やさしくするからキスをして
その日マスターである少女の様子が可笑しいところに出くわしたのはただの偶然だった。ヘクトールはその日はオフでカルデア内をぶらぶらしており、宛てがわれていた一人部屋に戻ろうと思っていたところだった。
ふらふらと熱に浮かされたように歩いていたマスターの後ろ姿を見かけ、流石に放っておくのはまずいと思ったから。
「マスター。調子悪いの?」
まずい、と思ったのは回り込んで少女の顔を見てからだった。調子が悪そうだとは思ったが、まさかこういう方向に調子が悪いとは思っていなかった。というより先程まで少女はレイシフトしていたはずだが、他のサーヴァントは気付かなかったのだろうか。
ヘクトール、と舌足らずに自分の名を呼んだ少女の手の甲には、いつもある赤い印がなかった。カルデアの魔力バックアップを受けるための印である令呪は、通常の聖杯戦争のようにサーヴァントの行動をきつく縛り上げる効果はないと聞く。だからと言って、少女に害をなすような輩がいる訳でも…ない訳でもなかったが、それはさておき。
「マスター、令呪は」
聞けば今日のレイシフト先で使い切ったと返って来る。なるほど、ならばいつもは令呪に溜め込むなりなんなりしていた分の魔力が行き場を失ってでもいるのか、詳しいことは分からないが、此処から医務室に連れていくにはあまりに遠い。
「仕方ねえな。マスター、ほら、行くぞ」
そう言って腕を取れば、ん、と上擦った返事と共に少女は素直についてきた。普段であれば大丈夫だよ、とやんわり止めるだろうに、それすら頭が回らないらしい。
自分の部屋の近くで良かった、と思う。あんな少女を他人の目に晒す訳にもいかない。
「どうしたら良いのかホントは分かってるだろ?」
ベッドに座らせて耳をなぞってやると、ぴくん、と肩が震える。魔力が行き場を失っているのであれば、誰かが外から調整してやれば良い。普通こんなことにはならないが、少女は魔術師というよりは一般人であるので何処かのボタンを掛け違えたのだろう。自分で対処も出来ないに違いない。苦しそうな少女の耳殻の形を確かめるように何度も何度も指を行き来させると、逃げるように首を振ってから、なに、と見上げてきた。
今自分がどんな顔をしているのか分かっていないのだろう。分かっていたら見上げるなんて真似はしないはずだ。何処か抜けている少女ではあるが、そういった自己防衛を知らない訳でもない。
「他誰か良い奴がいるってならオジサンそいつのとこ連れてくけど、マスターそういうのいないだろ?」
もしも少女が想いを寄せている者が人間でもサーヴァントでもいるのなら、まあそちらに預けるくらいの常識はある。が。
「オジサンだって理由があれば他の奴に渡すのも考えるけどさ。違うだろ?」
マスターの唯一になりたいという願望がある訳ではないが、目の前に転がってきたものを手放すほど欲と遠い存在でもない。
「じゃあ大人しく食われとけよ」
*
着付けていた服を一つひとつ取り払われた少女の肌に触れながら、こまめにキスを落としていく。
「ダイジョーブ、やさしくするから」
見立て通り少女の身体の中では魔力が暴走しているようで、こうして触れ合っているだけでもヘクトールに魔力が流れ込んでくる始末だ。別段魔力量が多い訳でもなかろうに、このままでは受け皿を失くして枯れてしまうのではないかとさえ思う。そうなったら少女は死んでしまうに違いない。とは言え、これは一過性だと言う自信もあった。一度溢れ出る魔力を何処かへ渡して、それを戻してやれば良い。
性行為は、それにちょうど良かった。
とは言え、だからすぐに挿れよう、というふうにもならない訳で。
「かわいいねえ、マスターはこういうの初めて?」
声を掛けて反応を見ながらキスを落とし、胸へと指を進める。下着越しにやわやわと触れると、恥ずかしいのか顔を逸らされた。少女もこれが一番良い方法だと分かっているのだ、だから強く拒絶することもしない。医務室に連れてってくれと懇願しても良いところなのに、少女は残酷なほどに自分の状態を客観視出来る。そこが心配だと言えば、そうだけれども。
