明後日への切符を破り捨てた


 友人なのだろうなあ、と思う。本当に力も何もない女を拘束するのは簡単で、ああこんなだから世界からは犯罪というものが失くならないのだ、とも。今それに加担しているのは尾形自身であるが。
 月島の記憶が尾形と同じように残っていて、けれども何の因果か月島は女性になっていて、でも気にしたふうもなくあの後生大事にしていた女と友人という関係に収まっているのを見たらどうにもむらむらとしたものが湧いてきて、一度は打診したものの妙に旗色悪く、ああ、これは友人という言葉でだまくらかして一生ついていくつもりなのだろうなあ、と思ったら妙に腹が立ってきたので、その両方を解消出来る方法を取った。というのが、まあ、正しいのだろう。世間的に正しいかはさておき。
 まず初めに友人とやらを捕まえた。有り体に言えば人質にとった。簡単に抜け出せないように拘束して、それから月島を呼び出した。
「軍曹殿、」
「だから、もう、お前の軍曹じゃあない」
「そう言って俺のお誘いも断りましたよね。そんなに俺のことが嫌いですか?」
「………そういう訳じゃあないが」
「アンタのそういう訳じゃない、っていう言葉はとてつもなく面倒なので、いっそのこと嫌って欲しいのですけどね」
ですから、と尾形は扉を開ける。その先には拘束された女がいる。
 女になった月島の友人、前≠ナも後生大事にしていた女。
「―――ッ、」
言葉を失う月島よりも先に扉を閉める。玄関の鍵ならもう閉めた。
「月島軍曹」
するり、と頬を撫でてやるとすぐに跳ね除けられる。急いでそちらへ行こうとした月島の足を引っ掛けて、上手く転ばせるのは容易かった。こんなに上手くいくなんて、と思うほどに。
 バランスを失った身体が尾形の手の中に落ちてくる。支えた腹が前よりも丸みを帯びていて、ああ、本当に女なのだな、と思った。
「尾形…ッ!!」
「月島軍曹、俺が何を言いたいのか察してくださいますか?」
「………嫌だ、」
「じゃあ俺はアンタが見ている前で好きでもないあの女を犯しますが、それで良いですか?」
「良い訳がないだろ…!!」
掴んでしまえばその手首はもう遠くへは行かない。
「俺もそうですね、好きでもない女に対して犯罪者になるのは少々心が痛むもので。そりゃあ勃つでしょうけど、男なんて穴があれば良いというようなそういう生き物です。アンタであれば分かっていると思いますが」
「お前、」
「簡単な話ですよ、俺はアンタとセックスがしたい、ただそれだけです」
「それだけのためにあの子を巻き込むな…っ!!」
声が震えているのが分かる。人間、大切なものが出来ると此処まで弱くなるのか、それとも月島の割り切り方が可笑しいだけなのか。尾形の人間ストックというものがあまりないので、その辺りは分からないが。
 まあ、何でも良かった。
 一度抱いてさえしまえば月島はもう尾形の手中にあるものとなるのだと、もう分かっていた。流石にこれは計算に計算を重ねた犯行なのだ。そう簡単にミスをする訳にはいかない。月島を単純に犯した場合、ただそれは犬に噛まれたようなものにしかならないだろう。月島基とは前でも今でもそういう人間である。別に尾形のことをそこまで嫌っている訳でもないが、その辺の犬畜生か何かだと思っているようなので、つまり、物事をそう単純に運ばせる訳にはいかなかった。だから興味のない女を攫って拘束して監禁する、なんてワンクッションを挟んだのだ。
 月島の、一番大切な女。
 今世でのその意味は、友情の域に収まっているようだったけれど。それでも月島にとっての一番はあの女だった。逆に言えば、あの女の一番も月島だった。だから、それも一緒に壊してやらなくてはならない。
「―――ッ、」
「軍曹殿」
掴んでいた手首をするり、と撫でる。
「お返事が欲しいのですが?」
 暫くして返ってきたものは、勝手にしろ、と言うものだった。

