすが


 鶴丸国永が主である女にそのように触れるのは、彼女の性質のみではなかった。性格、なのだろうか、あまりにも貞淑にありたいと願うあまり、触れれば触れただけその格差に絶望するのが見られて、残忍な喜びがこの胸を擽るのだ。
 今日の理由は彼女が目の前で転んだことだった。それを理由に鶴丸国永は怪我でもしていたら大変だから、とその点検、という尤もらしい理由で身体に触れていく。情事の際と変わらぬ様子で、しかし真面目な顔を崩さぬように。そうして一番大切なところだから、と指を差し入れた場所はすでに湿り気を帯びていた。
「君、濡れているじゃあないか」
俺はこんなにも真面目に心配していたのに? と思ってもいないことを口にしながら、くにくにとその性器を弄ぶと、今までギリギリのところでこらえられていた嬌声が押し出されるようにして転がり出た。
「君は怪我の有無を調べるだけでも、いやらしい気持ちになるのか」
「ち、ちが…」
「違うものか」
尚も言い募ろうとする彼女のそれを、丁寧に丁寧に撫でていく。
「じゃあ、これはなんだ?」
既に前戯を施されたような身体は、やっと与えられた直接的な快楽にとぷとぷと蜜を溢れさせる。正直な身体だった。貞淑に縋るよりもよっぽど賢い。
「俺の指を濡らしているこれは何なのか、賢い主には分かるよな?」
「―――ッ」
 浅いところだけを掻き回してやれば、もっと、というように腰が揺らぐ。抗うことの出来ない快楽に、堅牢な理性を蕩かされていく気分は一体どういうものなのだろう。ただ、良いものではないことは分かっていた。良いものであれば、彼女が絶望のような表情を呈すはずもない。
「主、」
その絶望を更に加速させるために、鶴丸国永はゆっくり、ゆっくりとそのナカへと指を差し込んでいく。ぬぷ、ぬぷ、と音がするように。それがちゃんと、彼女に聞こえるように。羞恥で真っ赤に染まった頬。それでも尚何かに縋りたいのか耐え忍ぶようにぎゅっと目が瞑られる。そんなことをしても感覚が鋭敏になるだけだろうに。
「主に一つ、瑕があるとすればこのはしたない身体だろうなあ。主は審神者としてとても優秀だ…だが、こうして少し接触をするだけでこんなに濡らして…ああ、いやらしいな。君も分かっているんだろう? 自分がどれほどにはしたなくていやらしいおんななのか」
掻き出されるような形になった蜜が、下着も太腿も汚していく。このまま床まで到達するのも時間の問題だろう。細かな締め付けが、彼女の小刻みな絶頂を教えてくる。
「君の身体は男を求めているんだな。そして、それは誰でも良いんだ」
もう、彼女は違う、とは言わなかった。それは諦めたからではなく、否定することによって更に言われたくないことを言われないようにするための防御だ。彼女は既に方法を知っている。真っ赤に燃え上がらせた頬で、もう、終わりにして、というか細い声を上げた。それはもう挿入してこの行為を終わらせてくれという、実質のおねだりではあったがまだまだそれでは面白くない。
「主、」
鶴丸国永は笑う。その長い指を蜜壺に埋(うず)めたまま。
「あとどれくらい主が立っていられるか、賭けをしようか」
出来るだけ立っていてくれよ? と笑った鶴丸国永に再び絶望の色を見せて、寄る辺のない彼女の手は縋る先を鶴丸国永の肩へと変えた。



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