発育が良いのか、聞いていた年の割りには胸が大きいように感じた。少女の時代ではこれが普通サイズなのかもしれないが。欲望のままに揉みしだきたいのをぐっと堪えて、掌で包むようにしてゆっくりと捏ねてみる。怖がらせたらいけない、と思っていた。安心させるのがヘクトールの仕事だ、とも。レースのあしらわれた下着の上から指の腹で抑えるようにすると、ゆるゆると指の下で硬くなるものがある。声を抑えるように口元に添えられた手をどかそうとは思わない。あんまり唇を噛み締めたり自分の指を噛んだりするようであれば止めようとは思うが、声を抑えるくらいは本人の自由だ。ヘクトールとしては声を出してもらった方がやる気は出るが、これはあくまで応急処置であるし、そこまで強制するつもりはなかった。少なくとも今は。
布越しでもその存在がよく分かるようになったところで、寝かせていたのを少し浮かせて背中の留め具を外すと、抑えられていた双丘がふるり、と解放される。
「マスター、男の俺が言うのもなんだけど、胸って押さえすぎるのも良くないんじゃない?」
別に押さえてる訳じゃないよ、という言葉はひゃ、という悲鳴のような声に消えていった。浮いた下着の下に指を滑り込ませて、直接触れたかららしかった。泣きそうで真っ赤な顔で見上げてくるものだから、大丈夫だよ、と言う。
「かわいいよ、マスター」
可愛いとか、と文句を言おうとする口にキスをまた落としながら、優しくつまんだり離したりを繰り返して刺激を与えていく。鼻に抜けるような、何処か泣き声のような嬌声が少しずつ甘くなってくるのを確認しながら、キスを少しずつ下へと移動させる。唇から首筋、首筋から鎖骨、鎖骨から舌をぐるりと胸に添わせれば、期待したような、不安そうな視線が寄越される。
「噛んだりしないよ」
痛みが快楽に変換される人間は珍しくはないが、この少女は違うことをヘクトールは知っていた。この少女は痛みを耐えるキャパティは多いが、それが気持ちいい訳ではないのだ。
唇と舌で肌を堪能したあとに、目を合わせながらゆっくりと乳首へと舌を伸ばす。目を逸らせば良いものの、それがヘクトールを悦ばせると分かっているのかいないのか、こわごわとこちらを見てくる少女に愛おしさを感じてしまう。舌先で突き、唇でやわらかく挟み込み刺激を与えると、見ていられないと言ったように少女は目を閉じた。視覚情報が切れた代わりに刺激をよく拾うようになったのか、先程より身体が反応を始める。
まるで羽化を目にしているようだった。魔力は相変わらずに流れ込んで来る。一人の少女が、この手で女になっていくような。ぞくり、と湧き上がってきた感情を押しとどめて身を起こす。するり、とまだ着付けたままのスカートの中に手を忍ばせれば、また怯えたような視線が投げられる。
「怖いなら手でも繋いでるかい?」
左手を伸ばせば恐る恐ると言ったように握られた。
「オジサンそんなことしないって約束するけど、痛かったりしたらすぐ手握ってくれればちゃんと止めるから。怖い時も握ってくれたらちゃんと応えるよ」
少女が頷いたのを確認してから、右手を内腿に滑らせた。ギリギリのところを往復させて反応を見ていたら、じとりとした目で見られる。
「悪かったって、マスター。でもマスターの肌ってさわり心地が良いからさ、つい」
それに、期待と不安で浮つきそうになる内腿を、すり合わせるのを我慢している様もなかなかだ。流石にそれは口にしないけれど。口にするにしても今じゃない。まだ早い。
期待された通りにスパッツの上からゆっくりとなぞれば、微かに熱を持っているのが分かった。
「マスター、脱がせるぜ?」
自分で脱ぐ、と言いかけたのをまたキスで遮って手をかける。協力的なのもあってすぐにスパッツは脱がせられた。上下下着はお揃いらしい。それをまたかわいいと褒めると、恥ずかしいのか繋いだままの手をぎゅっと握られた。悪い悪い、といつものように謝る。