 嬉しくて嬉しくて、そのまま抱き締める。流石に震えてはいなかったが、やはり中身が月島だからだろうか。捕まえた時からずっとあの女は震えていると言うのに。
「かわいいですね、月島軍曹殿」
おそろいにしているのだろう、その髪に接吻けてやると嫌がるように首が振られた。
「せめて、違う部屋で」
「嫌です」
「おがた、」
「あの女にも見てもらいましょうよ。俺たちの愛し合う様を」
キスをしても拒まれない。舌や唇を噛まれるようなこともない。流石に舌は逃げるような動きをしたが、それを捉えるのは難しいことではなかった。唾液を味わうようにして執拗にキスをしながら、そっとその手をおろしていく。
「しかし、服の上からでも分かっていましたが、とてつもなくデカいですね」
「…るさい」
「立ったままつらくないですか? 座りましょうか?」
返答があるより前に、そのまま座った。くるり、と反転させた身体を後ろから抱きすくめるようにすると首筋の匂いが分かる。其処に舌を這わせたら肩が揺れた。
 しかし、女に生まれていることを加味してもこの人は小さい。尾形の膝の上にすっぽりと収まってしまう。の、割には胸は手のひらに余るほどの大きさだった。未だ服の上から触れているだけなのに、少しずつ汗の匂いがしてくる。
「軍曹殿、脱がせても良いですか」
「…勝手に、しろ、と言った」
「じゃあ勝手にします」
前開きの服が多いなあ、と思う。それは前の名残だろうか。今はただ、セックスをするのに楽、以外の感想を抱けないけれど。
 タンクトップを押し上げ、未だ下着に包まれたそれを、その女に見せつけるようにさらけ出す。きっと同性、ということで見たことがあるはずだったが。だってこの二人は温泉旅行にも行っていたし。でも、前戯を施されて色づいている様なんて見たことがないはずだった。
 ごくり、と唾を飲む音がしたのは、尾形の幻聴かどうなのか、もう分からない。分からないが放っておいて良かった。
 やわやわとその僅かな皮膚の感触を楽しんでいると、月島が絞り出すように言う。
「………穴があれば良いんじゃなかったのか」
「好きでもない女相手であれば、の話ですよ。俺はアンタのことが好きなので」
耳を食んでも反応らしい反応は見せてはくれないが、まあそのうちに変わるだろう。月島が強情なのは前からだった。それくらいは分かっている。
「だから、俺がどれだけアンタのことを好きなのかゆっくり教えていこうと思います」
「さっさと挿れたら良いだろ」
「軍曹殿も夢のないことを言いますね」
夢のないことを先に言ったのは尾形ではあるのだが、まあそれは事実なので仕方ない。月島としてはさっさと解放して欲しいのだろうが、尾形はそんなことしてやるつもりはなかった。
 折角、興味のない女を人質にとってまで手に入れたチャンスなのだ。絶対に失敗するつもりはなかった。
 本能だろうか、逃げを打つ身体を叱咤するように首筋を吸う。髪に隠れるか隠れないかの鬱血が人間の証明のようだった。
「ところで、軍曹殿。そこの女をああして拘束してから既に結構な時間が経っていましてね。まあトイレの方はどうでも良いのですが…人間というのはどうしたって水を必要とする生き物でしょう」
ぴたり、と動きが止まる。
「軍曹殿が大人しくしてくれれば、それだけスムーズに事が運ぶと思いませんか?」
 その言葉の暫くあと、何も言わずに寄りかかるようにされた、その賢さが尾形はとても好きだった。

 ふう、ふう、と息が上がっていくのが聞こえる。やわく刺激を与えるだけでも状況が状況だからか、月島の身体には着実に快楽が蓄積されていっているようだった。
「軍曹殿、気持ち良いですか?」
「気持ちよくない」
「と、言う割には乳首が勃っているように感じますが」
「…そんな、ことが、あるか」
何もない月島であったら、此処は刺激を与えればそうなるのも当然だろう、とか、そういうことを言ったのかもしれない。でも、今の月島は追い詰められた月島だった。
