焦らしプレイの自覚はない


 ギャップという言葉をご存知だろうか、ご存知だろう。だからこそ私はこの部下に追い詰められて追い詰められて捕まえられたという自覚がある。今までチャラチャラした行動も問題行動もオンパレードだった彼が私に向き合うためだけにあれこれの清算を済ませ、そうして向き合って来たら彼のことが可愛くない訳ではない私はころっと行くしかなかったのだ。いや、ころっと言った訳ではないけれど。セックスをするのに理由を必要としてみたり、君、今までそんなこと気にしたことがあるのかい? と問うてみたかったけれどもそれはそれで真顔でない、と答えられそうで、そうなったら私がまた窮地に追い込まれる羽目になりそうなのでやめてしまった。長くなったがつまり今、私と彼―――レディバード、レディは恋人をすっ飛ばして夫婦という形に収まっていて、セックスをしても良いという大義名分をレディは得たことになっている。とは言っても無理強いはないので、本当意外と紳士なんだよな…とちょっとヒいたのは内緒の話だが。
 あまり公言するのは憚られるが私はレディとどうこうなる前にセックスなんてものをしたことはなかったし、つまり、レディに処女を捧げた形になっているのだが、レディはそれが嬉しいのか、あれこれと試してくる。私が一体何をもって気持ちいいと感じるのかを探っているらしい。遊び人の名を欲しいままにしていたレディと、経験値ゼロの私ではどちらに軍配が上がるのかは考えるまでもないことで、私は毎回レディに好きなようにされていると言っても過言ではない。無理強いやら何やら、その辺りはレディの矜持に関わるのかしては来なかったが、そのうち陵辱と大差ないことをされるのではないかと正直怯えている部分もある。勿論、そんな時はレディはなんやかんやで触れるだけにしてくれたりとかするので、本当そういうところは腹が立つ。私はセックスに関しては挿れれば終わりくらいの雑な認識でいたと言うのに、レディの所為で諸々の価値観を崩されつつある気がする。
 当のレディはと言うと私の価値観が少しずつ変わっていくのが楽しいらしく、それこそあの手この手で試してくるのだから本当に溜まったものじゃない。レディは最初に言ったようにそれこそ犬のように待てが出来るが、私が許可を出したら出したで絶対に撤回などさせられぬようにノせるのが上手くなって来ていた。私も私だが、レディもレディだ。ここまでしなくても、と思うけれどもレディにとっては一大事らしいのでもう放っておこうと思う。
 というのが、今、レディの膝の上に乗せられて所謂ところの前戯を施されている私の所見である。最初は服の上から、外に露出している部分から。キスから始まって耳や指、関節の内側、レディが触っていない場所なんてないみたいになっていく。そのことは嫌じゃあないけれども、やっぱりそこまでする必要があるだろうか、なんてことは思ってしまう。
 レディの手は、一応男性体であることを差し引いても大きい。そして私は自分で言うのもなんだが、女性体の中でも小さい。そのまま掴めてしまいそうだな、と思いながら、服の上からその手が胸まで到達するのを好きにさせている。
「あんまり育ってないんだな…」
あんまりに失礼な言葉が聞こえてきたので何か言い返そうとしたのだが、それよりレディが口を塞いでくる方が早かった。
 まさぐる、というにはあまりに焦れったい速度で、決定的なものは何もない。それでもレディが触れているのがよく分かる。これでレディの目が見えていたりなんかしたら私は多分羞恥で死んでいるんじゃないか、なんて思うけれど。
「…っ、ふ、ん…ッ」
「時間を掛けた方が好きなのか」
好きとか嫌いとか、どうでも良いはずなのに、レディはずっと其処に拘る。でも確かにじくじくと熱が身体の中心に集まって、レディの膝の上から逃げたくなる。逃げられなんでしないのだけれど。
「乙女、」
耳元で囁くのをやめてほしい。
「…ッ、ン、ぅ…」
「オレがもっとお前を気持ちよくしてやる」
だから覚悟しろ、なんて楽しそうに言うレディの考えなんて全く分からなくて、もうさっさと挿れたら良いと思うのに、力では敵わないので口を塞がれたまま、それを言うことすらままならないのだ。



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