下着をこのまま着付けさせているのは汚れるだろうが、すぐに脱がせば恐らく少女は怯える。様子を見つつ最初は触れるだけ、少女がびくつけば手近な膝頭にキスを落として、と繰り返す。濡れてはいるがこんなものは刺激があればどうとでもなるものだ。怖がらせたい訳ではない、何と言ってもこの少女は大切なマスターであるのだし、一サーヴァントとして今後があれば∞今後とも¢且閧ニして選ばれておきたいと思うのは別に可笑しいことではない。
「マスター、直接触っていーい?」
いつもの顔を意識して聞けば、聞かないで、と弱々しい声。
「分かった。でもね、オジサンも意地悪で言ってる訳じゃないからね」
そう言いながら下着の中に指を滑り込ませれば、息を飲んだような音がする。
「マスター、息止めないで」
ぬめりを掬い取って神経の集中するところを徐々に強く撫でていけば、断続的に押さえきれない声が上がり始めた。やだ、やだ、と言いながら繋いだ手を握られるから、手を休めずに痛い? と問う。痛くないけど、と合わせた目には涙が浮かんでいるが、苦痛からには見えなかった。おかしくなりそう、と泣き言を言う少女にまたキスを落とす。
「ダイジョーブ、ダイジョーブ。マスター、それはきもちいいってことだ。きもちがいいから、大丈夫かなって身体がちょっと緊張してるだけだ」
おかしくならないよ、と子供をあやすように言うのも苦にはならない。本当? と舌足らずに返してくるのに本当だよ、と返しながら指の動きを早める。悲鳴のような声とびくんっとした腰の動きで、彼女が達したのが分かった。とろり、とまた指が更に濡れる。
「マスター、」
大丈夫? と聞くと、整わない息の中で必死にこくこく、と頷かれた。それが何も知らない幼子のようで、たった今女にしている最中だと言うのにアンバランスさに嗜虐心が湧く。
「ちゃんときもちよくなれたな、えらいぞ」
またキスを落としながら少しずつ指を埋めていく。誰にも触れられたことのない場所にまさかヘクトールが触れることになるなんて、思ってもいなかったけれども。狭いけれどもしっかり濡れているし、指を異物と認識して苦しがる様子もない。
「ん、変な感じするか?」
指をゆっくり抜き挿しし続けると、不安そうな目がまたヘクトールを見上げる。
「そうだなあ、こればっかりは好みの問題でもあるし、慣れでもあるし…まあ、マスターが痛かったり苦しかったりしないんなら、オジサンはそれで良いよ」
ナカを解しながらまた外も触って、キスを降らせて胸にも触れて。非常に時間を掛けたと思う。もっと、と言うように揺れ始めた腰に、もう一度丁寧なキスを落とす。
「よしよし、身体の方は順応してきたな。ほら、マスター? 自分で腰が動いてるの分かるだろ? オジサンのに擦り付けてる。マスターもこれからどうするのか分かってんだろ?」
繋いだままだった手をヘクトールのものへと導く。
「そうそう、オジサンのをマスターのナカに挿れんの。指だけじゃ物足りないだろ?」
今更考えていなかった訳ではないだろう、それでも直接的に言われたことによって、怯えが生じたようだった。
「逃げるフリしてもだーめ。挿れるって言った瞬間、マスターのナカきゅうきゅう言ったぜ? はやく欲しいってさ」
それでも指を抜いて、ヘクトールは自分のズボンに手を掛ける。一度触らせておくべきだったか、とも思うけれども恐らくこれ以上は時間を伸ばせない。
「マスター、ほら、冗談抜きであんま逃げないで。オジサン、マスターにはやさしくしたいんだって。でも逃げられたら、そうはいかなくなる。マスターに貰った魔力を返さないと、マスター干からびちまうから。でもそのために無理矢理…とか嫌だろ? オジサンもしたくねーって」
な? 良い子だから、と頭を撫でると、誰にでも優しいの、という呟きがあった。なんだそれ、と思う。
ぐい、と腰を掴んで引き寄せる。