 尾形にだってつけ込む隙を与えてしまう月島だった。すべて、あの女の所為で。
「じゃあ軍曹殿、直接見せてあげましょうよ」
何がじゃあ、だったのかは分からないが、月島はその言葉の意味を正確に理解したようだった。嫌だ、と身が捩られる。その反動で胸が揺れる。これでも充分眼福ではあるのだが、と思いながらその下着に指を掛けた。
「本当に今、軍曹殿が勃ってないか」
「やめ、」
「ほら、もう少しで見えますよ。俺からはもう見えました。ハハ、美味そう。…ああ、軍曹殿、見えちゃいましたね」
 ずらした下着を胸の下へと押し込めば、それは見やすくする働きをする。タンクトップがぴちり、と肌に張り付くようなものであったのもあり、その間に挟まれた胸は如何にも強調のなされたものになった。勿論、それが女に見えていない、ということはなく。
「ねえ、軍曹殿、聞いてみましょうか? なあ、お前、これ、どう見える?」
 尾形に声をかけられて、女は慌てて目を瞑った。今まで凝視していたくせに、何を今更。
「ちゃんと見ろよ。俺はお前のことが好きじゃなくても欲情することは出来るんだよ」
「尾形…ッ」
「ああ、軍曹殿が見ていてくれればちゃんとした興奮くらい得られますかね」
「ふざけるなよ、貴様…!!」
悲痛な音。
 この女のためならそんな声を出せてしまう月島が、憎らしいと言えば憎らしいのだろう。
「―――、」
震える声で月島が女を呼ぶ。
「めを、あけて」
はじめちゃん、と女も月島を呼んだようだった。口を塞いであるので分からないが。多分、そうした。
「ちゃんと、こたえて」
お願い、と月島が言う。
「わたしのことは、いいから」
 その言葉で女はそろそろと目を開けた。見せつけるように鷲掴みにしながら、尾形は再び問う。
「どう見える? 勃ってるように見えるか? 首振るくらい出来るだろ」
ややあって、女の首がそろそろと、縦に振られた。ハハ、と笑ってやる。
「軍曹殿。あの女は軍曹殿の乳首が勃っているように見えるそうですが、軍曹殿はどうですか?」
「………あの子が、嘘を吐くはずがないだろう」
「じゃあ嘘を吐いているのは軍曹殿の方だと」
「………ああ、そうだな」
「そうですか」
 未だ触れないでいる先端は今か今かと刺激を待ち望んでいるようにも見えた。
「はあ、軍曹殿」
その期待に応えるため、ぴん、と弾いてやる。するとア、と甲高い声が漏れ出た。すぐさま唇が噛まれたがそんなことすら気にならない。
「かわいい…」
 くりくり、と今度は緩く触れてやると、足りない、とばかりに身体が揺れた。ちゃんと身体の方は順応しているらしい。賢いことだ。
「嘘を吐いてまで、俺とのセックスを長くやっていたかったんですね」
「ち、が…っ」
「へえ、違うのですか。ではアンタはあの女を干からびさせたかったのだと? それとも漏らすのでも待ってるのでしょうか? 大した友情ですな」
「おがた、ッ」
「違いますよね。軍曹殿はあの女を大層大事にしてらっしゃる。ですから俺と出来るだけ長くセックスをしていたかっただけなんですよね?」
本来なら二択にすら並べられないものでも、この状況であれば並びもする。
「軍曹殿、どちらですか?」
「―――………、」
指の腹で自由自在とまでにかたちを変える其処に、快楽が蓄積しないなんてことはない。他にも月島は感じているはずだ。
 其処に注がれるもう一つの視線、だとか。
「お前と、セックスが、したかったから…嘘、吐いた」
「ですよね」
笑う。そう言ってもらえて心底嬉しい。
「俺としては嬉しいですが、あの女が干からびては元も子もないとは思うので。出来れば軍曹殿にはこれからはちゃんと素直になっていただきたいですなあ」
「ん、は…ぁ、わ、わかった、から、」
「では改めて聞きますね、軍曹殿」
耳を食めばくぅ、と喉が鳴るのが聞こえた。
「気持ちいいですか? 俺に触られるのは」
「―――っ、う、」
「軍曹殿ー、聞こえますかあ?」
