どうかどうか妬心でありますように



 ばたん、と扉の閉まる音がした。この部屋から出ないように、と言われて出来るだけそれを守っているはずななのに、山本シンジの態度がやわらぐことはない。きっと、これからもないのだろう、それくらいは分かっている。
 山本シンジは白日ミナモが嫌い。
 理由は分からずとも、その事実だけが分かっていれば良い。だから―――というわけではないけれど、何をされても受け入れるつもりではいた。記憶にないだけで、山本にひどいことをしたのかもしれない。そうやって思うと、抵抗する気力も失せてしまった。痛いのは、そこまでつらくなかった。記憶を失う前は随分な暮らしをしていたのかもしれない。戦闘狂、だったのかも。もしそうなら山本と一戦交えるくらいはしていそうだったし、そのときの逆恨み、と言われたら何も言えなくなってしまう。
「………え?」
でも、これは想定外だ。
 背中に感じるのはベッドのやわらかさ。手首は山本が押さえつけている。押さえつけて、いる? 何故?
「何するか、分からないわけ、ないよね?」
山本の声が耳元でしたと思ったら、そのままかぷり、と歯を立てられた。
「ゃ…っ!?」
驚いて上がった声に気を良くしたのか、ぬろ、と何かが入ってくる。
「ゃっ、や、なに!? やま、山本シンジ…っ」
「はは、結構ソソるわ、それ」
知らない感覚に身体が勝手に捩れた。逃げようとしないでよ、という言葉に、それが逃げの行動であると知る。
「…っ、ぁ、や、…ッなん、で…?」
「ん? それってどういう質問?」
ぐちゅぐちゅ、と耳の中を掻き回されるような音に、脳が沸騰するような心地に陥った。
「なんっ、ひ、ぁ…っ………み、耳、なん、れ…っ」
「うわ、もう口回ってないじゃん。淫乱」
―――どうして、
思考が止まる。
 言葉の意味は知っている、でも、どうして今、そんな言葉をかけられないといけないのだろう。
「…ああ、そういうこと」
一人で納得したらしい山本が、じゅる、と耳を吸う。
「セックスくらいは知ってるよね?」
「………繁殖、行為…」
「はは、色気ねえ言い方」
他に何があると言うのだろう。次世代を作るための行為、死神という種族からしたらその程度のもののはずだ。双子の兄はいろんなことを秘密にするけれど、これだけは白日家復興のために必要だったのだろう、ちゃんと教えてくれた。
「こども作る以外にも、いろいろすることがあるってこと」
 そう、教えてもらったはずだった。
「大丈夫だよ」
山本が笑う。嘲笑以外のそれを見るのは久しぶりのように感じた。
「全部俺が教えてあげるから、お前はただ素直に啼いてろよ」

 耳を弄られながら服をゆっくりと脱がされ、四つん這いに近い姿勢にさせられて。屈辱的、と思うべきだった。
「ひぁっ、」
でも、思考がまとまらない。
「ゃ、やぁ…っ!」
「嫌じゃないくせに」
「ゃめ…ッ!!」
拒絶の言葉を吐く度に、身体の内側がこすられる。掻き回すようなその動きに、ぐちゃり、と水音が鳴る。知らない、こんなのは知らない。教わっていない。
「身体びくびくさせてるくせによく言うよ」
「ぁ、…ああ、ッ」
「おまえの惨めな姿見れて、そこそこ気分良いわ」
「ん、んぅ…っ」
猫みたいな声が嫌で、唇を噛み締める。山本がどんなつもりかは分からないけれど、このままではいけない気がする。
 気が、するのに。
 どうしようも出来ない。
「声、」
「ゃ、ああっ!?」
「我慢すんなよ」
「ゃッ、ゃああっ! あっ! ンンッ」
「そうそう、そうやって惨めに啼いてて」
「ぁ、や、ゃら、らめ、っ」
どんどん熱が集まってくるようで、頭がぼうっとする。山本の指が内側を撫でていくのが、当然のことのように感じられて仕方ない。
「ぁ、あ―――」
思考が白く、閃く。
 それでもどうしてか、山本の名前を呼んではいけないような気がして、もう一度唇を噛み締めた。