ゆめゆめ太陽の方向を忘れぬように
高い声が上がるのをただ只管耐えているとぬるぬると下半身にまとわりついていたそれらは上の方にも上がってきて、そうして鈴珠の小さな口をこじ開けて声が通るようにした。頭が何処にあるのかは知れない。もしかしたらこの男の思考に基いて動いているのかもしれない―――ひたすらに稼働させているはずの思考は手のひらからぽろぽろと溢れるように、鈴珠を現実から切り離していく。
「あ、ああッ」
「声、抑えない方が良いよ」
声からもそいつらは栄養を得るみたいだから、と静かに言う男の顔は見えない。眼鏡は外されていないし、そもそも鈴珠の眼鏡は視力矯正のためのものではないはずなのに、霞んで、霞んで。
「ねえ、鈴珠くん」
男は笑う。
「精通前にきもちの良いこと覚えちゃうと、精通してから一人でイけなくなるんだって」
「い…? な、に…?」
「ああ、そういう単語はまだ知らないんだ。んーと、男の子はきもち良くなると精子が出るっていうのは知っているだろう? それには刺激が必要なんだけれども、こうしてね、精子が出るようになる前に身体がきもち良いこと覚えちゃうと、自分で刺激しても物足りなくなって、射精っていうんだけどね、出来なくなるんだって」
「そ、んなの…」
「嘘じゃないよ」
ほんとだよ、と男は続ける。
「でも良いじゃない」
「なに、が…」
「鈴珠くんにはちゃんと許嫁がいるんだから」
その言葉で思い出す。
目の前に、鈴珠の目の前にいる男は。
「や、あ…ッ」
「素直にきもち良いって言いなよ」
「やだ、やだ…!!」
「鈴珠くんは聞き分けの良い子だって思っていたんだけどなあ」
許嫁が得られず、先日失踪したと言われていたのだった。
「良いじゃない、鈴珠くんには許嫁がいるんだから」
機会のように男は繰り返す。ぬるぬるとミミズのような形をしたそれらは鈴珠の身体にまとわりついたままで、放すつもりはないらしい。
「その人に、きもち良くしてもらえば」