耳の中に舌を入れてやれば嫌だ、とでも言うように肩が震える。けれども先程の言葉が効いているのか逃げる、まではいかないで。
「き、きもち、いい、から」
 血を吐くような声で、答えが与えられる。
「つ、つづき、を、して、くれ」
望んだ答えに微笑みを返しながら、残酷に問う。
「続き、ですかあ」
間延びした声がわざとであることを月島は気付いているだろう。それでも何も言わないのは、やはりあの女の所為で。
 目障りだった。
 でも、月島がどうしようもなくなるまではいてもらわないといけなかった。
「軍曹殿はどうして欲しいですか?」
女に見せつけるように胸をやわやわと揉んでやると、身体の方は更なる刺激を求めているのかびく、びく、と俎板の魚のようになる。
「ん、ぁ…ッ」
「この勃ってるところを、もうちょっといじめて欲しいんですよね?」
「ち、が…っ」
「だから軍曹殿、嘘はいけませんって」
嘘を言っている訳ではないことはよく分かっている。でも、こう言ってやるのが正解だった。
「舐めて欲しいんでしょう?」
「…ん、な、こと、」
「俺の舌でこねくり回されて、俺の唾液でべたべたになるとこ、あの女に見せたいですよね? 軍曹殿が本当のことを言ってくれないと、それだけ時間がかかるんですが」
俺はそれでも良いですけどね、別に、と付け足してやればぎゅう、と更に目がつぶられる。目をつぶったところで感度が増すだけだと思うのだが、まあその方が都合が良いので黙っておこう。
「軍曹殿、教えてください」
 それが、月島が本当に望んでいることであるかのように。
「俺は何をしたら良いですか?」
「―――ッ、う、…」
唇を噛み締めて、抗いたくても抗えない、抗わないその姿は正直腹が立つけれど。これが終わってしまえばすべて良かったことになるのだからそれで良いはずだった。
「な、舐めて…」
「何処を」
「ぐっ………、ち、くび」
「どうやって?」
さっき聞いたことをそのまま繰り返せば良いだけだ。月島の記憶力が良いことはよく分かっている。そういうスキルから捨てていくべきだったのにな、と思うのは今世においてまだ武器を持ったことがないからなのだろうか。祭りの射的ですら触ったことはない。
「…おまえ、の、」
「俺の」
「舌で…」
「舌で」
「…こ、こねくり、まわ、して」
「こねくり回して」
「おまえ、の、唾液、で、」
「俺の唾液で」
「べた、べたに…して、欲しい…」
百点満点。
 そう言いたいのを堪えてそうですかあ、と呟く。
「なかなか淫乱な申し出ですねえ」
「おがた…ッ!!」
「でも、一つ欠けてますよね?」
「―――っ」
月島の目が開かれる。唇から血が出るほど噛みしめられていたので、あとでキスで舐めとってやろうと決意する。月島の血を味わえるまたとないチャンスなのだ。
「みて、て」
「何をって言わなきゃ分かんないでしょう」
「…っ、う、わたし、の、ちくびが、おがたの舌で、こね、くりまわ…されて…う、ぅ、尾形の、だえき、で、べたべたに、なるの、ぜんぶ、ちゃんと、見てて」
「よく出来ました」
キスをする。血の味がする。
「じゃあ可愛いおねだりの通りに俺はやりますから―――軍曹殿たってのお願いなんだから、裏切るなよ」
後半の言葉の温度の低さに、また女はひく、と涙を流したようだったが、そんなことどうでも良かった。

 宣言通り唾液がてらてらと光るようになった双丘は、如何にもという感じだった。しかし最早卑猥を通り越して芸術品か何かのようだ。気持ちよさを感じる度にその息が涙にまみれていくのも、その様子にあの女が喉を締めつけるのも、ひどく心地好い。今月島を悦ばせているのは尾形なのだと、仄暗い優越が沸いた。
―――あの女では、どうしようも出来ない。
ただ、月島に守られるだけの存在。足を引っ張るだけ、月島に応えることもない。それが分かっているのに、納得したふりですべて飲み込まんとする月島が、痛々しい。
