君のいろんな顔が見てみたい
好きな人のいろんな顔が見てみたいと思うのは普通のことじゃあないだろうか。燭台切光忠は人間ではないものの、まるで人間のようにそんなことを思う。燭台切光忠の下ではただの人間である主が、燭台切光忠を顕現させた審神者が、一糸まとわぬ姿で燭台切光忠を見上げている。その姿は何処か無垢で、多くの刀剣男士を従え審神者として戦っているなんて信じられないほどだ。
「…主、」
涙の膜の張った彼女の目元に優しく触れる。
「ごめん、怖かった?」
緩慢に彼女は頷いて、ああ、と思う。またやってしまった。こんなことばかりだ。彼女を怖がらせたい訳ではないのに。彼女が涙をこぼして初めて、燭台切光忠は自分のやりすぎたことを知る。いつも、いつもだ。そろそろ愛想をつかされてもおかしくない。
燭台切光忠と主である彼女は付き合っている。所謂恋人というやつである。だから勿論これは合意の上の行為なのだが、それにしたって燭台切光忠のプライドとか、少しばかり歪んだ性癖というか自己自認というか、つまり燭台切光忠の我が侭で時折やりすぎることがある。いや素直に認めよう。今のところ殆どやりすぎている。
一応言い訳をすると、彼女の性格も性格なのだ。燭台切光忠は彼女を自分の手でぐずぐずにとろかせたくて仕方ないのに対し、彼女の懐というか許容度というか余裕と言うか、そう、彼女はいつだって余裕なのだ。燭台切光忠としては勿論そんなところも愛おしいのだけれども、ベッドでくらい主導権が欲しいと思うというか、つまりこれは征服欲じみたものであるので本当にどうしようもない理由なのだけれど。いつもそれだけ余裕な彼女の切羽詰まった一面だとか、そういうものを見たいと思っても仕方ないような気がする。何と言っても燭台切光忠は彼女のことがとてもとても好きなのだし。
けれども燭台切光忠の思っているよりずっと彼女の余裕は強大なもので、彼女もまた燭台切光忠の願いを理解した上で、演技をするのは失礼だと分かっているので、結局違う方向にやりすぎて彼女を泣かせてしまうことが多いのだった。改めて言葉にすると最低だと思う。
息を整えた主は、
「燭台切光忠」
手を伸ばす。
「おいで」
だいすきだよ、あいしているよ、彼女は掠れた声で言う。怒っていない、と言うような声で。怒っていいのに。
「ああー…ッ、もう、君には敵わないなあ!!」
たまらず抱き締めるとどうしようもないな、という様子で彼女が笑った。
どうしようもないので強く接吻けをして、そのままもう一度繋がった。