「オジサン、多分マスターじゃなかったらこんなにやさしくしてねーよ?」
先端を宛てがうと、その熱さにかまた身体は震えたが、もう逃げるような真似はしなかった。
「挿れるぜ? ほら、深呼吸しな。怖くないって。…はは、こっちはひくひくしてる。マスターの口は嘘吐きの口だなあ」
言わないで、と泣きそうな声がして、悪い悪い、といつもの調子で返す。
そう、これはいつもの延長線。なんでもないこと。
「マスターが可愛いモンだから、ついつい言いたくなっちまうのさ」
特別なことではないのだと、教え込むように。
「ほら、マスター。挿るぜ。そうそう、力抜いてな…息も吐く」
素直にこくこくと頷く少女はまるで無垢で、今まさにこの時、欲望の象徴を飲み込もうとしているようには見えなかった。
丁寧に解したナカは狭いものの、その締め付けは甘く、きゅうきゅうとまるで恋しい恋しいと啼いているようにも感じる。圧迫感に息を止めそうになる少女の手を握りキスを振らせ、また時間を掛けて少しずつ埋めていく。時間を掛けたからか、初めてだと言うのに、そうすべきなのを知っているかのように内壁がヘクトールを呼ぶ。ゆっくりと押し進めてそうしてぴたり、と肌と肌が触れ合うところまで。
「ほら、マスター」
生理的な涙を舐め取る。
「全部挿った」
とは言えすぐに動くのも恐らく少女の身体がもたない。こうして繋がっていれば少しずつでも魔力を戻すことは出来るから、ここまでくればそう急ぐこともしなくて良いのだけれど。よかった、とでも言うように少女が微笑むのでまた撫でてやる。それを繰り返しているうちに、少しずつ、少女の腰がゆらめき始めた。
まるで早く、とでも言うように。
「こらマスター、馴染むまでオジサン動かないどこうって思ってんだから、マスターの方が動いちゃダメでしょ」
指摘してやると少女は一瞬何を言われたのか分からないような顔をして、それからかあっと首まで赤くした。まだ赤くなれるとは驚きだ。
「マスター?」
呼べばそんなつもりじゃなかったの、と言い訳めいた声。
「別に悪いことじゃないよ。ごめんな、ちょっとからかっただけだ。マスターの身体がそれだけ準備出来てるってだけの話だし、オジサンがちゃーんと出来たってことでもあるんだぜ? ごめんな、配慮足りなかったな。怖いよな」
怖くないよ、と少女は否定するけれどもそんなのは嘘だ。今のヘクトールに出来るのはうん、うん、と肯定することだけ。マスターは強いからな、大丈夫だよな、でもオジサンがそうしたいの。繰り返し、繰り返し。嘘を織り込んで罪悪感を削っていく。こんなのは日常の延長線、なんでもないこと。
明日になったら、忘れる、こと。
「ちゃんと返すから、これが終わったらいつものマスターに戻れるよ。オジサンも、何事もなかったみたいな顔してやるから」
だから大丈夫、と続けようとしたところで、何もなかったことにするの? と問われた。
「それは…」
言葉を必死に探す。何を言っても墓穴になる気がした。今の少女にその判断をする力があるか分からないけれど。
「…何もなかったことにしたくないって取るぜ?」
そんなの、と動いた唇が、その先に何の言葉を紡ぐのかは手に取るように分かる。
言わせまいとキスをして、その口腔内を荒らしていく。繋がった場所が擦れて、腰がびくりと跳ね上がる。
「あーもー…」
今、ヘクトールはどんな顔をしているのだろう。分かるような、分からないような。
「流石のオジサンでもこれ言って良いでしょ」
少女の腰を抱え直して、ごめんな、でも出来るだけ優しくするから、と心の中でだけ謝罪する。元より次を提示されてしまったら、もう、行きつく先はどろどろに甘く蕩ける依存だ。もっとと言わせて、ヘクトールでないと嫌だと言わせて、少女から求めるように身体に教え込む。少女は未だ理解が追い付かないのか小刻みに嬌声を震わせている。
「マスターが悪いんだからな=v
肌と肌のぶつかる音を引き金に、さらなる享楽へと堕ちていく。