 と、そんなことを思っていると、無意識だろう、すり、と膝頭が擦り合わされるのが見えた。それで、ああ、今日はスカートなんだな、と思う。それは月島が女に生まれてしまったからであるし、別に問題ない服装ではあるのだけれど。少々用心に欠けないか、とは思う訳で。まあそれは今自分が犯罪者になっているからなのかもしれないが。世の女性たちは別に誰彼構わず欲情して欲しくてスカートを履いている訳ではないのだ。
 分かっていても、今、都合が良いということには変わりない。
「軍曹殿、」
するり、と手を忍ばせるとびくり、と肩が揺れる。抵抗しようとしたのか縋るように手が伸びてきたが、さまざまなことを思い出したのかそれ以上はなかった。気持ちよくなりたいですもんね、と耳を喰んでやると泣きそうな声で肯定が返される。本当にあの女が大切なのだな―――と思ったけれど、指が目的の場所にたどり着いたらその苛立ちは吹き飛んだ。
「ハハッ」
 つつ、と折り曲げる指が繊維か何かに引っかかった。
「外からでも分かる濡れ具合ですよ」
けれどもそれ以上はやりづらい。月島だってストッキングくらい履いているのを尾形は知っているし、見れば分かることだったが。今はただ、邪魔なだけだ。
「俺はそんなに上手いですか?」
「う、ぅ…」
「聞いてんですけど」
「う、まい、よ」
「誰と比べたんですか」
びり、と破ける音がする。月島は何も言わない。は、は、と浅い呼吸を必死にしながら、沙汰が下されるのを待っている。前世よりずっとまるい肩が揺れるさまが、あまりにもか弱い生き物の証明のようで。
 太腿まで響いた亀裂が欲情を掻き立てる。それに気付いているのか、月島はじっと押し黙ったままだった。
「ほら、びったびただ」
ストッキングを雑に取り去っただけの場所は触れやすいかと問われたらそうでもない。
「下着の上からでも形が分かる」
けれどもそちらの方が良いのだろう、と思って続けることにした。そうしたら、口実だって出来る訳だし。
「このまま…下着越しにでも指入りそうですね」
「う、ぅ」
「ああ、ほら。入りましたよ、軍曹殿」
ぐち、と音がする。絶対に汚れるし、生地も伸びるだろうから月島からしたらよくないことだろうけれど。
「ストッキングも下着も、ちゃんと弁償しますので。アンタにとびっきり似合うエロいやつ選んで来ますよ」
尾形からしてみれば、そういったものを買い与える口実が出来るということでもあって。月島のために貯金はしているのだ、だからこういうことで困ることはない。
 ぐちゅぐちゅ、とわざと音を立てる。少し乱暴な仕草になったが痛みはないらしい。耐えるように唇が引き結ばれた。そういうことをするな、と言った気がするのだけれど、なかなか月島も往生際が悪い。
「浅いところ弄られるの好きですか? 下着越しでもすげえ音してますよ」
「す、すき」
「へえ。じゃあもっと掻き混ぜましょうか」
「う、ぅ…」
「軍曹殿がそうして欲しいんですもんね」
肩の震えに呼応するように、膝が擦り合わされる。すると自然、脚は閉じていくもので。
「脚、開いてください」
叱るように耳を喰むとまた肩が震えた。随分好きなようだ。このまま続けていけば、耳だけで達することだって出来るようになるかもしれない。それはそれで美しいだろうな、と思う。
「やりにくいじゃないですか」
 月島だって、気持ちの良いことは好きなはずだった。だと言うのに、今世はこんなにも強情になる理由が分からない。膝は、なかなか開かれなかった。舌打ちをして、はあ、と分かりやすくため息を吐いてやる。
「それともやっぱりあの女に代わってもらいますか? 俺は楽しくないだろうので、手酷くしてしまうかもしれませんが」
「………ッ」
そろそろ、と膝が離れていく。きっとあの女の位置からはよく見えるだろう。それが少し羨ましいだなんて思ったけれど、これから何度だって見る光景だ、今だけは見せてやっても良いだろう。
 はっと、女が唾を飲み込む音が聞こえた。同じ音が、月島にも届いているはずだった。濡れた布が指にまとわりつく。ぐちゅ、と粘ついた音がする。
「あ、…っぅ、ふ、………んん〜ッ、ァ、…」
喉の辺りで押し殺された声が、それでも殺しきれずに外に出て行く。
「く、ぁ、…っん、」
「軍曹殿」
 喉をくすぐってみせてもそれは改善されない。
「声、抑えんでください」
なら、ちゃんと言うしかないのだろう。
「気持ちいいなら、あの女にちゃんと教えてあげましょう?」
ほら、と頬を掴んでそちらに向けてやる。びくり、と肩が揺れた。
 交錯する視線。
 その瞬間を狙って大仰に指を動かしてやればぱたぱた、と唾液が落ちる音がした。
「軍曹殿、気持ち良いですか?」
「ふ、ぁっ、ん、っう…ぅん、ん、〜〜ッ、」
「軍曹殿、ちゃんと言ってくださいって」
「ア、ァッ、ん、きもち、ぃ…っから、ッ」
「ならもっとちゃんと気持ちいい声出してください。我慢しないで」
「は、ぅ…、ァ、んん〜〜っ、」
露出させられたままの胸が揺れる。眼福だ。
「ゃ、あ、んっ…んっ、ンッ、………ふ、ぅ…」
「軍曹殿、」
「ぁ、あ―――ッ、みみ、ゃだ…っ」
「好きの間違いでしょう」
「やだ、ゃ、ン、んんっ…し、た、ぃれない、っで…ぇ…ッ」
「これが好きなくせに。嘘言わないでください」
「ぅ、そじゃな…っ、ぉねが、い、ぉが、た…っ、ゃめ、………ッ、ぉかしく、な…るっ…、」
「おかしくなるんじゃなくて、気持ちよくてたまらなくなってるんですよね?」
「ぅ、は、ァんっ、ンッ、………ぁっ、ぅ、」
「軍曹殿?」
「ゃ、らぁ…っ、」
「じゃああの女と代わります?」
「だ、だめぇ…っ、ァ、や、やら、」
「じゃあ本当のこと言いましょう?」
やわやわと、空いた手で胸を刺激する。尾形が与える刺激はくまなく快楽に変換されるようで、びくびく、と背中がしなって月島の後頭部が尾形の肩に当たる。
「軍曹殿は誰に触られて気持ちよくなってるんですか?」
「―――ッ」
「軍曹殿、教えてください」
「ゃ、ア、…っ、ぉ、がた、」
 やっと認識出来た自分の名前に、思わず笑みが溢れる。
「もっと触って欲しいですよね?」
「―――ッ、う、アッ、…ぃ、ぅん、」
「聞こえません」
「さわ、…っ、さわ、って、」
「続きは?」
「ぉ、おねが、ぃ、…さわ、…っぅ、ん、………って、」
「耳は?」
「ぃ、う………ッ、ぃ、れて…ぇ…っ」
「そうですよね。軍曹殿、上手におねだりが出来ましたね」
「ぁ、ア―――っ、んっ、ぇ、くっ、う、」
「きもちいですか?」
「…っ、う、きもち、ぃ、………ッ、きも、ちぃ、からぁ…〜〜ッ、あ、そこ、ゃ、こす………ッ、ぅ、………う、こす、って………」
「自分で言えましたね」
「ぅ、ゃあ………ぁん、っ、う、ンッ」
ピン! と爪先が硬直するような動きをした。それからびくびく、と震えが伝って小刻みに揺れる。
「―――ァ、〜〜っ、う………」
くたり、と力の抜けた月島が寄り掛かってくる。ふうふう、と言った呼吸が可愛らしい。
「軍曹殿」
まだ余韻が残っているのか、耳元で囁くだけで肩は可哀想なくらいに震えた。前世ではあれほどに屈強な軍人であった月島も、こうなってしまえばもう、尾形に食い散らかされるしかない。
「俺もあっち側から見てみたかったですよ。アンタがそうやってるの、どんだけエロい図なんでしょうね」
あの女も大層楽しんだでしょう、と言いながら下着を抜く。スカートもたくし上げて巻き上げたらもう隠すものなどなかった。その後ろでベルトを外すと、金属音から逃げたがるように腰が震える。
「軍曹殿、はやく挿れて欲しいからって腰揺らさんでください」
「ち、が…っ」
「違うんですか?」
「………ぅ、う」
「どうなんですか?」
 掬うように腰を捕まえた。
「挿れて、欲しいんですか?」
ぴたり、と押し付けた熱は余すことなく伝わっているだろう。他でもない尾形が月島で興奮しているのが、月島にはこれ以上なく、逃げ場なく突きつけられたことだろう。
「軍曹殿、教えてくださいよ」
ぬるり、と動く。互いの粘液が混ざっていく。その刺激すらも毒なのか、はくはくと唇が動いた。
「―――ぁ、ア、」
「はは、こっちは欲しいって言ってるみたいですけどね」
「そ、ん………な、こと、」
「軍曹殿が嫌なら、他の穴に挿れますが」
 女の目から涙がこぼれる。此処でか、と思うと同時にほら、友情なんてそんなものだ、とも思う。
「男などそういうものだと、アンタは分かっているでしょう?」
尾形とて、あの女を犯したいなどとは微塵も思わない。それでも、月島がそう信じ込むのであれば、何度だって言うし、勃たせたくないものだって勃たせるだろう。それくらい、安いものだ。
「ほら、協力してくださいよ」
腰上げて、と言うとやっと、月島は振り向いた。
「ご、ゴム…」
「それ、必要ですか?」
 この期に及んで何を言い出すのか、という顔を作る。
「軍曹殿」
優しくキスを落としながら、それが当然のことだと言わんばかりに言い放つ。
「アンタ、何のために女に生まれてきたんだ?」
「だ、っ………なん、…」
流石にこれには、月島も絶句しか出来ないようだった。
 子供、という存在が。
 どういうものなのか、尾形は知っている。前世で自分たちがどれほどに邪魔な存在だったのか。けれども、相手が月島であるのなら。きっと尾形はなんだって出来てしまうから。あれだけ忌み嫌った父親にだってなれるだろう、もしかしたら母親にだってなれるかもしれない。それは月島も同じはずだった。今のご時世であれば、精神的役割などどちらでも構わないのだから、月島が好きな方を選んでくれればいい。
 急かすように動く。まだ挿ってもいないのに気持ちが良い。
「あの女を干からびさせたいんですか?」
「………ッ」
月島は一瞬強く目をつぶって、それから腹を括ったようだった。腰が浮く。そうです、上手ですね、と耳を食みながら充てがう。あ、あ、と絞めあげられるような声と共に、月島の狭いナカへ、尾形が這入っていく。
「アンタ、処女って言ってましたよね」
「だ、ったら…なん、なんだよ…ッ」
「いやあ、随分すんなり這入るなあ、と思いまして」
血も出ていないようだった。必ずしも出血するとは限らないと聞いていたが、ここまでスムーズだと感動すらする。圧迫感があるのだろう、は、は、と肩で息をする月島に周りのことなど見えていないようだった。だから、少し現実に戻してやることにする。
「ほら、あの女も驚いて凝視してますよ」
言った瞬間、ぎゅう、とナカが締まる。なかなかの趣味を持っているなあ、と思いながら見やすいように、とその足をちゃんと開いてやる。
 男女のセックスにおいて、外野から見てやはり視覚的に一番興奮するのは挿入部分だろう。いきり立ったものが女の中に埋まっている、その当たり前のようでいて日常的には決して起こりえない画が、人間に興奮を齎すのだ。それはあの女も例外ではなかったのだろう。目を見開いて、もう、逸らせないでいる。
「見ない…で…」
「そりゃあ無理な注文でしょうよ」
こんなにもアンタが乱れてるんだ、と責め立てるように耳を食んでやればいやだ、と身を捩られる。それで逃げているつもりなのだろうからいけ好かない。もっとやれば出来るだろうに、この女が尾形の手中にあると言うだけで月島は何でもやってのけるのだと思うと、ああ、本当に。
「それにアンタが言ったんでしょう。ちゃんと目を開けて見てて、って。あの女はそれを律儀に守ってるだけですよ」
「う、ァっ」
「もう忘れちまったんですか? 軍曹殿、結構うっかりしてるとこありますよね。今日のことだってすぐ忘れちまうんじゃないですか」
「忘れない、わすれない、からぁ…っ!」
「本当ですかねえ」
考えるふりをしてから、あ、そうだ、と名案を思いついたかのようにキスをする。実際名案だとは思うが。
「記念撮影でもしましょうか」
「………は?」
何を言っているのか分からない、と言いたげな月島を置いて携帯のカメラを起動する。画面を反転させて、そのフレームに二人、ちゃんと収まるように手を伸ばす。
「ほら、軍曹殿、笑って」
 かしゃり、と慣れ親しんだ音がした。
「綺麗に撮れましたよ。挿ってるのもばっちり映ってる」
「う…ぅ…、」
「泣くほど嬉しいですか。あとでアンタにも送ってやりますね」
記念ですからもう一枚撮りましょうか、とかしゃり、かしゃりという音が部屋に響く。
「これでアンタは俺のこと忘れないでいてくれますよね」
嬉しいです、と言えば月島はぼろぼろと涙をこぼした。ずっと耐えていただろうに、もう抑えが効かないようだった。そんなに喜んでもらえるとは男冥利に尽きますよ、と言って律動を開始する。小さな身体は上下させるのにそう苦労をしなかった。そのうちに月島が自分で跳ねるようになるまで、そう時間はかからなかった。
「軍曹殿、激しくされる方がお好きですか」
制御がきいていないのだろう、支えを失った身体は簡単に前に倒れる。それでもちゃんと手をついている辺り、反射は生きているようだが。そのまま膝立ちになる。背面座位とは違う部分に届いたのか、全身がぶるり、と震えるのが見えた。
「ハハァ、床を舐めるほど俺とのセックスは気持ちが良いですか?」
ずるずる、と反射のように動く腰は既に理性を離れたのだろう。手は支えるだけにしてやる。
「ほら、俺が何もしなくても腰が上がってく。もっとって言ってるんだよ、分かるだろ?」
「や―――ッ、ん、ぁんっ」
「は、聞こえてないっぽいですね。ムービーでもとっておきますか」
「ん、ん、あっ、う、ぉがたぁ…」
「ちゃんと此処にいますよ」
「アッ、ぅ、い、おがた、おがたっ、いく、イ、イっちゃ―――アア…ぅっ、んん、」
「はは、すごい締めつけ」
尻たぶを叩いてやると、それすら刺激になるのか、びくん! と震える。きゅうきゅう、と切なげに締め付けては、もっと、と腰が揺れる。追い詰められそれしかなくなったせいぶつは、必死に尾形の名前を呼んでいる。
「俺の精液全部搾り取るつもりですか」
欲しい、とでも言うように締め付けられたら耐えておく必要もなくなった。捕まえて、離れないようにしてから吐き出す。
「あ………―――、」
「アンタが俺のことをそんなに好いてくれているとは知らなかった」
出したからと言って、それでおさまる興奮ではない。みるみるうちに硬度を取り戻したそれは、再び月島を蹂躙する。あ、あ、と望まないだろう声は既に意識されていないのか、腰だけがただ貪欲に快楽を貪っている。
「それなら早く俺に応えてくれたら良かったのに………。アンタはどうにも、自分の気持ちに疎いようですからね」
 動物のように、食い散らされることをよしとした月島の声には、それでも笑みが乗り始めたように聞こえた。
「大方恋愛よりも友情を優先した、というところでしょうか。別に、良いじゃないですか。どちらを取っても。きっとあの女はアンタのこのはしたない格好を見ても友人でいてくれるでしょうよ」
「や―――〜〜ッ、ぅ、…ア………」
「そして、アンタには俺しかいないんだって思うんだ」
「は、ぅ………ぁッ、イ、いっ〜〜〜ッ!!」
「アンタも、」
「ぉ、が〜っ、あ、ぁ、ま、だ…っ」
「アンタには俺しかいなんだよ」
「まだ、っ、…イってる、…か、らぁッアアっ、」
「そう言ったのはアンタだろ?」
痙攣にも似た動きをする身体に鞭を打つように、何度も何度も精を吐き出す。その度に嬉しそうに月島が笑うのを、聴いている。
「ほら、見てください」
びく、びく、と未だ震えるその身体を起こして、そうして自身を抜き去った穴を拡げて見せる。
 どろり、と中から押し出される精液が床を汚していって、それがちゃんと友人とやらの目に映るのを見てからもう少し続きをしましょうか、と月島にキスをした。



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